青の瞳
キーワードにも記載していますが、ここから先の話ではBLを匂わせる内容が出てきます。
気分を害される方、苦手な方はお引き返しを……。
それでも読んでやるぜ!という方はお付き合いお願いいたします。
「オイ!テメェら何もたもたしてんだよ。女の1人も連れてこれねぇのか。」
家の陰からよーく知っている顔が3人出てきた。
う、うわぁ。終わったな、俺。
「す、すみません兄貴!でも、兄貴達が探してたっぽい野郎を見つけまして。」
「探してた野郎ぉ〜?」
…………。
「どうも、お久しぶりです。」
俺の顔を見て、この前1番最初にぶっ飛ばされたリーダーらしき男が前に出てきた。
「テンメェー、お久しぶりです。じゃねえんだよ!あの時の借りはきっちり返させてもらうからな!ぶっ殺してやる。」
ちらっと見ると、女の子は鏡を見て髪の乱れをとかしながら少し離れた場所にある階段に座り、タバコを吸い始めた。
良かった……と思う反面、だいぶ切ない。
はぁ……とため息をついて顔を上げると、この前のように奴らが俺囲んでいる。
残念な事に俺を囲んでいる人数が2人も増えて、全員手にナイフも握っている。
こんな弱い俺に対してナイフなんて……本当に勘弁してほしい。
ーーと言うか、リアルにヤバイ。
謝って許してくれそうにないし、金も持ってない。逃げ切れる自信もないし、出来れば殴られるのもごめんだ。
もちろん、勝つなんて事は天地がひっくり返ってもない……だろう。
勝機があるとすれば、さっきの女の子が助けを呼んで戻ってきてくれる事ぐらいだけど……。
よ、良し。
言い訳して謝って無理だったら、なんとかして逃げよう。すぐ横に人通りの多い道があったはず……そこまで逃げ切れたらなんとかなるだろ。
俺は腹をくくった。
「ちょ、ちょっと待って。な、何か勘違いしてませんか!」
両手を挙げて俺は必死に言い訳を考える。
「はぁ?この俺達が勘違いだと?」
「そ、そうだよ。この前の酔っ払いのおっさんは俺も知らない奴なんだよ。金取ってたのもあのおっさんだし、俺関係ないと思うんですけど。」
別に嘘は言ってない。
すると、リーダーの横にいた男がいった。
「リーダー、確かにコイツ町にきたばっかりだったし、あの親父とあんまり関係ない……かも。」
おお!!やるじゃないか、チンピラB!
「そう言われると、八つ当たりな気もするか……。」
よっしゃ。これは俺、助かったか?
リーダーは少し考えてから、
「おい、にいちゃん。今回は特別に許してやる。」
きたあぁぁぁ!!俺ツイてるーー!
「でよ、兄ちゃんはあの金どうなったか知ってるか?あの親父の居場所とかよ。」
「それは、俺もわ、分からないなぁ……。」
「それなら俺様が知ってるデシ!!」
え?
「場所までは知らないデシけど、よくあの酒場にはいるみたいデシ。」
ダ、ダチュラさん?
「お金はもう無いデシ!おっさんとチエルと俺様がご飯に使ったデシ!だから、諦めるデシ!」
あ…………終わった。
「て、テメェーー!お前ら殺っちまえ!」
な、なんでこうなるんだ?!
エッヘンって、胸張って言ってやった感出してんじゃねえよ!このクソ虫!
慌てて構えるけど、遅すぎた。
背後から蹴られて前にぶっ飛ばされる。
ダチュラは向こうの壁まで飛んで行った。
倒れ込んだ所を無理やり起こされて、背中から手を回して固定される。
リーダーが青筋を浮かべながら、ナイフを取り出して俺の顔目掛けて振り上げた。
「死にやがれぇぇ!」
し、死んだな……俺。
目をギュッと瞑る。
ーーあ、あれ?
来るはずの痛みがこない。
な、なんでだ?
おそるおそる目を開けてみる。
「……え?」
目の前に、神都でたまに見る白い軍服に身を包んだ男が立っている。
整った顔立ちにサラサラとしたグレイの髪、そして透き通る様なブルーの瞳。
まるで昔、ミザリーに見せてもらった絵本で出てきた王子様の様だ。
見ると、俺に向かって突き刺したナイフを相手の拳ごと掴んで止めた様だ。
「お前達、何してるんだ?」
軍服が口を開いた。
ちょっとムカつく事に声までカッコいい。
「この俺のナイフを止めただと?」
リーダーは止められたナイフを見て唖然としている。
そりゃ、そうだろうな……。
「リ、リーダー。これはヤバイですって!コイツ軍の者ですよ。しかもこの服と勲章……リーフナイトですよ!」
それを聞いて俺を拘束していた男が飛び退いた。
リーフナイト?なんじゃそりゃ?
「リーダー、ここは逃げましょ!」
「うるせえ!コイツ1人で何ができるってんだ。片手も塞いでんだ!今のうちに4人で一斉にかかりやがれ!」
そう言われて引こうとしていたチンピラもナイフを取り出し始めた。
それを見て軍服はやれやれといった感じで、はぁ…とため息をついた。
「お前達、収集に応じて来た連中だろう?今なら見逃してやるから、その体力を今後の任務に取っておくんだな。」
「うるせぇ!殺っちまえ!」
4人がナイフを持って一斉に向かってくる。
「ヒッ……。」
俺は情けない事に……恐怖で腰を抜かした。
キーン。
「いってぇぇぇぇ。」
「ぐぁっ……。」
え?全く何が起こったのか分からない。
皆んな手首を抑えてうずくまっている。
見ると道を挟んで立っていた家の壁にそれぞれ2本ずつナイフが突き刺さっていた。
「な、何が起こったんだ。おい!」
リーダーは周りの様子に焦って、空いている方の手で軍服に殴りかかろうとした、が。
「い、いでででででっ。」
掴まれた方の手を抑えて目に涙を浮かべている。
「このまま手を握り潰されたいか?」
リーダーがヒッと小さく喉を鳴らした。
「まぁ、これから部下になるかもしれない奴の手を潰したら僕の仕事が増えるだけだからな……。」
軍服はそう言って手を離した。
「もぅ行け。上司の命令は最初からしっかりと聞くんだな。」
その言葉を聞いてチンピラ5人組はあっという間に走り去って行った。
地面にヘタレ混んだまま呆気に取られる俺。
すると、俺に背を向けていた軍服が俺の方に向き直った。
男の俺が言うのもなんだけど、カッコいい。
高い身長、圧倒的な強さに、青い瞳のイケメン。
お〜ぅ、創世神はコイツに二物も三物も与えるのか……。俺にも少し分けて欲しい。
きっと俺が女の子だったら、ズキューンと恋に落ちてるんだろうな。
まぁ、男だからありえないけど。
軍服が俺を起こそうと手を伸ばして来たので、お言葉に甘えてその手をつかもうとした時……。
「こ、怖かったですぅ〜。本当にありがとうございましたぁ〜。」
え゛?
最初に絡まれていた女の子が急に飛び出して来て軍服の胸に飛び込んできた。
軍服は無表情のまま固まっている。
「私……私、怖くて動けなくってぇ〜。グズッ。」
居たんだ。てか、さっきタバコ吸って……。
女の子は目に涙を浮かべて震えている。
さっきほどじゃないけど、呆気に取られる俺。
まぁ、無事だったなら良いんだけど。
すると、
「少し様子を見ていたんだが、先に助けに入ったのは彼じゃないかい?」
まさかの軍服が、俺のフォローを入れて来た。アイツ、いい奴じゃん!
「あはは、いやいや、俺なんて何も……。」
「そんな事よりもぉ〜、これからお時間ありますか?お礼に2人きりでお茶なんてどうですかぁ〜?」
せ、切ねぇぇーー俺。
これがイケメンとの差。
これが現実……。
まぁ、実際アイツら追い払ったのは軍服だし、俺はそんなに気にはしてないんだけどね。
すると軍服が女の子と距離をとって言った。
「礼には及ばない。それに、僕は怪我をしているかもしれない彼を診療所に連れて行くよ。」
そう言って、軍服は手と取って俺を立たせた。
「そ、そんな。その子の怪我大した事ないと思います。それなら、私だって怪我を……!」
そう言って女の子は軍服の腕に縋り付く。
大した事ないって、確かにそんなに怪我してないけど、お、女って激しいな……。
「いい加減にしてくれないかい?君は怪我をしていないし、迷惑だと言っているんだ。」
そして軍服は一瞬で空気が凍るような冷たい目で女の子を見た。
その目に怯えて女の子が一歩下がる。
「では、失礼するよ。」
軍服は俺の手首をガッと掴んでスタスタと歩きはじめた。
どんどんと歩いていく軍服に引っ張られながらも、道の隅で伸びていたダチュラを拾い上げてリュックに詰める。
そこそこ歩いた所で急に軍服が止まったので、勢いで俺は背中に鼻をぶつけてまた尻もちをついた。
「い、いててて。」
「ご、ごめん、ごめん。」
軍服が慌てて手を差し出して来た。
「君の連れてたイモ虫君を忘れたと思って、ついつい。」
「大丈夫です。それに、ダチュラは俺が途中で拾いましたから。」
リュックの中でまだ伸びてるダチュラを指差してから、出された手を掴んで俺は立ち上がる。
「助けてくれてありがとうございました。俺はチエルです。なんか……すげぇ強いのに以外と抜けてるんですね。」
見ると軍服は目を開いて固まったまま俺を見ている。
げげっ!!
もしかして失礼な事言って怒った?
「そんなつもりじゃ、す、すみませ……ッ」
ーーグイッ。
え?
えええええぇぇぇぇぇ?!
な、なんか急に俺、抱きしめられてるんですけど……。
あ、でもいい匂い〜。って違ーーう!!
取り敢えず押してみるけど、は、離れないな……。
流石に大通りから外れてるとは言え、男2人でこれはこっぱずかしい。
「あ、あの〜、ちょ、ちょっと……ギャァァァァーー!!」
あろうことか、軍服はそのまま俺のお尻を揉んできた。
あまりの衝撃に俺は咄嗟に軍服の顔面に平手打ちし距離をとった。
「コンノォー変態がぁぁ!!」
軍服は殴られたほっぺたを抑えながら、触ってた手を眺めている。
はぁ、はぁ……こ、コイツ……変態だったんだ。
「あっ、ちょっと……」
軍服が再びこっちに手を伸ばしてくるが、俺はその手を払いのける。
「俺に触るなっ。はぁ……助けてくれてありがとうございました!失礼しますっ!」
そして、全力で走って逃げた。




