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クロスワールド  作者: えりぞう
第一章 旅の始まり編
25/50

混乱


 誰かの声が聞こえたーー。


 なんだ?と、思った瞬間、広間を覆うように薄っすらと赤い半透明の障壁が現れた。

 これが、マザーホワイトの加護ってやつなのか?


 突然の状況の変化に呆気にとられる俺。

 するとーー、

「ッーールイスッ!」

 いきなりログが大声でルイスを呼んだ。

 どうしたんだ?と声に出るよりもルイスが俺に向かってタックルをかましてきた。

「ぐえへっ」

 そのまま俺はルイスとなだれ込むように地面を滑っていく。

 タックルの勢いで肩の上で寝ていたダチュラも端の方に吹っ飛んで行った。


 いってぇーー、頭打った。

 背中も擦ったところがジンジンする。


「ど、どうしたんだよルイス、いきな……り。」

 ルイスの身体を起こした時に自分の手が妙に生暖かい事に気付いた。

「え?な、何これ。」

 見ると左手が真っ赤に染まっている。

 血ーー?

 ルイスの背後にわずかに立ち込める砂煙が見えた。俺達が立っていた場所の地面が裂けて、何人もの人が倒れて血を流している。


「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 フリーズしていた頭が誰かの発した悲鳴で、急速に動き出す。

 ハッとして見ると、祭壇で立っていた神官の首がその瞬間に体から離れ地面へと転がり落ちた。

 一拍おいて残された体も地面へと鈍い音を立てて落ちる。

 それを見た周囲は一気に混乱状態に陥った。

「ちょ、一体何がっーー。」


「っつ、間一髪だったな……。」

 俺の上から起き上がったルイスがよろめきながら立ち上がった。

「ルイス、大丈夫なのか?血がっ……。そ、それに俺のせいで、、。」

「大丈夫だ、そんなに深い傷じゃない。それにお前のせいでもないさ。」

 ルイスは胸ポケットから円筒形状容器を取り出し、中に入っていた緑の液体を飲み干した。

 すると、ルイスの身体がほんわりと光る。

 どうやら回復薬を飲んだようだ。

「とりあえず傷はふさがった。それよりチエル、立てるか?」

「う、うん。それにしても………なにがどうなって、、」


 ちくしょう。

 これ完全に敵襲だよな……神官の人殺されてるし、てゆうかここ結界はられてるんじゃなかったのかよ?!

 そう言えば、ログやマークルは大丈夫なのか?オリーブも……。


「なんだ、あれは!!?」

 逃げ惑い混乱する兵達の中の誰かが一際大きな声を上げた。

 指している方を見ると、首をはねられた神官の数メートル上で禍々しい黒い球体が1つ浮いている。

 それは少しずつ大きくなりながら、縦に大きく亀裂を走らせた。

 そしてその亀裂の向こうにまるで別の空間がでもあるかのように、亀裂の隙間からこちら側に向かって空間を破る様に軋み出す。

「ちょ、なんだなんだよあれは……。」

 空間が軋むようなその振動が、大気を通して俺にも伝わる。

 そしてついにその軋みと共に亀裂から黒い光が少しずつ漏れ出した。


「チエル、……出来るだけ遠くに離れるんだ。」

「え?で、でも、、。」

「何でも良いから早くしろ!ものすごい魔力だ……とんでもない物が出てくるぞ!」

 ルイスの額に流れる汗が頬を伝い顎先から地面に落ちてシミを作った。


 いつもとは違うただならないルイスの様子から、俺は町に繋がる端の方に向かって踵を返す。



 パリンッーー


 背中の方から、薄いガラスの容器が割れるような高い音が聞こえたーーと、同時に黒く走る亀裂が裂けて向こう側から、ドロドロと黒く重たい液体が流れ出た。

 次第にその液体は1本の川の流れのように伸びて立体的に形を変える。



 そしてそれは、黒と紫の鱗を持った巨大な蛇へと変化した。


「……つっ。」

 その蛇の目は開かないのか閉じられており、辺りを探るように静かに動き出す。

 伸ばせばこの広場一周分ほどありそうな胴体が、思ったよりも静かに地面を這った。


 蛇に睨まれたカエルーー、なんて言葉を聞きたことがあるけど、睨まれてもないのに俺を含めその場のものは全員が動けなかった。


 パキリッ


「ヒッーー、うわぁぁぁぁぁ!!」

 蛇の身体の下にあった木の枝が折れた音に、俺の近くにいた兵士が反応した。

 声を上げて兵士が蛇とは反対方向に走り出そうと身体の向きを変えようとした瞬間。


 ーーヒュッ


 一瞬でその兵士が消えてしまった。


 な、消えた?なにが起こったんだ?

 今そこにいたはずなのに……。


 ポタ……ポタ……。


 俺の頬に雨ような水滴が落ちてきた。


 なんだ?雨?


 それを手で拭う。


「え?赤……。」


 俺の少し離れた位置にいるやつらが絶望した様な表情で俺の頭上を見上げている。


 なんとなく分かってる。

 でも、そんな事信じたくなくてーー恐る恐る俺も自分の頭上をそっと見上げた。



「ヒッーー」


 見上げると俺の遥か頭上で、首を持ち上げた蛇の閉じた口から1本の足が出ていた。

 そしてそこから降ってくる血の雨。

 蛇が兵士を飲み込もうと、顔を天に向けて口を開き、重力で口の中に兵士を流し込んだ。


 静まり返っていた周りは、その光景を前に再びパニックとなった。


 殆どの兵士が蛇から逃げようと、泣き叫びながら広場から逃げようと走り出す。

 動くものに反応するのか、蛇は次々と逃げ惑う兵士達を飲み込んでいく。



 次々に飲み込まれていく、同胞を前にまた俺は動けなかった。

 全身が逃げろと警報を鳴らしているのに、頭で命令しているのに、あの時と同じように身体が動かない。

 只々、目の前で飲み込まれていく様子を目で写す事しか出来ない。

 最早震えさえ、ない。

 きっと本能が悟ったのだ、自分は餌に過ぎないと。


「は、……はははっ、、。」

 情けないほどに絶望した自分の喉から掠れた笑い声が出る。


 そして、数十メートル先にある蛇の頭が動いてないはずの俺の方を向いた。

「ヒッ……ッ。」

 そして逃げ惑う兵士達を弾き飛ばしながら、鋭く尖った何十本の牙を曝け出して俺に迫る。


 食われーーーー。




 ガキンッーー!!


 またも弾き飛ばされた俺が見たのは、あの時と同じ美しいグレイの髪。

 そして、透き通る様なブルーの瞳。


「遅くなってごめんね。」

「……ロ、ログッ。」


 ログがさっき手渡された剣、クラウソラスを手に蛇の突進をとめていた。


「はああぁぁぁぁ!!」

「ウリャァァァァ!!」


 そして、蛇の頭の上からよく知っている2人の影が降ってくる。

 2つの影は手に持った剣で蛇の頭斬りつけた。


「シャァァァ!」

 斬りつけられた蛇が声を上げ、俺達から距離を取った。


「す、凄い……。」

「チエル大丈夫アルか?」

 ヒラリと着地したオリーブと、ルイスが俺と、ログの元へと駆けつけてくる。

「あ、ありがとう。」

「ログ、何してるアル。後一瞬遅かったらチエルは今頃アイツのお腹の中アル。」

 そう言ってオリーブはログの尻をバシバシと蹴りつける。

「ごめん、ごめん。最初の攻撃の時に思ったよりも端の方に飛ばされちゃって。」

 そう言ったログの頭から頬、顎にかけて血が滴っている。

「ちょ、ログ血が……大丈夫なのか?俺のせいでごめん。」

 そう言う俺の肩をルイスが叩いた。

「さっきも俺が言ったが、これはお前のせいではないよ。これをやったのはあの、馬鹿喰いしてるあの蛇なんだからな。」

「そうだね。皆んな食べられちゃう前に、なんとかしないとね。それに、逃げように周りに結界張られてたら、食べられるのも時間の問題になっちゃうからね。」

「そうアル。さっさと殺るアル。こんな籠の中じゃ、狭くてうっとしいっーーネ!」


 そう言ってオリーブがものすごい勢いで、再び蛇に突っ込んでいった。

 オリーブの踏み込んだ地面がえぐれている。

「ルイス、チエルにファングを付けてくれるかい?僕も行くよ。」

 返事も聞かず、そう言ったログも蛇に向かって突っ込んで行った。


「やれやれだな……。ファング!」

「グオォォォ!」


 ルイスが呼ぶとファングが俺の前に降り立った。

「我が血の誓いと魂の契約に従い、その力の一端を分けあたえ給え。」

 ルイスがファングにそう叫ぶと、ファングが馬ほどの大きさに巨大化し、ルイスの周りにも赤く燃える様なオーラが漂い始める。


「ファング、チエルに付いて守れ。俺はあの忌々しい、我らが宿敵たる姿を取る魔物を狩りに行く。」


 そして、ファングが俺の服を咥えるのと同時にルイスも蛇に向かって駆け出した。



 ファングの背中に乗った俺は上空から、下の様子を見ていた。

 助けを呼びに行こうとしたが、ログの言っていた通り外には出ることができず、赤い壁に阻まれてしまった。

 広場では蛇の相手を3人がしている間に円形状の広場の隅、3箇所に分かれて兵達が集まっていた。

 所長と指揮官が新兵を守る様に前に出て防御結界を展開しているようだ。

 そして数人が結界に向かって何かをしている……多分この結界を解除しようとしていると思うんだけど、俺にはよく分からない。

 加勢したい所だけど、俺が言っても邪魔になるのは目に見えてるし。

 飛んで行ったダチュラと、マークルも気になる。




「はああぁぁぁ!」

 オリーブがものすごいスピードで蛇に突進していく。

 1番起動力のあるオリーブが動き回ることで蛇を錯乱させ、その隙にログとルイスが蛇に斬りかかる。

「シャァァァ!」

 3人いる事で蛇も標的が定まらずにいるみたいだ。

 が、あんまりダメージとして溜まっているのかはわからない。

 剣で斬りつけても、キーンとした高い音が鳴って、中まで攻撃が通りきってなさそうな感じだ。

 あの3人がこれだけやってるのに、どれだけ頑丈な蛇なんだよ。


「ぐっ、、。」

 ルイスが蛇の尻尾に弾き飛ばされ、広場の隅に植えられていた木ごと吹っ飛ばされる。

「ルイスっ!」

「くそっ、なかなか硬いな。刃が殆ど通らない。」

 それでも、なんともない様に起き上がってくるルイス。

「分散した兵達からの援護魔法でも殆どきいてないみたいだね。さて、どうしようか……。」

「しょうがないアル!こんな所で使う気はなかったけど、新兵器の超小型AGミサイルで一気に頭吹っ飛ばしてやるアル!発射準備が整うまで蛇を2人で引き付けるアル!」

 そう叫んだオリーブが、俺の飛んでいるあたりまで飛んできたかと思うと空中で静止した。


「えぇ!?オリーブ飛べるのかよ!」

「これくらいは造作もないアル!それよりも私の後ろにいるアル!吹っ飛ばされたくなかったら!」


 そして剣に変形させたままの腕を前に突き出したかと思うと、その腕をさらに変形させていく。

 最終的に黒光りするゴツい砲身へと変形させたかと思うと、その腕から煙が上がり出す。

「ターゲットロックオンアル。」

 オリーブがそう言うと、先端の砲口から光が激しく漏れ出す。


「野朗共ぉ、全力で防御するアル!発射!」

 発射の声と被って左右の砲口から煙を噴射させながら俺の腕ほどある筒状の物が蛇の頭部目掛けて飛んで行った。

ちょっと話全体を見直し修正しております^^

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