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112話 雨宮の本当の気持ち

「零くんって好きな人はいるんですか?」


 ………………⁉︎


 今わたし何を聞いた⁉︎ 好きな人⁉︎


 唐突に意味不明な質問をしてしまい、咄嗟に口を隠す。


 ーーどうしよう、なんて言って誤魔化せば…。


 恐る恐る零くんの顔を覗くと、零くんはありえないくらいの不審な目を向けていた。


「……は?」


 すごい醒めた目で見てくる視線に耐えられない……。なんとか誤魔化さないと。


「急に何言ってんだ?」

「いや、ほら、話すこともないですし?」

「なぜ疑問形?」


 うーん、やっぱり無理。玲奈さんだったら簡単に誤魔化せられるし、それどころか反撃しそうなくらいなんだけど、私にはこういうの向いてない。


 一層訝しげに見てくる零くんの視線を何とか見ないように目を逸らしつつ、何か上手い言い訳を考える。


「そ、そうです! 今日はかなり玲奈さんと親しげに話していましたから、もしかして玲奈さんのことが好きなのではないかと!」

「はぁ?」


 言ってすぐに気が付いたが、この質問はまずい。玲奈さんに対して失礼だし、ある意味では答え合わせをしているようなものだ。玲奈さんより先に答えを知る権利は私にはない。


 質問を取り消さなければいけない、そうは分かっているのにその言葉が出ない。


「ど、どうなんですか?」


 それどころか零くんに答えを促している自分がいる。


 予想以上に食いついてくる私に戸惑いを感じながら、零くんは口を開く。


「別にあいつのことは何とも思ってねーよ。クラスメートだし頼りになるがそれ以上じゃない。恋愛感情ではない」


 冷たいことを言う零くん。だが、何故かそれを聞いて安心している自分がいる。


「じゃ、じゃあ飛鳥は?」


 やめろ、私。そんなことは聞いちゃいけない。そんなことも分からないほど分別のつかない人間じゃないはずだ。


「大宮か? まああいつも元気なやつだな。たまに暑苦しいくらいだがああいうキャラだしいいんじゃないか?」

「恋愛対象としては?」

「ん? なんだ雨宮、なぜそこにこだわる」

「どうなんですか?」


 おかしい私。別に聞かなくてもいいことなのに、止まれって言ってるのにどうして進んでしまう。


「大宮も同じだ。あいつもいい友達だがそれが恋人になるとは思えない」


 そしてまたホッとしている私。本当に最低だ。飛鳥に対して最低なことをしている。


「じゃあ沙彩は?」


 自分でもタガが外れていると分かる。それでも、そんなことが言い訳になることではないことを聞いてしまっている。


「あいつとは気が合うけど、まあそれでも恋愛にはならんな。ある意味仲間みたいなもんだ」


 3人を否定させる。こんなの零くんの気持ちを聞いているに入らない。零くんに否定させるように仕向けているようなものだ。


 だってこんな場所で聞いて本当のことを言うはずがない。もし恋愛感情を持っていても否定するに決まっている。


 これは私が私を安心させるために玲奈さんたちを利用しているのだ。友達を、親友たちを、仲間を利用しているのだ。


 ――じゃあ私は?


 それを言わないのも最低だ。結局自分のことはかわいいから傷つけたくない。傷つけられたくない。


「それを聞いて何なんだ?」


 零くんには分かるはずもない。


 そりゃ分かるはずないよ。


 だって私も今の今まで分からなかったんだから。


 そう。


 私は零くんに――恋をしているんだ。

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