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133話 デート(雨宮)その1

 133話 デート(雨宮)その1


 真夏の中でも本当の真夏日。


 暑い日に行きたいところとなるとプールなどが本命なのだろうが、そんな日に零と雨宮は2人で遊園地に来ていた。


 場所はナガシマ。三重県にある、迫力満点のアトラクションが多数あることで有名なレジャーランドだ。


「お、おはようございます、零くん」

「おはよう……って、お前」


 零の前に現れたのは膝上5センチほどのスカート型で、袖のない白を基調としたワンピースだった。


 何が言いたいかというと……露出度が高い。


 雨宮は無造作に肌を出したりしないので、この格好は零の予想を大いに裏切ってきた。


「……な、なんですか」

「あ……っ、いや」


 スカートから見えるスラっと伸びた白く細い脚に思わず目がいってしまっていたようで、雨宮から指摘される。


 だが明らかに雨宮が気合いを入れてきていることは明確だったし、何より雨宮が自分の格好を一番意識してしまっていた。


「……ま、まあいくか」

「そ、そうですね……」


 なんだかぎこちなく始まるデートに、零は不安を感じていた。口には出さなかったが。



 新幹線で名古屋まで行き、そこからバスに乗り換える。


 その間、当然のように零と雨宮は隣同士に座っていたわけだが、零は雨宮の脚を見てしまう自分と戦い続けていたし、雨宮は零が隣でクールに座っている姿に動揺してしまっていた。


 碌に会話をすることもできずに、目的地に辿り着く。


「わっ! すごい大きいですね!」

「まあ遊園地ならどこもこんな感じ……」

「あ! あそこで叫んでる人たちがいます! えええ、あんな角度むりですって!」

「……………………」


 遊園地に来て子供のようにはしゃぐ雨宮に零は頭を抱える。


「ほら、私たちも早く入りましょう‼︎」

「あ、ああ」


 どうやら心配していたのは無意味だったかもしれない。そんなことを思う零だった。



「こ、これが噂の白鯨ですか……」

「最大で80度の角度で落ちていくそうだ」

「死んじゃいますっ‼︎」


 有名なアトラクションの一つである白鯨。


 元々はホワイトサイクロンと呼ばれていたものを、改修工事して新しく絶叫度も増したものが白鯨となっており、高速で何度も螺旋を描いたりフリーフォールと同じくらいの角度で地面に突っ込む勢いで落下することなどで有名。


 雨宮も張り切って、むしろ楽しみなくらいで向かっていたが、いざ本物を目の前にしたところで怖くなってしまったようだ。


「じゃあやめとくか?」

「……や、やめませんから! こ、これくらい大丈夫……ですっ!」

「そ、そうか……」


 呆れるのをグッと堪えて、零は雨宮と列に並ぶ。


 その間に会話はなく……というか零が話を振っても雨宮には上の空だったため話すことができなかった。


 幸いとお昼前だったため少し並ぶと自分たちの順番になった。


「零くん……私が死んだら墓はお日様の当たるところにしてください…………」

「おいおい、縁起でもないことを言うな……。というか、俺の知っている墓は全部太陽に当たっている」

「私は天国に行くのでしょうか、それとも地獄に行くのでしょうか」

「死ぬ前提で話すな」


 ガクガクと震えている雨宮に対しクルーが笑顔でなだめるが、その言葉も耳に入っていないようで効果はなかった。


「それでは、いってらっしゃ〜い!」


 笑顔と共にスタートする白鯨。


 左右上下あちらこちらに振られる。キリキリという音がどうにも不安にはなるが、それ以上に体が揺れるので内臓が軽くなる感覚を覚える。


 落ちていくところでは、雨宮が勢いよく悲鳴を上げていて、園内中に響いていた……。


「もう乗りませんっ!」


 降りた後の雨宮はなぜか怒っていた。

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