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132話 デート(高宮)その3

「ずっと好きでした。私と付き合ってくださいませんか」


 これ以上になく真っ直ぐな言葉。


 いつもからかってくる高宮が、誤魔化しなしにそのまま思いを告げる。


 強い覚悟の上での告白。


 それは零にも分かっていた。


 だからこそ、零も逃げずに返事をするしかなかった。


「悪い。高宮の気持ちには応えられない」


「ーーそう、ですか……」


 高宮からはそれ以上の言葉はなかった。


 境内にある石造りの階段に座って、しばらくの間、顔を伏せていた。


 時折聞こえる鼻をすする音が、零の心を否応なく痛めつけて離さない。


 この辛く、寂しく、それでいて大事な時間は長く続いた。



「高宮、俺はお前に会えて良かったと思ってる」

「急に……スケールの大きいことを言いますね」

「こういう機会しか言うタイミングないからな」


 高宮の声はまだ少し鼻にかかっているようで目も赤く腫れていたが、落ち着いてきたようだった。


 そのタイミングで零が話を始める。


「元はと言えば、お前が俺を見つけてくれたようなもんだからな。お前が俺の才能を見出してくれたから、あれだけ自然にクラスに馴染むことができた」

「そんな……。京華さんたちならすぐに零さんがただならぬ人だって分かりますよ」


 謙遜しながらも嬉しそうな高宮。今まで零が高宮のことを褒めそやすことなどなかったから、純粋に嬉しいのだろう。


「それからお前は俺が神宮家の人間だと知って、それでも変わらずに接してくれた」

「それは当たり前だと思いますが?」

「いや、一歩間違えれば学校に居ることさえ敵わなかっただろう。雨宮の父親に追い出されたあの時のように」


 だから、こうして呑気に学校生活を過ごせたのも高宮のおかげだ。


 そう零が呟くと、高宮の心にはさまざまなものがこみ上げてくる。


「まあ高宮には色々と世話を焼いて、修学旅行なんかは特に大変だったけど」

「それについてはあまり記憶がありませんね」

「おい、しらばっくれるな」

「ふふふ」


 そうだ。いつもこうだった。


「大体お前が突拍子のないことを言って困らせてくるんだよな」

「私は困らせたことなどありませんが?」

「そういうボケで困らせてくるパターンもそういえばあったな。今思い出したよ」


 くくっと笑う零。


 いつも高宮には困らされてばっかりだった。


 修学旅行だけでなく、些細なことでもちょっかいをかけてきては好意を露わにしてくれた。


 だけど、零はその気持ちに応えられない。


 それでも、これは嘘のない零の本心。


「お前に会うことができて良かった。最高の友達だと思っている。だから……これからもよろしくな」

「…………はい」


 困ったような顔に笑みを貼り付けて絞り出す高宮。


 だが、それもやっぱり難しくて。


「うっ、うぇっ、うぇぇぇんっっっ‼︎」


 高宮がもう一度泣き崩れる。


 無邪気な子供のように。


 それはもう届かない恋に、実らない恋に。


 そして、零が自分のことを認めてくれたことに。


 ーーまだ彼女の人生は終わってはいない。

更新が遅れた上に、内容が少ないことをここで謝罪させてください。

残すところあと数話になりますが、最後までよろしくお願いします!

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[一言] 1行目 くぁさいませんか になってますよ!
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