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14話 混乱の勉強会

「お邪魔しまーす!」そう言って俺の部屋に入ってきたのは大宮だ。7時50分。予定よりも10分早い。


「おーなんかシンプルな部屋だね~。本棚の中は…シンプルと言うと怒られそうだね!」俺の部屋を一通り見まわして、からかうように言ってくる。


「まあなんでもいいからとりあえずそこに座ってくれ。紅茶とコーヒーどっちがいい?」

「どっちも飲めないかな~。別に気にしなくていいよ~」

「じゃあ麦茶にするか」


 そう言って冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐ。


「何も出さなくていいって言ったのにな~まあ、ありがたく受け取っておきます!」

「そうしてくれ」俺は大宮にコップを手渡す。


「待ち合わせとか早くに来るタイプなのか?」

「いや、別に?今日は入江くんの部屋をささっと見たかったからね~!どうせ京華ちゃんは時間通りに始めないと怒るタイプだし~」

「そんなに見るものは無かっただろ」

「ううん。入江くんは案外普通の人なんだな~ってことがわかりました!」

「そうか、それならなによりだ」

「そうなると、ますますなんでそんなに完璧なのか気になるけど?」

「大宮、俺は完璧じゃないぞ。ただ勉強ができるだけだ」

「ふーん…聞きたいことはたくさんあるけどまあいいか」


 コンコンとノックの音が聞こえる。


「雨宮です。入ってもよろしいでしょうか?」

「ああ、いいぞー勝手に入ってきてくれ」

「それではお邪魔します」


 雨宮が静かに入ってきて、俺の真正面に座ろうとする。長方形型の机に雨宮と大宮が横並びに座る。すると…


「私、勉強の時、机が狭いとできないんだよね~京華ちゃん、ごめんけど、あっち側に座ってくれない?」

 そう言って手を合わせて頼んだ後、零の方を見る。


「な、なにを言ってるんですか!?」

「だから、入江くんの隣に座ってくれない?って」

「だから何を言ってるんですか!?この机は小さいですし、それでは近すぎます!」


 雨宮は声を少し荒げて大宮の言うことに拒否を示す。そしてもちろん零も動揺している。


「な、何をいってるんだ大宮。そんなに近くては勉強に集中できんだろ!」

「ということは入江くんは雨宮さんが気になってしまうということですか?」


 もちろんこの場合の気になっているとは、恋愛的な意味で、という意味を含ませたものであることは俺や雨宮にもわかった。


「京華ちゃん?別に友達同士ってだけなら体が近いくらいそんなに問題ないんじゃない?現に私となら全然気にならないでしょ?それとも、もしかして京華ちゃん…」

「全然気になんかなりません!別に入江くんには勉強を教えてもらうだけですし!」

「じゃあ、決まりだね!」


 おいおい、うまく大宮に乗せられてるぞ、雨宮。そこは、男女だからとかなんとか言っておけばよかったものを…。まあ、しょうがない、勉強が始まれば雨宮は集中できるだろうし、俺が変に雨宮を意識しなければいいだけの話だ。


 ――しかし、そんな簡単にいく話だったら苦労はしないのだ。


 さすがに勉強が始まってから最初のうちは雨宮も落ち着かなかったようだが、5分もたってしまえば、あっさり集中し始めた。それにならって俺も自分のノートに目をやる。


 しかし10分経つ頃に大宮が動く。


「ねえ~京華ちゃん~ここのところ分からないんだけど教えて~」

「いいですよ、どこですか?」

「ここなんだけど~…」


 親切に対応する雨宮に、大宮は何かをたくらむ様子で雨宮の方に近づいてくる。そして次の瞬間「あっ」と言って雨宮を押し倒してくる。

 雨宮は不意な出来事に逆らえず倒れる。そして、俺をも巻き込んでのしかかってくる。


 いててて…ちょっと頭を床にぶつけた。雨宮とかはけがをしてないだろうか、そう周りを気にする。しかし、見回すまでもない… 


 これは――

 昨日と同じ体制だ…雨宮の顔が俺の目の前にある。二つの柔らかいものが俺の体に当たるのがすごくリアルに伝わってくる。そして、プルプルときれいなピンク色の唇がすぐそこに…

 ふと、雨宮の顔全体にめをやると、すぐそこにある雨宮の顔は真っ赤に熟れている。まさに完全なデジャブ。


「おお…おお…!」大宮は思わず驚いて嬉しそうな声を出す。


 その声で俺と雨宮は我に返り体制を立て直す。


「す、すまん、雨宮…」

「い、いえ…倒してしまったのは私ですし…」


 雨宮がすごく恥ずかしそうに下を向く。


「いいですな~青春っていう感じがするね~ひゅひゅー」大宮が満足そうにはやし立てる。


 それを聞いた雨宮が鬼の形相で大宮の方を見る


「飛鳥、自分で何をしたのかわかっていますね?」

「さ…さあ?」


 さすがにいつもにこやかな大宮も雨宮に恐れを見せる。


「分かっていないようなので、どれ程のことをしたのか、分からせてあげましょう。」


 ――1分後。しっかり大宮は痛い目を見たようで、その眼にはさすがに反省の色がうかがえる。


「入江くん…ごめんなさい…」

「いやいいよ、俺はそこまで怒ってないから」

「ここで飛鳥を甘やかせるのはよくありませんよ?」

「いや、本当に大丈夫だから。けがとかしてないし」

「まあ…入江くんがいいと言うなら、それでいいでしょう。まあ、それでも飛鳥はしばらく勉強会に参加させるわけにはいかないですね」

「それは~もしかして~…入江くんと二人っきりになりたいからなのかな?」すっかり調子を取り戻した大宮が雨宮をからかう。これはまた大目玉を食らうな、大宮。


 そう思っていたが、雨宮の態度は予想と違った。


「そ、そ、そんなことあるわけないじゃないですか!?あ、飛鳥!いい加減にしてください!」


 なぜか予定以上に雨宮が慌てている。


「はいはい、わかったわかった、うそうそ!明日からは二人で楽しくやってくださ~い!」


 なんかひっかかる言い方ではあるが、大宮が離脱するということは、だいぶ気持ちは楽になる。


「ほ、本当に、た、ただの勉強会ですから!」


 そうなんだよ、ただの勉強会なんだよ。だから雨宮、そういうのは普通の顔で言え。恥じらいながら言うんじゃない。大宮にからかう隙を作ってどうするんだ...。


 そんなことを思いながら、3人の勉強会はなんとか終わりを迎えたのであった。



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