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クロスワールド  作者: えりぞう
第一章 旅の始まり編
31/50

呼び出し


 エリアス隊長達の居なくなった部屋で、俺は嵐が去った後の静けさに浸っていた。


「な、なんか凄い方でしたね。でも、あの憧れのリーフナイト隊長と副隊長をこんな近くで見れる日が来るなんて。僕、生きてて良かった。」とマークルが目を輝かせながら言ってきた。


「マークルってなんでも大袈裟じゃない?俺が分かってないだけかもしれないけど。」

 正直、リーフナイトって言うのも良く分からない。

 あのログが手も足も出ないあたり、凄い人なんだって言う事は分かるけど。


「リーフナイトは騎士の中でもより優れた功績を残した者だけに与えられる“聖騎士”の称号を得た者達で構成された騎士団だ。彼等の強さは並みの兵士や騎士を凌駕するものだぞ。噂ではリーフナイトの9割がレベル400越えだとか……。皆何かしらの英雄で、憧れるものは多い。」

「ヒェッ〜、凄いけど怖いデシ。」

「まぁ、化け物の集団アル。この前の結界の解除をしたのもあの団長アル。」

 化け物って……確かに強さ的にはそうだけど。


「そうだったんだ。どうりでログの結界をすぐ破るわけだ。師匠って言ってたし。」

「なんでも、孤児だったログを拾って、今のローズライト家に預けたのもあの団長なんだそうだ。ログからしたら母親的存在でもあるしな。」


 ふーん、そうだったんだ。確かにすごく親密そうな様子だったしな。


「そ・れ・よ・り・も!チエル。前から雰囲気みて思ってたアルけど、ログと付き合ってるアル?実は、もうやっちゃったアル?」

 オリーブがニヤニヤとおっさん臭い笑みを浮かべながら聞いてきた。


「はぁぁ?そんな訳ないだろ!俺は男なんだぞ。」

「そんな事見たら分かるアル。恋愛に性別なんて関係ないアル。性別とか種族を言い出したら私は誰とも恋愛できなくなる事になるアル!」

 それを聞いたルイスが、そんな事はないっ、君も素敵な女性ではないか!て顔を真っ赤にして、言っていたけどオリーブはそっちのけで俺の方に注目していた。

 ルイス……頑張れよ。


「そ、それはそうかも知れないけど……。ってか、俺ログと出会ったのもついこの前だし。なんでこんなに好かれてるのか俺が聞きたいぐらいなんだけど。師匠の事だってルイスに聞くまで知らなかったぐらいだし。ログは強いし、顔も良いから相手なんてよりどりみどりだろ?半分からかわれてるんだと思ってるぐらいなんだけど。」


 そう言ってみれば、俺はログの事全然知らない。長い付き合いってわけでもないけど、俺からすればなんであんなにも好意を寄せられてるのかサッパリな訳だし。

 今度さりげなく聞いてみるのも良いかもしれない。

 ……ちょっと怖いけど。


「からかわれてるって、に、鈍い!鈍いアル!ログは確かにクソ野郎アルけど、結構本気そうに見えたんだけどネ。」

「その鈍さがチエルデシ!!」

「進展したら教えてほしいアル!恋愛話は女の子の好物アル。」

「残念ながら進展はないけどね。」


 文句を言うオリーブと、ガッカリしているルイスとそれを慰めるマークル。

 なんだかんだでその後も皆んなでダラダラと話をしながら、時間まで身体を休めることになった。


 ーーーーー



「痛っ……。」


 そろそろ団長達が呼びに来る時間だから、俺も少し準備をしようと思ってベットから出ようと足を下ろした時、右の足首に痛みが走った。


 足でも捻ったかな?


「……っ!!」


 足を確認してみると、足首にくっきりと何かに掴まれた様な痣が残っていた。

 若干、皆んなとの会話なんかで忘れかけてたけど、さっきまで見ていたあの夢を思い出す。

 確かにあの時に掴まれたのも右の足首だった。


 あれは、夢じゃなかったのか?


 ドクン、ドクンとうるさく鳴り出した心臓の音がやけに頭に響いた。


 ……俺は貫かれた時、本当に何にもなかったのか?


 考えても分からない不安が、心臓の音と共にどんどん大きくなって、それが冷や汗となって顎を伝った。


「チエル?どうしたんデシ?顔色悪いデシ。大丈夫デシか?」

 モソモソと、俺の膝に乗ってきたダチュラの声で俺はハッと思考が現実に引き戻された。


「あ、うん。大丈夫。ちょっと目眩がしただけだから。」


「あまりまだ無理はしない方がいい。辛くなったらいつでも俺を頼ってくれ。手を貸すよ。」

 ルイスも声をかけてくれる。

「ありがとう。」


 そして、ガチャリと扉が開く。

「待たせたね。準備は出来てるかい?」



 ーーーーー


 あの白い広場のその先に立つ、この世の物とは思えない様な白く美しい城に俺たちは案内され来た。


 通りすがりに見た広場はまだ完全に修復されては無くて、割れた石畳や、なぎ倒されてる木々があの時を思い出させる様に残っていた。

 辛うじて、死体や血の跡が綺麗にされていた事が俺の足を止めない事に繋がった。

 過ぎてみればあっという間の夢のような出来事でも、これは現実なんだ…とその傷跡を見せられる事でまた俺たちの身体と心にその恐怖を蘇らせていく。

 震えていたのは俺だけじゃ無かった。

 マークルやルイス、オリーブも怒りや悲しみ、恐怖を拳に握り込み震わせていた。




 何メートルも在ろう巨大な城の正面扉が俺たちが着くと同時にゆっくりと開かれた。

 開かれた先に広がる景色はなく、入り口を覆う様に白い靄がかかっていた。


「こ、これって……。」

 ルイスやマークル達も初めて見るようで驚いた表情をした。

「これは外から城の中が見えないようにかけている魔法さ。後は敵の侵入を防ぐ防御結界にもなっとるんだよ。今回、私達は普通に通り抜けられるから安心しな。」

 と、エリアス隊長が説明をしてくれる。


 言っていたとうり、本当にただの霧の様な感じで、何も感じる事なく俺達は城の中に入った。


「うわぁぁ……。」

「こ、これはなんて美しい。」

「綺麗アル……。」

「眩しいデシ〜。」

「か、感動ですっ……。」


 入ってすぐ広がる景色に皆んな感嘆の声を漏らした。


 そこは1つの吹き抜けの空間でできた、純白の聖堂だった。

 正面には巨大な白のパイプオルガンが鎮座し、窓から溢れる日差しが銀色の巨大なパイプに反射する事でこの世のものとは思えない空間を作り出していた。


 自分達が入って来た入り口の上にある、マザーホワイトと7人の守護神を描いた巨大なステンドグラスから入り込んだ光が、さらに足元を鮮やかに照らして来るものを歓迎する。


「初めてくると中々感動するもんじゃろ?」

「感動なんて言葉じゃ収まりきらないな……。」


「ウフフ。皆さん満足して頂けましたか?」


 カツカツと、大理石の床を鳴らしながら奥につながる階段から1人の女性が降りて来た。

 白地に白銀の装飾のローブを身にまとい、背中からは身長ほどもある真白の羽を生やしている。


「私は此処で創世主の声を聞き、世界を導く役目を任されております、神官であり天使のリザと申します。いきなりお呼びして申し訳ありません。」

 淡いクリーム色の髪が光に反射して彼女がいるだけでその空間が神聖な物に浄化していく様な気がした。


 それにしても、て、天使だと……。

 本当に存在してたのか……。

 瞬過ぎてもはや俺には見えない。

 俺にはリザさんから後光が見える。


 すると、リザさんの後ろからそろりと、もう1つの影が出てきた。


「ログ。」


 ログは気まずいのか、表情を曇らせて俺と目を合わそうとしない。

 まあ、普通そうなるよな……。

 ぶっちゃけ、ログならいつもみたいな感じで俺の前に現れそうな気もしてたけど、あいつも一応罪悪感と言うものがあった様だ。


「あんの……馬鹿弟子が!」

 ウジウジした様子のログをみて、俺より先にエリアス隊長がログの頭をまた引っ叩いた。


「痛って…!!」

「何ウジウジしてんだいっ、男のくせに。そんな事してても時間が無駄なだけだよ。私は無駄な事が嫌いなのさ。さっさと頭下げて謝っといで!馬鹿弟子が!」


 そう言ってエリアス隊長がログの頭を無理矢理手で下げた。

「ほらっ、さっさと謝んな。」

 なんか、もう初めてログと会った時の格好良さが夢の様だ。

 こんなに残念な方向にイメージ崩れる奴も中々いないんじゃないかな……なんて、今のログを見て思ってしまった。


「ちょっ、やめろよ。…………チエル、ごめん、なさい。」


 でも、謝ってくれたら許そうと決めてたし、こんなしょぼくれたログを見てるのもなんだか気持ち悪い。

 サクッと許してやるか!


「しょうがない「声が小さくて聞こえないアルなぁ〜!!」」


 え?!


 ログが言いようにされてる姿に気分が良くなったのか、オリーブがニヤニヤしながらいきなり割り入って来た。

「オリーブさん、今そんな事言っちゃダメですよ。」

「そんな事知らないアル〜。プフフフフ。」

「……チッ。」


 あ、ログの奴今舌打ちしなかったか?

「あ〜?なんか文句あるアルか?この未遂強姦魔!変態!」

「オリーブ、その辺に……」

「うるさいアル。此処で昔からの恨みを晴らさないとこんなチャンス中々無いアル!」

 ログ、お前一体何しでかしたんだ。

 何故だか分からないけど、どんどんと話しが別の方向にそれて行ってる気もする。


 見るとログの後ろでリザさんが困った様な顔をしていた。

 しまった、このままじゃリザさんを困らせてしまう。


「あー、オリーブ。なんとなく気持ちは分かるけどさ、この辺で許してやろうよ。ログもここまでしてる訳だしさ。それに今は話を聞くためにここまで来たんだろ、俺達。」

「そ、それもそうアルけど。……まぁ、チエルもそう言うなら、今のログの姿は録画したし、ここら辺で切り上げてやるアル。」


 録画がよく分からなかったけど、これ以上迷惑はかけなくて済みそうだ。


「そんな事でログ、今回は特別に無かったことにしといてやるよ。」

「ありがとう、チエル。でもなんだか全く無かった事にされるのもちょっと……。」

「お前、やっぱり本当懲りないな。」


「皆さん、仲直りできたみたいで良かったです。」

 青春ですね……なんて言いながらリザさんが天使の微笑みを浮かべた。


「本当に申し訳ありません。」

 エリアス隊長がリザさんに頭を下げたので、釣られて俺達も軽く頭を下げる。

「いいえ、全然構いません。ウフフ、見ていてなんだか、とても和みましたもの。所で、今回みなさんをお呼びしたのは皆さん……いえ、正確にはログ、オリーブさん、チエルさんにある任務をこなして頂きたいのです。」


なかなか進んでなくてすみません。泣

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