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クロスワールド  作者: えりぞう
第一章 旅の始まり編
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買い物

 13話 買い物


 ……あれ、ここどこだっけ?


 寝ていた身体を起こすと頭が痛い。

 少し吐き気もする。


 あ、ここハイダウェイの二階の部屋か。

 そういえば昨日、結局マスターに無理やり酒を注がれて、調子に乗ってバカ飲みしたんだっけ?

 死ぬ前に酒の味ぐらい知っとけって、あの親父も相当やばい奴だよな。てか、死ぬ前にって普通言うか?

 それで飲んだ俺も俺だけど。

 それにしても、み、水が、欲しい。


 部屋を見渡してみても、自分の持ってきたリュックぐらいしか見当たらない。


 あれ?そういえば、ーーダチュラは?


 俺はまだ酔いが抜けきっていない身体に鞭打って二階の廊下を走り抜けた。


 やばい、記憶ない間に誰かに連れてかれたんじゃーー。


 慌てて階段を駆け下りる。

「ま、マスター!ダチュラ知らな……い?」


「ムシャムシャムシャムシャ……う、うまいデシー!!今まで食べていたカスカス、モッサリの葉っぱとは次元が違うデシ!潤い、香り、色、咬み応え、全てにおいてパーフェクトデシ!おかわり!」

「ガハハハハ!そんなに喜んでもらるなんてな!よーし、どんどん食いやがれ!」

「いよっ!マスターやる男デシ!」


「……。」

 いた。普通にいた。


「おー、チエル!なんか言ったか?随分とぐっすり寝てたな。もう昼前だぜ。」

「何にも、言ってません。」

「チエルは朝が苦手なんデシ!だから彼女もできないんデシ。ムシャムシャムシャムシャ、ムシャムシャムシャムシャ。」


 あのクソ虫、しばく。言わせておけば。

 心配して損したよ、全く。

「とりあえず、顔洗って服着替えてきな!飯作っといてやるから!」

「ありがとう……ございます。とりあえず、水貰っていい?」



「ふう〜。食った食った。」

 あのマスター、見た目と違って繊細な料理作るんだよな。

 店の雰囲気もそうだけど、内装とかこってるし、飾ってる物とか凄く綺麗にしてある。

「あ〜。もう食べられないデシ。このまま蛹になれたら本望デシ。」

「オマエ食べすぎなんだよ。」


 ダチュラは団子みたいになってしまった身体でノソノソと背中に乗ってきた。

 いつもより若干重たい。


「腹ごしらえも終わったし、そろそろ神都に向かうか!」

 机の下に置いていたリュックにダチュラを付け直して立ち上がる。


「初めて行くんなら早めに着いておいた方が良いだろう。転移魔法陣は城にあるから大通りに出りゃ迷うことはないはずだぜ。門を入ったら右側の建物の中にあるから着いたら使者に貰ったバッチを見せな!そうすりゃすぐに神都に送ってくれるよ。」

「ほんと、いろいろありがとうございました。」

「良いってことよ。俺にはこれぐらいしか、やってやれる事がねぇからな。またいつでもこい。オマエなら安くしといてやるよ。」

「ありがとう。無事に生きてたらまた来るよ。」

「おぅ!頑張れよ。」


 そうして俺たちは神都に向けて店を後にした。




 チエル達が店を出た後ーー。


「ふぁぁぁ〜。よく寝たぜ。」

「オマエは本当寝すぎだよ。」

「頭痛え。ハンス水くれ。」

 ハンスはすでに用意していた水をカウンターの上に置いた。

 彼にとっては朝起きて顔を洗うくらい慣れたやり取りだ。

 それだけこの2人が同じ時間を共にしてきたという事でもある。

「ほらよ。日頃疲れてるのは分かるが、こんなんじゃオマエ身体こわすぞ。」

 男もいつも通りの席に座り、受け取った冷たい水を一気飲みする。

 その時の頭にくるキーンとした痛みが嫌いで、いつも氷を入れるなと注意するのに、ハンスはこれだけは直らないのだ。

「冷てぇ。俺の身体なんだから好きにさせろ。……ところで、昨日のあのガキもう出たのか?」

「あぁ、今さっき出て行ったよ。」

「そうか。」

「お前が気にかけるなんて珍しいじゃねえか!いつも自分の事しか頭にねぇ奴がよ。ガハハハハ!」

「いや、な。アイツ、多分やべぇなと思ってよ。」

「確かに、あんな弱ぇのにかり出されちまって。残酷な世の中だよ。せめて後衛の地の任務につけると良いんだがな。」

 ハンスはタバコをふかせながら、曇った窓の外を眺めた。

「いや、そうじゃねえよ。」

「ん?どう言う事だよ。」

「あの年で今まで畑仕事もやっててあのレベルはありえねぇよ。ましてやトロールから生き残ってるらしいじゃねぇか。5レベがトロールから一発もらったら……100%即死だよ。」

「いゃ、でもなぁ。当たりどころが良かったんじゃねえのか?」

「分かんねぇ。でも俺の勘がアイツはヤバイって言ってる気がするんだよ。結局弱いだけの奴だったにしろ、アイツは異質だよ。まぁ、俺には関係ねぇんだけどな。」

「普通にいい子だったがなぁ?そう言うオマエも充分異質なんだがな!……そう言えばオマエは神都に向かわなくても良いのか?絶対呼ばれるだろ?」

「馬鹿野郎。んなもん行くかよ。行って、俺が死んじまったら世の中困るだろ?」

「オマエ……あんな若い子が行くってのに。」

「馬鹿正直に応じる奴らが悪いんだよ。そうならないために、神は人間に高い頭脳をお与えになったんだよ。」

「どう言う事だよ。」

「要は、頭使えって事だよ。俺の代わりに行く奴を用意した。」

「オマエレベルの奴をか?!」

「まぁ、な。」

「そりゃすげぇな!ガハハハハハハ!」

「だろ?よーし、気分も乗ってきたしもう一杯行くか!」




 店を出た俺とダチュラは、教えてもらった通り、屋台の出ている大通りを通って城を目指していた。

 昨日と変わらず沢山の人が行き交っている。

「昨日結構見て回ったけど、裏通りにある店とかもいれたら1日じゃ回りきれないよな。」

「チエル、せっかくだからなんか買って行こうデシ。昨日の赤くて甘いやつが食べたいデシ。」

「オマエ、さっき食ったとこだろ?」

「そこのお兄さん。」


 ーーん?

「ちょっと、芋虫連れたお兄さん。」

 見ると屋台と屋台の間に埋もれるように小さく店を開いているお婆さんが俺に向かって手招きしていた。

 それにしても芋虫連れたお兄さんって、いざ聞いてみるとなんか響きが凄く嫌だな……。

「な、何かな?」

「ほっほっほ。お兄さんにピッタリなアイテムがあるんじゃ。ちょっと見てみんかね?」

 近づいてチラッと見てみると、綺麗な宝石の様な物がはまったアクセサリーが数点並んでいる。

 俺はこんなのつけないし、ぶっちゃけ買えるほどの金なんて持ってない。

「ごめん、俺お金ほとんど持ってないんだ。プレゼントする相手もいないし。」

 自分で言っておいて少し虚しくなる。

「まぁまぁ、これは魔法が付与されたアクセサリーなんじゃがな、お兄さんにピッタリな物があるんじゃよ。」

「は、はぁ。」

 悲しい事にこんな時、さらっと冷たく離れる事ができないのが俺なのだ。

「実はの、わしは人のオーラが見えるんじゃ。そのオーラの違いで、その人に必要なアイテムが分かるんじゃよ。」


 ……う、胡散くせぇぇ〜〜。

 これヤバイ店に、てかヤバイ婆さんに引っかかったんじゃ……。

 そんな事を考えてると、それを見透かしたかの様にお婆さんが笑いながら懐から一つのネックレスを出してきた。

 それを掌に乗せられる。

 見てみると、親指大の綺麗な青い雫型の石が一つチェーンに通されていた。

「わぁ、綺麗だ。」

「美味しそうデシ!」

 美味しそうって、オマエな……。


「これはの、“仮初めの涙“というアイテムじゃ。ついてる石はカイヤナイトと言う宝石での、病にかかった人々を見て悲しんだ人魚が流した涙が宝石になって出来たと言われてる物なのじゃ。この石には回復の魔法が付与されとるんじゃよ。」

 か、仮初めのって、すごい安っぽい涙だな。

 できた由来はすごく良い感じなのに、アイテムになった途端、嘘泣きみたいな感じになってるし。

 でも回復魔法か……。

 確かに、あって損はしなさそうだけど。

「で、でも俺、お金持ってなくて。」

「安心せい。これはの、ワシが別のアイテムを作るときにたまたま“運良く“できてしまったものじゃ。今ならもう1つ同じ様にして出来てしまった物も付けて350リーフで売ってやろう!どうじゃ?この値段で魔法アイテムは普通手に入らんぞ。」


 運良くって、絶対失敗したやつじゃん。

 でも確かに今までチラッと覗いた店でも回復アイテムとなれば2000リーフはしてた。

 うーん、2個付いてリゴンアメ1個分かぁ〜。

 でも怪しい気もするしなぁ〜。

「効果はちゃんと発動するから安心しなさい。まぁ、でもお兄さんがいらないんじゃ別の人に売るまでだけどね。お兄さんのオーラ見て声掛けてみたんだけど、要らないんじゃしょうがないねぇ〜。後で泣いても婆さんのせいにしないでおくれよ。」


 ち、ちくしょおぉぉぉぉ!



「はい、まいど。ありがとうね。」

「チエル似合ってるデシ。」

 とりあえず貰ったうちの1つを首から掛けて、もう1つをリュックの中にしまう。


「ちなみに……これの回復効果は一時的な身体欠損部位の再生だよ。」


 ……え?

「そ、それってどういう……。」

「例えば、腕なんかを切り落とされた場合、それを使えば一時的に腕が復活するってわけさ。その時、切り落とされた腕が無くなってても使用時間中は復活するよ。その間に本格的な魔法や治療をしてもらえれば運が良ければ治るかもね。ちなみに効果が切れた時は、使用した時の状態に戻るからね。」


 く、く、くそったれアイテムじゃねぇか!

 てか、このババァ……戻るからね、じゃねぇよ!

 治るかもねって、適当だなオイ!

 一時的に戻ってどうすんだよ、手遅れだよ。

 あ、そうか!仮初めのってそういう事?

 ふざけやがって、オーラとか言ってたけど、じゃあ近いうち俺は手か脚かどっか吹っ飛ぶってことか?


 婆さんはこっちをみてニヤニヤ笑っている。


 はぁ、……やられた。

 もう今更返すこともできないし、俺が先に効果を聞かなかったのも悪い。

 まだ値段が安かった事だけでも良しとしよう。

 ガックリうなだれていると婆さんが言ってきた。


「お兄さん、これから気をつけるんだよ。」


 俺はトボトボと足取り重たく、城に向かって歩き始めた。


そろそろ神都に行きたいです。汗


リーフ=円ぐらいの感覚で書いてます。

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