134話 デート(雨宮)その2
昼休みは2人で白鯨カレーというものを食べた。
ご飯を鯨の形にすることで白鯨に見立てたのがこの料理で、雨宮も最初は「うっ……白鯨……」と頭を痛めていたが、カレーの味はほんのり辛い味で雨宮も気に入っていた。
それで調子を良くしたのか、「次はどれに乗りましょう?」と積極的に絶叫アトラクションに乗っては撃沈していた。
スチールドラゴン、嵐、アクロバットと名だたるジェットコースターを制覇した後には、もう足はガクガクと震えていて感覚がなくなっているようだったが、それでも全力で楽しんでいるようだった。
「次はあれ! あれです!」
フリーフォールの大きな塔を指しながら嬉々として言う雨宮。
こうしてアトラクションを子供のように楽しんでいるのを見ると、どうしても雨宮の境遇を考えてしまう。
親が政治家ということもあり、こういうところに来ることはほとんどなかったのだろう。零も同じような理由で来れなかったから、ついはしゃいでしまう気持ちは分かるところだ。
ーーそれにしても、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎだが。
心の中でそう独りごちた零は、雨宮に腕を引っ張られて思索から現実に戻された。
「さすがに疲れました」
と雨宮が言ったときには、もう零はヘトヘトになっていた。
「なので、次はこれにしましょう」
だが、休むという選択肢はなくーー否、雨宮にとってはこれが休憩だったーーメリーゴーラウンドを目指す雨宮にはさすがの零も唖然とした。
「おま、ちょっ、休むんじゃ」
「休んでなんかいられませんよ! まだ行っていないところがたくさんあります!」
休みを期待した零をあざ笑うかのように雨宮はずんずんと先へ進んでいく。
結局日が暮れるまでアトラクションに乗らないことはなく、逆に待ち時間のないものばかりに乗っては次へという形だったので疲れは増す一方だった。
「次は観覧車行きますかー?」
「かんらんしゃ……。あ、ああ、分かった」
観覧車といえばゆったりとした時間が過ごせるものだ。
こうなれば零にも俄然やる気が出てくる。
左手の手首につけているバンドを見せることで入れるのだが、雨宮と2人で見せると女性の店員が嬉しそうな顔をして
「お二人様ですねー? ごゆっくり〜♡ この時間は他のお客様もいらっしゃらないので!」
よく分からない後押しとノリノリの「ささ、はやくっ!」という声に押されて2人はピンク色の観覧車に乗せられる。
「はい、どうぞ〜!」
観覧車の中まで入ってきて、同じ列に座らせると、「きゃっ」といって走って立ち去っていった。
「「……………………」」
さっきのテンションから一転、雨宮の行動が小さくなる。
気まずい空気の中、終わらない観覧車がスタートする。




