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クロスワールド  作者: えりぞう
第一章 旅の始まり編
20/50

新人兵実力把握テスト②

 

 周りの人達が声も出ずに固まっている横をニコニコしながら、俺の元に戻ってきたログ。

「僕の方がかっこよかったでしょ?」


「このバッカ!ちょっとは加減しろよ!」

 砂煙が収まった森は、丁度丸太が飛ばされた後に沿ってそこだけ木々が消滅し、数十m先にある岩肌に丸太が刺さっているのが見えた。


 それを見てペロッと舌を出してやっちゃったポーズを決めるログに、ルイスはやれやれと肩を竦めた。


「それでは皆さん、気持ちを切り替えて次の方に行きますにゃん……。」

 あははと、引きつった笑顔でモナさんが次の丸太の横に立った。


 結局そのほかに丸太を壊す事が出来た人は勿論俺やマークルも含めていなかった。


 その後も、遠距離武器を使ったテストや、魔法防御に関するテスト、得意の魔法やスキルに関してのテストなどが1日かけて行われた。


 そこで初めて俺が気づいた事がある。

 俺以外の全員が何かしらの魔法やスキルを使えた事だ。

 え?嘘だろ?と、何回思った事か……。

 あれだけ俺と張ってグダグダだったマークルが手のひらから火の球を出した時は顎が外れるかと思った。


 ダチュラもオトモとして頑張っていたみたいだけど、所詮イモ虫……。

 攻撃力、防御力、において俺と同様に虚しい結果となっていた。

 ただ、機動力テストでは甲羅のついたノソノソとした動物よりもわずかに早くゴールしていたので、2人で泣いて喜んだ。


 そして、日が沈んで少ししてからやっと長かったテストが終わった。

「それでは皆様お疲れですにゃん。今日のテストはこれにて終了となりますにゃん。」

 モナさんは笑顔で、疲れ切ってげっそりしている俺達(ログとマークル以外)に告げた。

「それではこれから元のホールに転送しますにゃん。皆さんにはお伝えしていませんでしたが、今晩は各国がこの収集に応じてくれた事に対する感謝を……という事で新人兵の皆さんに懇親会パーティーの用意をしているという事ですにゃん。参加は自由で、場所は各育成所ホールですにゃん。どこのパーティーに参加しても大丈夫で、服装は戦闘服で結構だそうですにゃん。でも今着ている服だけはちゃんと着替えてから行くことをお勧めしますにゃん。」

 と、天使の様な笑顔で俺達に言った。

 その瞬間、周りの新人兵達はウォッシャー!!と元気に立ち上がる。

 皆んな……本当に元気だな。


 それから……と言ってモナさんは何やらメモを取り出してふむふむと内容を確認しだした。

「明日の正午昼から正式に軍に入隊する事が許可される入隊式と、誓いの儀式があるので、準備をお願いしますにゃん。パーティー中にも今回のテストの結果が出ると思うので、楽しみにしててにゃん。」


 そう言えば1日入隊式が伸びてたんだっけ?

 でもまぁ、今となればなんてない事だ。


「それでは皆んな、お疲れ様ですにゃ〜ん。」

 そう言ってモナさんがいつのまにか手にしていた短い杖を振った瞬間またピカッと光に包まれて俺たちは元のホールに帰ってきていた。


「や、やっと終わったぁ〜〜。」

 俺とマークルは嗅ぎなれつつあるホールの匂いに安心して、ヘナヘナと床に座り込む。

「お疲れさん。だが、へたるにはまだ少し早いぞ。部屋でシャワーを浴びてから、ゆっくり休むといい。」

 特に疲れた様子もないルイスとログが羨ましい。

 ……本当にコイツら人間か?


「ところで、ログやチエル、マークル達はパーティーには参加するつもりなのか?良かったら一緒にどうだ?」

 ルイスが3人の顔を見回した。


 そう言えばそんな事言ってたっけ?

「ごめん。俺はもう今日動ける気がしないよ。」

 行きたいのは山々だけど、正直部屋で寝てしまうと朝まで起きれない気がした。


「なら、僕も遠慮しとく。別に興味ないし。」

 なら、ってなんだよ!!


「「えーー!2人とも行かないんですか(行かないデシ)!?」」

 横で座り込んでいたマークルがビックリして俺達に詰め寄った。

「もったいないですよ!こんなパーティーきっとこの先呼ばれることなんてないですよ?!……いや、ログさんとルイスさんは貴族だからあるのか。で、でも行きましょうよ!チエル君も!少しだけでもいいですから。」

「そうデシ!美味しいものがきっといっぱい出てくるデシ!」

 ね?と言って目を輝かせるマークルとダチュラに気圧された俺はついつい、また首を縦に振ってしまった。

 それにしても、マークル以外と元気なんだな……。

「じゃあ、ログさんも勿論来ますよね?」

 マークルがログの方を向く。

「勿論、そうするつもりだよ。」

 ログがニコリとしながら答えた。

 本当にコイツは……あれか?村で近所にいた子供によく懐いて、ずっと後ろをついて回ってた犬か?あれなのか?


「では、1度部屋に戻って9時頃にホール入り口集合でどうだ?」

 ルイスが提案する。

「了解です!」

 俺たちもそれに賛成し、1度解散となった。



 フラフラの足でなんとか部屋についた俺は、なだれ込む様に椅子に座り込んだ。

 それに比べて全く疲れた様子の無いログは昨日の様にアイスティーを入れて俺の前に置いた。

「それ飲んだらチエルが、先にシャワー使いなよ。クタクタなんでしょ?」

 ログも椅子に腰掛けてアイスティーを飲みながら言った。

 俺もお礼を言って出されたコップに口をつける。

 疲れた体に、冷たいアイスティーの甘さと香りが染みていく。

「美味しい……。嬉しいけど、いいの?ログも一応テストには参加してたし。」

「別に僕は疲れてないから後でも大丈夫だよ。先にサラッと浴びて、パーティーまで少しでも休むと良いよ。それとも一緒に入る?」

 そう言ってログがニコッと笑った。

 俺は慌ててアイスティーを一気飲みしてから、立ち上がる。

「先に入ってくる!本当、お前は来るなよ!」

 アイツが言うと、冗談に聞こえない。

 そのまま、着替えを持って俺はシャワー室に駆け込んだ。


「俺様も、この汚れたボディをミストで洗ってくるとするデシ。せっかくの美しさが台無しデシ。」

 机から降りたダチュラも俺を追ってモソモソとシャワー室に入っていく。


「遠慮しなくても良いのに。ごゆっくり。」

 そう言って、ログはアイスティーを飲みながら、駆け込んで行った俺達に向かってゆらゆらと手を振っていた。



 ーーーーー

 欠伸をしながらシャワ室から出てきたチエルは、髪も乾かさずにそのままなだれ込む様にベットに入りこんだ。

 そのままだと風邪をひくよーーと顔を覗き込むと、すでにチエルはスースーと寝息を立てていた。

「フフッ。お疲れ様。」

 起こしても悪いので、今日はそのままでいいかと、自分も着替えの準備をしてシャワールームに向かう。


 シャワー室の扉を閉め鍵をかけてから、少し暑さでベタついた服を脱いでいく。

 脱ぎ終えた服は、他の洗濯物と一緒にカゴに入れる。

 さっきチエルが入っていたこともあり、昨日は少し肌寒かったシャワー室も、今日はどちらかというとムワッと暖かい。


 頭からシャワーを浴びると、そこまで疲れてなかったとは言え、土埃と一緒に残っていた疲れも落ちて行く気がして気持ちが良い。

 自分の頭よりもだいぶ高い位置につけられたシャワーヘッドから出てくるお湯に顔を向け目を閉じる。



 噴水のある、青く小さい花が沢山植えられた夜の広場。

 彼女の好きなその花が満開に咲き誇るその傍で、彼女は僕を強く抱きしめた。

『ーー大好き。私がずっと一緒にいてあげる。』

 そう言って悲しげに微笑んだ彼女が、僕にに向かって手を突き出した。


 ハッーーっと目を開ける。

 テストではほとんど息の乱れることのなかった肩が、ハッハッっと短く切れる呼吸に合わせて上下する。


 シャワー室の壁に取り付けられた鏡に映った自分を見つめる。

 そして、腹部から背中にかけて何かに貫かれた様に残る大きな傷後をそっと押さえた。

 ーーーーーー



「チエル。そろそろ時間だよ。」

 ぼんやりとする意識の向こうで、声が聞こえる。

 まだまだ眠っていたいと、薄く開いた瞼がまたすぐに閉じていく。

 すると、さっと身体を覆っていた暖かさがなくなって、大きく身体を揺さぶられる。

「起きなよ、チエル。ルイスはああ見えて時間にうるさいやつなんだよ。」

「ゔぅーん。眠たい……。」

 ログに無理やり上体を起こされて、だんだん意識がはっきりしてくる。

「今、何時?」

「約束の15分前だよ。せっかくのパーティーなんだから寝癖ぐらいは直しておいたら?僕はそのままでも良いと思うけど、後からチエルに、なんで言ってくれなかったんだ!って文句言われると怖いからね。」


 そう言って手渡してきた手鏡を見ると、これは確かに酷い髪型だ。

 だるさが残る体に鞭打ってなんとか洗面台

 に行き、顔を洗うと意外に目が覚めてくる。心なしか、身体もさっきより軽い。

 ささっと水で髪を濡らし寝癖を修正する。


 良し、なんとかこれならいけそう。


 部屋に戻るとすでに用意を済ませたログがまだ寝ているダチュラを肩に乗せて待っていた。

「起こしてくれてありがと。これならなんとか大丈夫かな?」

「チエルなら、どんなでも大丈夫だけどね。ふふ、それじゃ、僕が会場までエスコートさせて貰いますよ。」

 そして、ログは女性なら一目で落とされる様な笑顔を向けて右手を差し出してきた。


「バーカ。」

 俺はそう言って、差し出されたその手を軽く手で払う。

 そして廊下につながるドアを勢いよく開けた。

「皆んな待ってるし、行くか!」

「僕はチエルの準備が終わるのをずっと待ってたんだけどね。」

「そ、それはごめんなさい。」

 そして2人で笑い合う。

「それじゃ、行こうか。」

「そうだな。」


 そして俺たちはマークル達の待つパーティーに向かった。

なんとか体調が戻ってきました。

声だけが枯れて出ない。泣

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