【第四話】オプション
男はここからの脱出方法を模索していた。
ただの経営者ならその様なことは考えはしないし、その能力もないだろうがホセは違った。
彼は諜報員の両親と共に某国の特別な訓練を受けていたのだ。
コンサルタント時代に彼自身がエージェントとして某国の利益になる活動をしていたのだ。
ホセの生まれた国では政権を巡って国内紛争が長きにわたって続いていた。
幼い頃から諜報機関として養成されており、多数の言語を操り諜報工作に関わる知識と技術を身につけていた。
現在に至ってはその貢献度から組織の上層部に位置していた。
まさか世界的企業の代表だった男が脱走するとは誰も思わないだろう、とホセは考えた。
日本国内の諜報機関を通じて国外逃亡すれば、もう手出しはできないとも。
朝7時、看守は受け取り口に朝食を置くと出ていった。
初日は判決に対する怒りのあまり食事を取らなかったが、空腹には勝てず朝食に手を伸ばしていた。
トレイの上にはパンが二つと紙パックの牛乳そしてチーズが1ピース。
「もっと美味いものを出せないのか!コース料理と赤ワインはないのか、金ならいくらでも払うぞ!」クレームは響き渡る。
フロアーに看守はいない為、男の声が響き渡る。
当然カメラの先では不審な動きがないか全て監視をしている。
少ししてスピーカーからホセに返答があった。
「有料となるが食事の内容を変更することは可能だ。あらかじめ言っておくがワインはでないぞ。」
声の主は伊藤のようだ。
監獄内も金次第でいい生活を送ることができるのであった。
「後ほど書類を届けるので必要欄を記入してもらおう。」
昼食を運んできた看守が紙とペンを渡した。
そこには記入する項目が英語でも記されており、
宗教宗派欄、食べることの出来ない食材欄の他に1日の食事費用1万円とも記載されていた。
ホセは必要な項目をすべて記入した。
この男からすれば小銭程度の支払いにしか感じなかった。
近日中には手続きを終えて有料の食事へと移行する様だ。
その日の消灯後ベッドから出て扉を調べ始めた。
鍵穴、ドアノブ、次に蝶番を調べるようとしたところに突然
鉄の檻5メートル先にある電子制御された扉が開き看守3名が現れた。
そのうちの一人はあの小松であった。




