【第二話】東京プリズン
ここ東京プリズンではまず入所にあたり身体検査を受ける為、医務室へと連行された。
その際に身につけていたスーツや所持品は没収となった。
囚人服に着替えた後、入所に関するさまざまな書類にサインをさせられた。
近年外国人犯罪者が飛躍的に増加している為、各国の言語に訳された書類が準備されていた。
「おい野蛮人ども俺の弁護士を呼べ!」ホセの叫びが東京プリズン内に響き渡る。
社会的地位が確立されている人物という事から、公人用の特別な独居房に収監されていた。
東京プリズンの地下に独居房はあった。
房内はカメラで24時間監視されていている。
鉄の檻と3面に白い壁、そこには陽が差し込む窓など存在しない。
天井高は3メートル、照明はLEDで通常より明るい設定となっていた。
床は緑色に塗装されており、仕上げのワックスのせいで照明が反射していた。
あるのは足が4本のベッドと温水完備の洗面所のみ。
朝は6時起床、10時消灯。
特別枠での収容の為、他の囚人の様に作業や運動の時間などは無い。
7時に朝食が運ばれて、12時17時と続く。
「冗談じゃない、こんな所にこの俺がいるなんてありえない!
俺を陥れた連中は絶対許さないぞ!」
鬼の形相のまま両手で頭を抱え込んだ。
あまりの不自由さに苛立ちが募ったホセは叫びながら鉄の柵を蹴りつけた。
鉄柵の音がなんども響き渡る。
「おい!ずっとここに閉じ込めておくつもりか、外の空気を吸わせろ。」
時々カメラに向かってホセは叫んでいた。
間も無く現れた看守から厳重に注意を受けた。
さまざまな要求を訴えたが看守は聞き入れなかった。
しばらく大人しくしていたホセだが、今度は鉄柵の鍵を開けようと鍵穴を調べ始めた。
再び看守が現れたが先ほどとは別の看守だった。
看守の名は、小松洋一。東京プリズンで15年勤務しており数々のお客様をもてなしてきた。
囚人の躾係として、秩序を作っているのがこの男である。
その実績から東京プリズン内での小松はアンタッチャブルな存在となっていた。
所長からもしっかりともてなす様にと言われていた。
「囚人番号753159。貴様、柵になにやってんだぁ!」
そう言い終わると同時に小松は右の拳を振り抜いた。
口から血が流れ落ちるもホセは看守から目は背ける事はなかった。
指の関節鳴らしながら小松は言う。「おっと目立つ所は、傷つけない様にしないとな。」
独居房内に怒号が響き渡り、更生のための指導が行われた。
「753159。呼ばれたら返事をせんか!!」
ホセは屈辱的な仕打ちに殴り返さんと小松の胸ぐらを掴んだ。
すぐさま看守は腰の警棒を引き抜きホセの腹部へと打ち込んだ。
小松は前に崩れるホセをゆっくりと回り込む様にして歩いた。
背後で立ちとまり、そして耳元でこう囁いた。
「何かあったらこの俺に言え。お前の態度次第で便宜を図ってやる。何が言いたいかわかるよなぁ~。」
ホセは笑いながら答えた。
「お前の様な雑魚が何かできるとは思えんな。」
その言葉に小松は警棒を何度も振り抜いた、そして囚人に罵声を浴びせ独居房を出た。
床に崩れ落ちたホセは自力でベッドまで戻れずそのままをしばらく気を失っていた。