表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/136

115話 大宮の大会

 結局その後雨宮と大宮は二人で零のテントに遊びに行った。


 ちょうどテントに入った時に零が高宮を押し倒している(ように見える)体勢になっていたため、零は雨宮に説教を、高宮は大宮に厳重注意を受けることになったのだった。


 そんなこともあり遠足は全日程を消化して、零たち五人は帰路についたのだった。


 そして時は流れ6月の中旬。


 梅雨に入って湿気の多い日が続き雨がほぼ毎日のように降っていたが、そんな雨季の合間を縫ってこの日は快晴だった。


「飛鳥ー、頑張れー!」


 雨宮がグラウンドの中央に向かって大きな声で呼びかけると、呼ばれた本人である大宮は笑って手を振り返す。かなり余裕の見える行動だ。


 雨宮もそれを見て安心したのか隣にいる男に話しかけようと顔を向けると、その男は耳を塞いでいた。


「……何してるんですか零くん」

「お前の声がうるさかったからな」


 まあ、もちろん雨宮が話しかけた相手は零だったが。


「……失礼ですね」


 そうは言いながらも雨宮は恥ずかしそうに俯く。本人としても声量が大きかったことを認めているようだ。


「で、でも仕方ないじゃないですか! この距離だと気付かないこともあるかもしれませんし」

「それは杞憂だったな。ほら、木の下で寝てる音宮がびっくりしてるだろ?」


 零に言われるがままにグラウンドの外を見ると、さっきまで気持ちよさそうに寝ていた音宮が起き上がって左右をきょろきょろしている。


「グラウンドの外まで聞こえるなら、中に居れば誰でも聞こえるだろうな」

「あらあら、零さん、京華さんをいじめるのはそこらへんにしてあげてください。乙女らしくはなかったですが、いいじゃないですかそういうところも京華さんの魅力でしょう?」

「玲奈さんまで、人を節操のない子供みたいに言わないでください!」


 雨宮は怒って抗議するが、高宮はそばに置いていた水筒のふたをあけゆっくりと飲んでいる。


「京華さんも飲みますか?」

「……いただきます」


 それだけで雨宮の怒りが収まるのか、と零は疑問に思ったが、雨宮はお茶を一口飲むとすっかり頭が冷えた様子だった。


 この雨宮の扱い方の慣れにはさすがの零も脱帽である。


「それにしても、俺たちが応援する意味なんてあるのか? これまだ都大会だろ? 大宮が万が一にも負けるとか想像できないんだが」

「たしかに二年生で全国大会を制覇している飛鳥さんですものね。負ける確率はほぼないでしょう」


 ではなぜ来ているのかというと、単に大宮に頼まれたからだ。


「多分、飛鳥は飛鳥なりにプレッシャーがあるのでしょう」


 雨宮がグラウンドのバックストレート側を見ながら言う。そこにはたくさんのレポーターからスカウトまで来ていた。


 おそらく目当ては大宮だろう。


「それに3年生です。負けたら部活はなくなってしまいますから、絶対に負けられません。いくら飛鳥といってもプレッシャーとは無縁ではないでしょう」


 そう言われたらそうかもな、と零も納得する。いつもはおちゃらけている大宮もこのような舞台なら緊張するのかもしれない。


「まあ、もう一つ理由があると思いますが……」

「なんだ?」

「秘密です」


 おおよそ二つ目の理由が本命だと雨宮と高宮は気付いていたが、まさか当人である零に言えるものでもない。


「ん? 変な奴だな」

「何と言われても言いませんから! あっ!」


 そうやって言い争っている間に大宮が跳んだようだ。


 走高跳のバーが落ちていないことから成功したらしい。


「ふう、ひとまず安心ですね」

「大宮より雨宮の方が緊張していたりしてな」

「ふふっ、ありそうですね」


 比較的楽しみながら3人は応援というより観戦という形で見ていた。



「――おいおい、いつまでやるんだよ」

「次が大会記録だそうです。……去年の飛鳥の記録ですが」

「文字通りの自分との戦いだな」


 もう他の種目は全て終わっており、大宮は100メートル走の方でも関東大会に駒を進めていた。


 ただ、走高跳だけ。


 走高跳は他の競技と違い、失敗していない間は競技が終わることはない。


 その性質のせいか、今回のように大会記録になるほどの跳躍となると、他の競技が終わった後も延々とやり続ける事態が起こりうる。


「でも普通に考えたら去年より跳べるはずじゃありませんか? 1年も練習してきたんですから」


 運動能力自体は高いが陸上競技に精通しているわけではない雨宮がふと疑問をこぼす。


 それを否定するするのは零。


「そんなことはないさ。あいつくらいの記録となってくるとこれ以上伸びるかどうかも分からない。ましてや、その日の調子に左右される種目だからな。更新できるかどうかは五分五分ってところだ」

「そうなんですか……」


 零の説明を聞いた雨宮が天に祈るように両手を合わせている。そういったところは子供っぽい。


「いや~でもあすっちならいけるんじゃないの~? れいっちはどう思う?」


 さすがに目が覚めて零たちと二時間前に合流した音宮が零の展望を尋ねる。


「あ、俺か?」


 そうだな、と零は少し考えてから、しばらくの後に答えを出す。


「5センチくらいは更新するんじゃないか?」

昨日、更新できなくて申し訳ありませんでした。

少しバタバタしているので火曜日も更新できるか分かりません。重ねてお詫びを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ