表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/136

23話 平和な日常

 ざわざわ…ざわざわ…


「あれ大宮さんだよな…」

「ああ…間違いない……大宮さんだ…」

「うう…とうとう大宮さんが汚されちまった…」

「ちくしょー!あの大宮さんが…」

「入江くんと大宮さんか…」

「たしかに大宮さんと釣り合うのは入江くんだけだとは思うけど…」

「いや、まだ諦めるには早い!俺は大宮さんを諦めんぞ!」


 朝からこの騒ぎだ…。そしてこの騒ぎを起こしている元凶が隣にいる。


「零くーん!なんで目を合わせてくれないのー!?」


 なんでなんて言われても、むしろこっちの方が言いたいセリフだわ。


 ――大宮。なんで昨日の夜のテンションで俺の腕に抱きついてくるの?


 めっちゃ目を引くんだけど。とてつもなく注目を集めてるんだけど。ねえ、どうしてくれるの?


 そりゃ、あれだけモテる大宮が一人の男にこれだけ引っ付いていればみんなびっくりしますわ。俺が生徒Aだったら間違いなく入江を殺してるわ。みんなが逆に忍耐強すぎるだけなんだよ。今からテロが起こっても不思議じゃないよ。学校行ったら俺の席がなくなっていても不思議じゃないよ。


 でも、そんなに暴動が起きないのは俺が最近学校での地位が上がっていたからかもしれない。案外、あいつら釣り合ってね?みたいな感じかもしれない。


 ……やめてくれ…俺は平和に過ごして、自分の欲望のままに生きていたいんだ…。普通に生きて、普通に惰眠を貪って、普通にラノベとゲームに溺れて、そんな生き方をしていたいんだ。


 たしかに大宮のような美女と付き合えるのはすごく良いことかもしれない。かわいいだけじゃなく性格もいいし、運動もできるし。理想の女子であることは間違いないだろう。ナイスバディだしな。


 だがだが、大宮に対して特殊な感情を抱いているわけじゃないし、大宮もおそらく恋愛感情ではないだろう。助けられたことに対する感謝の感情が行き過ぎて、それを恋愛感情と勘違いしているのだろう。ならばここは軽くあしらっておいて時間が解決するのを待とう。それが一番いいな。うん、


「ねえ~零くん、今日は放課後、一緒に帰ろっか!」」


 ちゃんとあしらえる…よな?時間が解決してくれる…よな?


「お前、放課後は部活あるだろ。ダメだ」

「いや~今日は部活休んじゃおうかな~って」

「いやお前が休んだらだめだろ…」


 えへへ、と大宮はお茶目笑顔を見せる。まあ、無論かわいい。


「いつまでこうしているつもりだ?そろそろ離れたほうがいいんじゃないか?」

「え?教室までこうしてるに決まってるじゃん?」

「はあ…いいのか…?あいつらに見られるぞ?」

「別にいいよ~!むしろ見てほしい人がいるくらい…」

「ん?なんて言った?」

「細かいことは気にせず行きましょー!」

「離れてくれたらもっと速くいけるんだがな…」


 とりあえずもう少しの辛抱だ…。



「……あら、二人とも仲が良さそうですわね」


 ふふっと笑うのは高宮。なんでお前は若干嬉しそうなんだよ…この状況を楽しむんじゃなくて助けてくれ…。


「おはよーれいにゃん!昨日は本当にありがとー!」

「いえいえ、私は友人として当然のことをしただけですよ」

「大好きだー!れいにゃん!」

「わかったので、その呼び方をやめてくださいね…」

「はーい!れいにゃん!」


「朝からなぜそんなにくっついているのですか飛鳥」

「あー京華ちゃんもおはよー!」

「おはようございます、飛鳥。それでなぜそんなに仲良くしてるのですか?」

「京華ちゃん怖い怖いっ!」

「飛鳥?」

「だから怖いって!零くんとは一緒に登校してきたんだよ~!」

「それは分かりましたが、そこまでべたべたとしている必要はあるのですか?」

「いや~だって零くんにくっつきたかったんだもん!」

「それから、なぜ入江くんのことを下の名前で呼んでいるのですか?なれなれしくはありませんか?」

「別にそれくらいいいじゃん!いいよね、零くん?」


「ま、まあそれくらいは別にいいけど…」

「ほらね?いいでしょ?」


「むむむ…だ、だったら……私も零くんと呼ばせてもらいます!飛鳥が良いなら私もいいですよね、れ、零くん?」

「あ~京華ちゃんそういうことするんだ~!」

「元はといえば私の方がれ、零くんと、仲良かったです!だからいいですよね…れ、零くん!」


「ああ、別に構わないが…無理して下の名前にしなくてもいいんだぞ?」

「べ、別に無理などしていません!」


 顔を真っ赤にして言う雨宮。いや、恥ずかしいのバレバレだぞ…


「じゃあ、私も零さんとお呼びましょうか」


 なんでお前はここでさらに事態をごちゃごちゃさせるんだよ…てか笑ってるし…お前絶対楽しんでるだけだろ…


「あ、話変わるけど、昨日は京華ちゃん、ありがとね!本当にありがとう…!」

「いいんですよ…友達が困っていたら助けるのは当たり前ですから」


「本当にありがとう…零くんも改めて言うけど…ありがとう…」

「俺は特に何もしていないぞ?俺の分の礼は他の3人に回してくれ」

「一番活躍していたのはあなただと思いますけど…」

「何を言っているんだ、高宮。俺はおいしいところを持って行っただけだろ」


「あらーもうこんな時間か~ぎりぎり間に合った~」

「おはよう沙彩」

「おはようございます、沙彩さん」

「おはよ~」

「おはよーさーちゃん!昨日は本当にありがとう!本当に感謝してます!」

「あはは~そんなに真面目に感謝されると照れるなあ~」

「本当にありがとう!」

「ほんとあすっちが無事でよかった!」


「さあ~みなさんそろそろ席についてくださいね~。ホームルームを始めますよ~」


 何はともあれ、これでSクラスの平和は守られたわけだ。俺の平和は一段と崩れているが…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ