119話 ニーナの目的
「レイ、話があるの。ちょっと来てもらえる?」
「……ニーナ」
零が部屋から出てすぐに声を掛けられた相手は、金髪が似合う美少女だった。
「こんな遅くに用か?」
「こんな遅くにしたのよ。分かってるくせに」
昼に会った時と比べて、どこか大人っぽさを感じた。まるで別人とまではいかないが、誰にでも分かる違いだ。
「女子が出歩く時間じゃないと思うが」
「いいから、ついてきて」
手を引くこともなく、スタスタと早足で歩くニーナ。
昼とは違い、有無を言わせない態度にやはり違和感を覚えつつ、話を聞かないわけにもいかなかったので零はニーナに追従した。
階段を登って3階へ。三年生の部屋の前を通り過ぎて、ずっと使われていなかった予備の部屋へ向かう。
そこは、ニーナがやってくるにあたり人が住むことのできるように手入れをし直した部屋。
つまり、彼女の向かう先にあったのは、彼女の部屋だった。
「入って」
「いいのか、夜遅くに男を部屋に連れ込んで」
「私の部屋はあなたたちの部屋から離れてるから都合がいいのよ」
やはり夜遅くに呼ばれたのは雨宮たちに聞かせたくない話をするから、らしい。
「それにね、二人きりじゃないのよ」
意味深な言葉を残しつつ、ニーナに案内されてリビングに入る。
この寮に来てまだ間もないということもあり、また本人が飾らない性格だからなのかもしれないが、リビングは質素で必要なものが置いてあるだけだった。
座って、と言われて洋風の椅子に座ると、隣には零のよく知っている白髪の少女が座っていた。
「零さん。夜遅くにこんばんは」
「高宮……? 何故お前がここに……」
質問をする前にニーナが紅茶を入れたカップを運んできたので、会話が中断される。
「それじゃあ、全員集まったところだし、始めましょうか」
ニーナが腰を落ち着けたところで、零が質問を挟む。
「一個いいか? 何で俺たちはここに呼ばれた? というか、何故高宮がここにいる?」
「まあ落ち着いて。話すから」
零が矢継ぎ早に質問を重ねると、ニーナから冷静になるように窘められる。
零も警戒しすぎるあまり急いでしまったことを反省し、ニーナの話を待つことにした。
「まあそうね。こんな遅くだし、私もティータイムをしたいわけじゃないから」
壁にかかっている時計を見ながらそう口にするニーナ。
そして、一呼吸したのち、単刀直入に話をさせてもらうけど、と前置きを置いてから、
「レイ。あなたにはアメリカに来て欲しいの」
と口にしたのだった。




