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101話 闘う者たち(前編)

 2人が一斉に表紙をめくり内容を確認。


 ペンを走らせて書き込んでいく様子が、雨宮たち傍観者が状況を把握するために設置されたモニターに映っている。


「1ページ1問。つまりページをめくったら問題が解かれたことになります…が」


 ぺらっ。


 同じタイミングでページがめくられる。


「というか早くない⁉ わたし1問目から1分くらいかかったのに、今10秒くらいで解いたよね⁉」

「あすっち〜比べちゃダメだよ〜。もうあれ人間業じゃないからね〜」


 問題は全部で100問。


 そのどれもが思考を要するパズル問題。


 一重にパズルと言っても、実際は羅列された文字列から法則を見出だすものや、アナグラムの問題といった幅広いジャンルのパズルが用意されている。


「身近で見てると、体がもたないですね…」

「れいにゃん、おつかれー!」

「見ているだけでものすごく疲れます…」


 高宮がへたりこむように椅子に体を預けるのを音宮がフォローする。


「すみません、はしたない姿をお見せしてしまって」

「いいってことよ~。ほら、こっち」


 二人の熱に当てられたのか、それともその近寄りがたい緊迫感にやられたのか、どっちにしても高宮の体内温度が上がってしまっているようだった。


 そんな中で一人。


「一体どっちが勝つんでしょうか…」


 不安な雨宮の声は、はたして兄妹に届いただろうか。



(さすが美月。これくらいは朝飯前か…)


 問題を解きながら、零は同時に感心もしていた。


 美月が優秀だということはわかりきっていたことだったが、これほどとは。


「…兄さん、余計なことを考えている暇があるのですか?」


 急に美月が零に話しかける。少しの怒気を含んで。


「そう言いながらお前こそ話しかけてくるとは余裕だな」


 お互いにペンを走らせながら、軽い会話を交わす。マルチタスクが当たり前の2人にとっては、喋ることは相手の邪魔にもならないが。


(どうにかして美月のペースを乱したいが…)


 零がそう思っていた矢先、淡々と問題を解くこと10問目。


 同時に問題を目にした零と美月のペンが一瞬止まる。


「言い忘れてました」


 と、2人の困惑を予想していたように高宮が説明に入る。


「10問ずつですが、少々難しい問題を入れさせていただきました。注意してください」


 言うのが遅い、と独りごちた零。


(というか、少々じゃないだろ…っ!)


 ここで零と美月はは問われる。


 解くのか、解かないのか。


 なぜなら、2分以上かけるくらいならば解かないほうが良いからだ。


 つまり2分以上かかるかどうか、その見極めをしなければならない。


 しかし、思いの外、2人の選択は早かった。


「…さすがですね。その問題を見て、瞬時に解く決断をするとは」


 そう、2人とも解くことを選択。


 曇りない意志で2人は問題に向き合った。


(美月なら2分以内で解く…っ! ここで離されるわけには…)


 これくらいは2分で解ききれる、それならここで解かないことはそのまま負けに繋がりかねない。


 そう思った零の判断だったが、しかし。


 予想は零を裏切った。


 雨宮たちの耳に紙が擦り合う音が、()()()()のみ聞こえる。


 それは紛れもない、解答の合図。


「美月さんの方が先に解いたっ⁉」

「ぐっ…」


 雨宮の驚きの声と同時に出る、零の劣勢を告げる声。


 まさかの、美月が出題された問題を2分に対して30秒ほども余らせたのだ。


「美月ちゃん、すごい…」

「はわ〜」


 先ほどまで同時だった二人には、大きな差。


 高宮と音宮が感嘆している中、ようやく零が10問目を解き終えた。


 だがその間に美月はさらに3問を進めていた。


 完全に差を付けられてしまう。


「…」


 零は淡々と次のページをめくった。

すみません、思った以上に二人の闘いが長くなってしまったので、二人の闘いが終わるまでは毎日投稿としていきたいと思います。昨日に投稿できなくて申し訳ありませんでした。

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