表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスワールド  作者: えりぞう
第一章 旅の始まり編
30/50

エリアス隊長


「え?み、皆んなどうしたんだよ、、。」

 何で皆んな何も言わないんだよ。

 ロ、ログに限ってそんな……。

「ちょ、マークル何とか言ってよ。オリーブも。」

 マークルもオリーブもさらに深く下を向き肩を震わせた。


「まさか……そんな。嘘だよな。」


 心の中に深い悲しみが生まれ、それがやがて涙となって溢れ出た。

 アイツはあんなにも俺を守ってくれたのに。

 せっかくできた友達だったのに。


「ヒック……グズッ。ロ、ログッごめん。

 俺、守ってもらったのに……。」

 溢れ出る涙を手で拭っていると、

「……ッ。」

 肩を震わせたオリーブからも声が漏れた。

「オ、オリーブ、、。」

 オリーブは俺よりもログと付き合い長いもんな。

 俺なんかより、悲しいに決まってる。

「……ッ。うぅっ。アハッ、アハハハハハハハハ!ざまぁないアル!」


「え?」


「ッ、そんなに笑ったらログさんに悪いですよ、オリーブさんっ。プッ。」

 急にオリーブが笑い出したと思ったらマークルやルイスまで吹き出し始めた。


「え?え?どういう事?ログ死んだとかじゃないの?」

「何言ってるアル。あの馬鹿がアレくらいでくたばるわけないネ!本当あの時は久しぶりにスッキリしたアル。」

「オリーブ、もうよせ。ログに、プッし、失礼だろ?フフッ。」


 そんなに言うルイスだって我慢しきれずに吹き出す始末だ。

 それにしても全く話についていけない。

 え?とりあえず、ログは無事なのか?

 てか、アイツ何があったんだ。

 てか、俺の涙返せよ。ちくしょう。


 すると、弱々しく部屋の扉が鈍い音を立てて開いた。


「ただいまぁ〜、こんなのやってらんないよ。だいたい、いっつも僕にだけ厳しいんだから本当ないよね、あのおばさん。だから結婚しても旦那に逃げられるんだよ。」


 何やらグチグチと、呟きながらぐったりした様子のログが部屋に入ってきた。

「お〜お〜、お疲れアル。未来の英雄さんは大変アルなぁ〜。ウヒヒヒヒッ。」

 もうオリーブの笑い方がだんだんおかしくなってきている。

「笑い事じゃないよ、全く。本当に、いつかやり返して…………チエル。」

 グチグチと言っていたログが俯いた顔を上げて俺達の方を見たとき、ようやく俺が、起きたことに気づいた。

 あっけにとられた様に、ポカーンと口を開けて固まってる。

 ちょっといつものイケメンが情けない感じに見えてこれはこれで面白い。

「お、オッス。いや、違うか、おはよう!これも違うか。ログは元気そっ、お゛」

 俺が言い終わるよりも先に、ログが飛びついてきた。

 オリーブ同様、物凄い力で抱きしめられる。

「ちょ、ちょ、タンマ、タップタップ!し、死ぬ。」

 オリーブにしろ、なんて力してるんだ。

「ちょ、ログッ!」

 ログの肩を掴むと、小刻みに震えていた。

 グズっと鼻の鳴る音がして俺はログが泣いてる事に気づいた。


 ログ……。

「心配かけてごめん。それと、守ってくれてありがとな。」

 俺は素直にそう言って、ログの頭をポンポンと撫でた。

「本当だよ。急に飛び出してくるんだから。チエルが倒れた時は目の前が真っ暗になったよ……。もう、無茶しないでよ。何処にも行かないでくれ。」

「悪かったよ。でもログこそ、なんか口じゃ説明しにくいけど危ない事してただろ?俺だって怖かったんだぞ。」

「ごめん。でもチエルは弱いのに本当に飛び出してくるよね。もっと自分の事を大事にしてよ。」

 よ、弱いってそんなハッキリと……本当の事だけど。


「僕分かったんだ。」

「ん?」

「きっとチエルはこれから先、口で言っても僕の言う事聞かないよね。危ない所にどんどん飛び込むタイプだ。」

「そ、そんな訳ないだろ。俺だって死にたくねぇもん。俺のは、ど、どうせ死ぬならやれる事やってから死んでやろうって言う所謂、貧乏精神みたいなもんで……。」

 それを言ったら周りにいる皆んなもため息をついて呆れた様な顔をした。


 え?俺って変な事言ってる?普通じゃない?

「ほらね、だから……」

 そうボソッと呟くと、ログはそのまま俺をベットに押し倒した。

「え?」

「今回無茶したお仕置きと、これからについては、身体に直接教えてあげることにした。」


 そう言って艶めかしくログは自分の唇を舐めた。


「えええぇぇぇぇぇ!!!???ちょ、ちょ、ちょ、あまりに展開が急すぎて何もついてけないんですけど!?てゆうか、え?皆んな助けてくれぇぇ!」


「ログ、心配したのは分かるがそんな所で自分の身勝手な欲求をぶつけるのはよせ。」

「そうアル。こんなレディの前で何おっ始めようとしてくれてるアル!キモいからやめるアル!滅!滅!」

「ぼぼぼぼぼぼ、僕はどうしたら……。」

「チエルが食われてしまうデシ〜〜!!」


「あれ?皆んなまだ居たの?邪魔だから雰囲気よんで、出て行ってくれるかな?」


 目が座っている、と言うか頭がイッているログにはもはや言葉は届いていない様で、ルイスが慌ててログの肩を持って引き剥がそうとした。

「さっきの事で疲れてるのも分かるが、いい加減にしておけ!」


「うるさいなぁ……。」

 ログが、そう言った瞬間ルイスの手が肩から弾かれた。

 それと同時に俺とログ(正確にはこのベット)を囲んで何やら見覚えのある障壁が皆んなとの間に現れた。


 ん?え?これってまさか……。

 ルイスやマークルが慌ててその結界に攻撃するけど、全て虚しく弾かれて終わる。

「ちょ、どうなってるアル?!これってこの前の結界とほぼ同じものなんじゃ……。」

「あの時は、その結界にしてやられたけど、良く良く考えたら結界の本当の使い方を教えられた気がしたよ。それなら僕だって覚えておいて損はないいでしょ?」

「損はって、、これだから天才は腹立つアル!」


 いやいや、結界は凄いけどそんな話じゃないよね?おかしくない?

 結界の本当の使い方?

 絶対違うだろ?!犯罪用じゃねぇか!

 ますます俺ピンチなんじゃ……。


「邪魔者はいなくなったし、これで気兼ねなく始められるね。」


 ……いや、気兼ねしかねぇよ!

「ちょ、誰かリアルに助けてくれぇぇ!」


 本格的にログが俺の上に被さったてきた。

 必死で結界を叩くルイスとマークル。

 諦めて寝るダチュラ。

 キャァーーと、顔を赤らめて手で覆うオリーブはよく見ると指の隙間からガン見しているのが見えた。アイツ……。


 ーーさようなら。いろんな意味で。

 明日からも皆んな友達でいてくれよ。


 そんな事を思った瞬間。



「アンタ達、ちゃんと身体を休めておるか?」

 ガチャリと部屋の扉が開き、白銀の鎧に腰まで伸びる軽くウェーブのかかったミントグリーンの髪をなびかせた綺麗な女の人が入ってきた。



「「「「あ!」」」」


「ん?何皆をしとるんじゃ?って……え゛?」


「エリアス隊長!すみません。ログのやつが暴走してまして……。」

 ルイスがエリアス隊長と呼んだ人の元に駆け寄った。

「たくログ、お主は全く……。」


 そして、スタスタとこちらに近寄ってきた。

 その人は、はぁ〜と大きくため息をついて叫んだ。

「こんの馬鹿者がぁ!!」


 ーーパリィン!


「え゛?!」

「「「「え?」」」」

 ゴンッ!!


「い゛、いつっ〜〜。し、師匠!」

「へ?し、師匠?」

「ったく、ログあんたってヤツは本当にどうしようもない子だね!そんな子組み敷いてからに!それになんだいこの結界は!」

「し、師匠には関係のない事だよ。僕は」

「やかましいぃ!口ごたえするんじゃないよ!」

 そう言ってまたログの頭を思いっきり殴った。


 す、すげぇ……。

「いってぇ!」

「早くその子の上からどきな!その腐った根性1から叩き直してやるわ!」


「エリアス隊長、落ち着いてください。」

 怒りで鬼のような形相のエリアス隊長の後ろから同じ白銀の鎧に身を包んだ金髪の優男が出てきてエリアスを止めに入った。

「うるさいよリアム。私ゃこのクソガキに1発入れてやらないと、」

「もう何発も入れてるでしょ、これだからこのおばさんは嫌なんだよ。」

「なんだって!?もう1度言ってみなログ!」


 な、なんか凄い人きた……。

 ルイスは見慣れてるようで、1歩下がった所で様子を伺っていた。

 マークルはエリアス隊長の怒鳴り声にびびってダチュラと共に端っこで震えている。

 オリーブはログが怒られている様子が面白くて仕方ないのか、さっきくら涙を流しながら爆笑していた。

 もう、なんだっていいよ……。


 俺の上から引き剥がされたログがエリアス隊長に何発もゲンコツを食らっていた。

 俺が言っちゃダメかもしれないけど、ちょっと可哀想だ。


「大丈夫ですか?」

 金髪優男が俺の手を引いて起こしてくれた。

「な、なんとか。ありがとうございます。」

「それは良かった。私はリーフナイト副隊長のリアムと申します。」

 そう言って、リアムさんは俺に軽くお辞儀をした。

「俺はチエルです。よろしくお願いします。」

「あなたの事はログのから聞いてますよ。今回の件は大変でしたね。……って、隊長!そろそろ戻ってきて下さい。」


 そう言われて、埃を払うように手をパンパンと払いながら隊長が戻ってくる。

 部屋の隅でボコられて伸びたログが居たが、もう見ないことにした。


「弟子がすまないことをしたね。私はリーフナイト隊長のエリアスじゃ。初めましての人はよろしくの。」

 そう言って、喋り方に似合わない美貌で微笑んだ。


「エリアス隊長って女の人ですよね?男性名だけど……。」

 マークルが俺の横に来てコソッと耳打ちしていた。

「ほっほっほ。エリアスはの、私の前任で隊長を務めていた旦那の名前なんだよ。長い間務めてたもんだから、皆んな私の事をエリアス隊長ってそのまま呼ぶもんだから、もうそれにしたのさ。」

「そ、そうだったんですね……。」

「その旦那は今はどうしてるアルか?」

「引退して、自由気ままに生きてるさ。」

「嘘つけ。夫婦喧嘩が原因で現場復帰できなくなって、それが原因で家を出ていかれたくせに……。」

 ログが部屋の隅からそう言うと、エリアス隊長は近くに置いてあった分厚い本をすぐさまログの頭上に掘り投げた。

 直撃して、またログは静かになった。


 黙ってれば良いのに……。


 コホンッと咳払いをして、場の空気を無理矢理戻すエリアス隊長。


「まぁ、その話は置いといて。今回はアンタ達少々大変だったね。」


 い、いや、少々どころじゃないんですけど……。

「まだ、全ての傷が癒えてもいないうちにすまないんだが、お前達の今回の様子を聞いた神官達が直接話しをしたいと言っておるんだ。」

「し、神官がですか?!」

 ルイスが驚いた様子で椅子から立ち上がった。

 そんな、驚くことなのか?

「その神官様が一体なんの話アルか?」

 オリーブが問いかける。

「ここで私達から話す事は禁じられていてね。直接アンタ達に話したいとの事なんだよ。」

 ふーん、と鼻を鳴らすオリーブ。

 はわぁ〜……と、涙を流すマークル。

「そ、そんなに凄い事なの?」

「す、凄い事ですよ!神官は一部の式典や神の予言の伝令を行う以外は殆ど出てくることのない方達なんです。神の言葉を聞きそれを世界に伝える最高機関の様なものですよ。」


 な、なんだかよく分かんないけど、凄いんだな……。

 神の言葉って……なんか言っちゃ悪いけど胡散臭くない?


「それでは、2時間後にまた迎えにくるでの。それまでゆっくり身体を休めておくと良い。おい、リアム。あの馬鹿弟子は一旦連れて行くよ。」


「全く、人使いが荒いんですから。それにもう少し加減ってものをしてあげて下さい。」

 リアムさんが、ログを肩に担ぎ上げでエリアス隊長の後に着いて行く。

「チエルさん。ログの事出来るなら許してやって下さい。コイツ普段友達なんてあんまり居なくて、あなたの事すごく大事みたいで。」


「大丈夫です。友達いないのは一緒にいれば分かりましたから。それにもう、俺の代わりに隊長さんが十分過ぎるぐらい、かましてくれたので。」


 そう言うと、軽く微笑んで出て行った。



 ーーーー


「あの子がチエル……ね。」

「案外、なんてない子でしたね。本当に、、。」

 部屋から出たエリアスは気を失ってただ担がれるだけのログをちらりと見た。

「ログ、あんた愛想つかされなくて良かったね。気持ちは分かるけど、それじゃいつか手からすり抜けてくよ。」

 エリアスの後ろを歩いていたリアムが、ニヤリと笑う。

「隊長の元旦那さんの様にですか?」

「リアム、あんたもこうなりたいのかい?」

「じ、冗談ですよ隊長〜。」

「ふん、どうだかね。……ログ、あんた彼女と約束したんだったら、踏ん張んなよ。」


R15設定にしているゆえ、ログには悪いですが、ひたすら未遂で終わってます。

悲しいながらも、私は未遂にロマンを求める様になってきている様な気も……笑

次はどんな風に迫り、どんな所で止めてやろうか……。ワクワクが止まりません。

いつか出来ると良いね!

これからも温かい目でよろしくお願いします(^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ