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13話 零、告白される

 零は昼休みになると、急いで教室を出た。ラブレターの返事を3つ行わなければならないからだ。1つは体育館裏、1つは屋上、1つは校庭だ。

 急いで出ていく零を雨宮は無言で見ていた。


 まずは屋上。


「入江くん!付き合ってください!」

「ごめん…俺、恋愛に興味がないから…」

「あの、それは…私ではあの4人とは…」

「あいつらは関係ないぞ。俺は単純に自分の時間が好きなんだ。俺は自分の時間をできるだけ作ってゲームやラノベとかに充てたい。それだけだ」


 こうやって断ろうと決めていた。1年前はこれで見事に成功して、そのあと告白されることもなくなったからだ。もう一度この手を使えば、明日から告白されることはないと考えていた。

 ――だがしかし…


「別にそれでもいいんです!デートをするなどの高望みはしません!入江くんのそばにいたいだけなのです…」

「え…いや…その…

 ――気持ちは嬉しいんだが…ごめん!」

「あ、待ってください!」


 予想と反する答えに、うまい返しが思いつかなかったのと、次に断らなければいけない人を待たせすぎるのはよくないと思い、無理やり断って逃げた。かなり最低な男の部類にノミネートされる。だが、今は前を向いて走るしかない。そのまま全力で校庭に向かう。



 昼休みの終わりを告げる予鈴とともに俺は教室に戻ってきた。


「大丈夫ですか?」

「ああ、体の方はな…でも…うん…」


 結局、二件目も三件目も同じ文句で断ったのだが、一人目と同じ反応を見せた。明らかに一年前とは違う。

 あの時はただ顔でモテただけなので、断れたが、今回は違う。頭が良いことが判明した上に、四宮のお墨付きまでもらってしまった。断る難易度は去年の比ではない。

 根本的な解決をしない限り、これからこういうことがまた起きそうで…零は頭を抱えてしまった。


「それなら誰かと付き合ってることになされたら、どうでしょう?」


 そうやって他人事のようにアドバイスするのが、今回の元凶の高宮だ。


「さすがにそういうことはできない。付き合う相手にも迷惑だしな」

「一名、適任に心当たりがありますが…まあ無理そうですね」


 高宮は雨宮の方をちらりと見て零に聞こえないほどの声で言う。高宮も雨宮の挙動がいつもと違っていることに気が付いている。特段、授業に集中できていない、などのことはないのだが、頻繁に零の方に目が行ってしまっていた。零もそのことに気づいていたが、昨日のことだと思って、無視していた。


「飛鳥さんはどうしているのですか?」高宮は同じようにモテる大宮に聞く。


「今の入江くんほどモテるわけじゃないからな~」そう言って笑ってごまかす。大宮でだめならもう誰も俺にまともなアドバイスは期待できない。


「もう面倒くさいなら、全員と付き合っちゃえば~?」


 音宮に至っては、アドバイスをする気さえないようだ。


「まあ、最終手段として、私が圧力をかけることもできますが?」

「それはやめてくれ。高宮からの圧力って、その家ごと滅ぼすだろ」

「あら?そんなことはしませんよ?」と高宮が笑う。こいつは間違いなくやるな。怖すぎる。


「まあ、とりあえずは様子見ってことにしておくよ、すぐに収まるかもしれないしな」


 零はそう言って自分の席に着く。


 ――多分、そう上手くはいかないだろうな。なにか手を打たないと、と考えながら午後の授業が始まった。




「じゃあ今日の授業はここまでです」先生の号令とともに一日が終わる。


 授業は終わっても、今日という日はまだ終わらない。ご飯を食べた後に雨宮と大宮との勉強会だ。ハードなスケジュールなものだ。

 その時、雨宮が声をかけてきた。


「今日も一緒に帰りませんか?」

「ん?どうしてだ?今日の勉強会は夜飯の後だろ?」

「い、いや、それはそうなのですが…あ!そうです!女よけです!」

「女よけ?」

「あ、あ、別に付き合ってる人が行う意味での女よけじゃありませんよ!?告白されるの減らしたいのですよね!?そ、そのためです!」

「ああ、なるほど。ありがとう」

「こ、これは今日の授業料みたいなものです!他の理由なんてありませんから!」


 何故か雨宮は顔を真っ赤にして否定する。ムキになることもないのに、と思うけどそこは好きにすればいいと思う。

 なんせありがたい話だ。たしかに雨宮のようなやつと仲がいいとなれば、近寄ってくる女子はぐんと減るだろう。雨宮と他の女子を単純なスペックとかで比べたら、雨宮の方が多分上だからな。しかし、オタクと仲がいいという汚れ仕事をさせてしまうのは申し訳ないが。

 

 寮に着くまで5分強くらいしかかからなかったが、それでも効果は期待できそうだ。歩いてる途中、「え、入江くん、雨宮さんと歩いてる」とか言われたからな。一年のときだったらだったら。「え、雨宮さん、入江くんなんかと歩いてる…」だっただろうから、我ながら進歩したものだ。


 歩いているとき雨宮はずっと顔を下げて一言も喋らなかった。それじゃあ、仲が良さそうには見えなくなるだろ…とか思ったけど、雨宮と一緒に歩いている男なんか、1年間聞かなかったから、別にいいのかということでスルーした。


「じゃあ今日は夜ご飯の後でな。今日は夜ご飯食堂で食べるから、その時にまた」

「あ!入江くん…」

「ん?なんだ?」

「い、いえ。なんでもないです!じゃあまた!」


 本当に今日の雨宮は何かおかしい。一度も目を合わせないし、なんかもじもじしている。昨日の件、どんだけ引きずってんだこの人。


 ――今日の勉強会、なんか嫌な予感がする、そう思った零は、勉強会を乗り越えるため英気を養うため、ゲームに手を出すのであった。


総合ポイント1000ポイント超えました!

また、現実世界の恋愛ランキングで3位をいただきました!本当にありがとうございます1

まだまだ話は始まったばかりなので、どうぞゆっくり見ていってください!

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