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124話 デートへ

「というわけで、零さん♪ デートをしましょう♪」

「とうとう頭がおかしくなったか高宮」


 唐突な高宮の提案に対して、零は冷えた声音で突っ込みを入れる。


「デートを知らないのですか? デートっていうものはですね」

「知ってるわ! 知ってるからこうして理解に苦しんでいるんじゃないか」

「ふふっ」


 何が面白いんだと指摘したかったが、よくよく考えてみればこのタイミングでデートという考え自体はたしかに面白いと思って言うのをやめた。面白いといっても、笑える類のものではないが。


「いいじゃん、零くん! アメリカ行っちゃうんだし、思い出作りに!」


 ここで大宮が助け船を出すのだが、零は驚いた様子で目を開いた。


「アメリカの話、高宮から聞いたのか……」


 零が高宮に視線を向けると、彼女は悪びれもせず微笑む。


 零が覚悟を固めて言おうと思っていたことを先に高宮に言われて調子が狂ってしまったが、冷静に考え直す。


「……まあ仕方ないか。いずれ話そうと思っていたことだし、話す手間が省けるだけか……」


 だが、と零は続ける。


「俺はアメリカに行くって決まったわけじゃない……。どちらかと言えば、悩んでいる真っ最中だ」


 苦々しく呟く零からは、彼の葛藤や困惑が見えた。


 だけど、今はそういう暗い話をしたいのではない。


「じゃあ、アメリカにいっても行かなくてもデートだー!」

「アメリカ行くのをただ理由にしてただけじゃねえか!」


 盛大にツッコミを入れるが、かえって大宮は「悪いかー!」と開き直っている。大した図太さだ。


 ただ頑として納得しそうにない零に対して、音宮がカバーを入れる。


「デート、デートって言うから零っちも腰が引けちゃうんだよ〜」


 と分かった風に言うと零の方に向き直って、


「だからね、零っち。遊びに行くだけなんだよ〜。ただ女子と2人きりだから便宜上デートって言ってるだけで」

「おお、なんか珍しく音宮がまともだ」

「はっは〜、私はこう見えても天才なのだ〜!」

「最近の沙彩さんはキャラがブレてますね」

「うっ……」


 高宮の冷静な指摘に、気にしていたのかうっと胸を押さえる仕草をする音宮。


 だが、言っていたことは的を得ていて、ふむ、と零も考えている。


 そして、小声でひとりごちる。


「たしかに、こいつらと話してみれば何か解決するかもしれん……」


 最近、心に感じたもやがかかるような感覚。それらは確実に彼女達と関係している。


 だから、彼女達と会うことで、話すことで、話を深めることで、何か変わるのかもしれない。


「はい、それでは決まりですね♪ 詳細については、各々に任せます」

「はーい!」


 大宮は元気な返事と共に零に駆け寄り、零がとても嫌そうに払っている。


 そして大宮が離れた隙をついて高宮が後ろから抱きついて、零の顔を赤くさせる。


 そんな光景を一歩引いて見ていた雨宮に音宮が気付き声をかける。


「どうしたの、京ちゃん?」

「いえ……」


 否定はしているが、どうにも浮かない顔である。


「もしかして……零っちとデートで緊張してる?」


 とからかってみると、顔を赤らめて頭と手を振って「違いますっ!」と言う。


「そういうことじゃなくて……もうこの5人でこんな日々を過ごすのが半年くらいなんだな、と思うと……」


 どうやら零と大宮と高宮が戯れているのをみて、寂しさを感じ取ったようだ。


 だけど、寂しさを感じるのは今ではない。


 そういうのは見送りの時くらいにするべき。


 楽しいイベントの前は、期待で胸をいっぱいにしておかなければならない。


「ーーもみもみ」

「きゃっ! どこを触ってるんですか、沙彩!」

「へへーん。悔しかったら私のおっぱいも触ってみろ〜! ないけど〜!」

「反応に困る自虐をしないでください! それに私の胸を触ったことを謝って!」


 大丈夫だ。豊かな胸にはたくさんのものが詰まっているから。

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