【第七話】欲望
来たるべく時に備えホセは自傷行為で医務室へ行けるか試みた。
案の定すんなり事は流れた。
二度も看守による暴行があったこともより、他の看守は疑う事なくホセを医務室へと運んだ。
ホセをベッドに移したと同時に、周囲が騒がしくなったと思ったら
ストレッチャーに乗った囚人が運ばれてきた。
男は痙攣をしていおり深刻な様子だった。
医者も看守も痙攣している囚人にかかりっきりになったので、ホセの監視は手薄となった。
次の瞬間、女性の悲鳴が聞こえた。
囚人はハサミを手に医者を人質に取り看守に部屋から出て行く様に訴えた。
痙攣は演技でまんまと引っかかったと言う事である。
人質の安全と囚人を落ち着かせる為に看守たちは部屋を退室した。
囚人の名は寺田畜男、連続婦女暴行殺人で死刑を求刑されている。
色黒で小太りのこの男はどうせ死刑なら、罪を重ねても同じだと、
医務室勤務の中島をターゲットにしていた。
寺田はメガネを触りながら女医の中島に命令をした、部屋の鍵をかけるようにと。
「死刑は確定しているんだ、もうどうでもいいからたっぷり楽しませてもらうぜ。」
品のない笑い声が部屋中に響いた。
ベッドに押さえつけた女の服を寺田はハサミで切りさいた。
「やめて!」と叫ぶ女の声に寺田はさらに興奮をしていた。
女は泣きながら抵抗をしていたが、寺田の暴力によって次第に大人しくなっていた。
「オイ!俺も混ぜてくれないか。」
その声に寺田は驚きを隠せなかった。
「うぁ!だ、誰だ。」再び中島の首にハサミの刃を押し付けた。「動くとこの女の命はないぞ!」
囚人服とその顔を観察してこの外人・・・、男がニノーの元社長だと気づいた。
「ビックリしましたよ!こんな所にあのホセさんがいるなんて。」
寺田は相手が大物だとわかると本能的に下手にでた。
「大会社の社長さんも混ぜて欲しいって?あんたも好きですね。こっちは服も脱いで準備万端ですよ。
あっしの後に思う存分楽しんでくださいな。」そう言うとまじまじと女の顔を覗き込んだ
ホセはこの男の身勝手な欲望のせいで、警備体制が強化される事に怒りを覚えた。
油断させて寺田の背後に回りこみ、脱ぎ捨てられた囚人服で色黒で小太りの男の首を絞めこんだ。
「な、何するんだ。お、同じ囚人だろうが。先にヤりたかったのなら、変わるから離せよ。」肩をすくめながら寺田は力の限り抵抗した。
寺田は後ろに体重をかけてホセごと倒れ込んだ。
しかし締め付ける力が弱まる事はなかった。
二人の囚人がもみ合っている隙に女が扉を開けると、突入した看守に強姦魔は取り押さえられた。
この事件があった事もあり、医務室のセキュリティーが強化され容易に診療が受けられなくなった。
翌日、独居房へ看守付き添いの元で中島が現れた。
「浅田所長に言って特別に入れさせてもらったわ。
助けてくれた事に、お礼を言っておくわ。」鉄格子越しに女が語りかけた。
ホセもベッドから立ち上がり鉄格子の前まで歩いた。
「それと、替えの包帯を置いて行くわ。独居房の人は毎日体が洗えるのよね?
その時にでも新しい包帯に変えてちょうだい。」そう言って受け取り口のトレイの上に包帯を置いた。
「もういいか?」看守の声に女は頷き独居房を出ていった。




