上位者達の会議
白の世界(白界)ーーにそびえ立つ超巨大樹、マザーホワイト。幹、枝、葉全てが白く輝く大樹は、この世界の創世神の住処と言われ、この世界のそのものであり、全ての母。
その大樹の幹には、向こう側まで貫通した大穴が空いており、その中に神都ーーホワイトホールーーはある。
マザーホワイトの幹をくり抜いて作られた広間に、白地に銀色の装飾が美しく輝く衣装を見に纏った神官たちが集まっていた。
「急がねばもう結界が持ちませんぞ!」
「各村々にも被害が出てきております。」
「守護兵や派遣隊は何をしているのだ!」
「そんな事は分かっておる‼︎神都からの派遣隊だけでは圧倒的に数が足りておらんのだ。」
広間に吹き抜ける心地よい風とは対照的に、神官たちは声をまくしたてる。
「少し落ち着いたらどうだ。」
銀の装飾とは別に左胸に金と緑の弓をかたどったエンブレムと、シルバーホワイトの髪が動きに合わせてキラリと輝く。
男は肘をつき、顔の前で指を絡めて神官たちを見た。
「どう言おうが、現状今までの様に各地にいる守護兵と神都からの派遣兵だけでは魔族の侵略に対応できてはいない。このままでは、こちらが侵食されていくのも時間の問題なのは確かだ。」
神官たちが口ごもる中、肩までかかるベビーピンクの髪と軽い雰囲気には似合わない大きめの丸メガネをした青年が口を開いた。
「では、我らが世界の守護神の一角であられるラーマイル隊長殿はこれからをどうお考えでしょうか?まさか、何も案なんてない……なーんて事はないでしょ?」
少し小馬鹿にした様な言い方にラーマイルの後ろに控えていた男が前に出ようとするが、ラーマイルがそれを制する。
「兵の数が足りない分は各地から集めてくるしかないな……。」
「ですが、集めた兵だけではその場の対処で精一杯では?こちらが押されていくのは目に見えていますよ?」
「あぁ。こちらとしては根源を叩くしかない。我々ホーリーナイトの守護神達であればあちら側の魔神達を相手にすることができよう。しかし、その間にこちらを残った雑魚で攻めてくる可能もある。隙を突かれては意味がないからな。」
「では、私からも提案があります。」
スカイブルーの艶やかな髪が綺麗に編み込まれた美しい髪をした女性がコーヒーに口をつけながら言った。
「最近ではホーリーナイト以外にも各地で見込みのある者もでてきています。そのもの達にも少数でチームを組ませ魔神討伐と神器回収に向かわせてはどうでしょう?」
「アクアル殿。ホーリーナイト以外でそんな事が可能なのか?」
「可能……とは断言できないでしょう。ですが、討伐と神器の回収をホーリーナイトだけで行うのは時間がかかりすぎます。神器の回収、情報収集を優先し、その過程でレベルアップした物が一人でも魔神を倒せたのならそれだけこちらも動きやすくなりましょう。」
「そんなに上手く事が運ぶじゃろうか?死にに行けと言っている様なもの……」
「あくまで保険をかける程度のものです。こちらとしても、死なせるつもりで行かせる訳ではありません。まぁ、いざとなれば少数であれば必要な犠牲として処理できますしね。」
神官達は皆黙りこみ、考える。
すると、テーブルの中央に座る老人が口を開いた。
「我々には時間がない……。このもの達の言う通りに、兵を集めるのじゃ。」
その場にいる全員立ち上がり、頭を下げる。
「「「ハハッッ!!!!」」」
自分以外誰も居なくなった広間でラーマイルはため息をつく。
「絶対に負けるわけにはいかない。我らに創世神の加護を……。」
エンブレムをギュッと握りしめ、はるか彼方にそびえ立つマザーホワイトと対をなす漆黒の巨大樹を見据えた。