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奇怪便覧の体験談

作者: 立涌丁字路

 今回は体験談風の小説を書いてみました。初めての試みですので心配なところもありますが、ぜひ読んでいただければと思います。

  

まえがき


 こんにちは、今回は皆さんにある書物について起こった出来事についてお伝えしたいと思います。

 その書物とは「奇怪便覧」と言います。名前の通り、なんだか奇妙で、不思議な感じですよね。

 この便覧は和装本のような綴じ方をしています。和装本とは文章などが書かれた和紙を糊や糸で綴じた物です。時代劇などでも出てきます。この便覧は和装本のようで、もちろん紙質も和紙です。表紙には草書体で、縦書きに「便覧」とあります。ページ数は様々、20ページくらいの物もあれば、100ページを超える物もあります。

 怪奇便覧は一冊ではありません。これまで十数冊発見されています。初めの報告例は5年前、とある住宅の納屋から見つかりました。それから、会社の倉庫、遺跡の発掘現場、神社の古木の下などで見つかっています。

 便覧に書かれている文章は書道の綴り書きのような草書体です。専門家が調べてみたところ、書かれた当時のことと思われる日記、料理のレシピ、伝統芸能の演じ方などのようです。まだ、詳しくは分かっていません。

 また、いつ頃書かれたのかもはっきりしません。なぜなら和紙は新品のようであったり、使い古したようだったりするからです。しかし、草書体の文章が便覧には書かれています。専門家の間で見解が分かれ、ある専門家は江戸時代に書かれたと言っていますが、室町時代に書かれたと言う人、あるいはそれよりも前に書かれたと言う人もいます。

 さらにおかしなことに、この便覧は現に存在している時間に冊子間で差があるのです。

 どういうことかと言いますと、ある便覧について発見されたと思ったら、次の日には消えてしまうのです。けれども、発見されてからずっと今まで、こうやって私がお話ししている間も残っているものもあるのです。

 気まぐれな不思議な便覧、そんな便覧を専門家は「奇怪便覧」と読んでいます。私は「怪奇便覧」のほうが言いやすいと思うのですが、そんなのはどうでもいいでしょう。

 その奇怪便覧にまつわるさまざまな出来事・体験談があり、そのほとんどが不思議で奇妙なエピソードです。そのような体験談をこの本では扱っています。


 まえがきが長文となってしまいましたが、これからその怪奇便覧について実際の体験談を皆さんにお教えしようと思います。体験談は体験者が話したことが基になっていますが、一部表現を体験者ご了承の上、清書しています。なお、体験者本人のプライバシーを配慮しまして、名前は掲載せず、性別と年齢のみとなっております。どうぞご了承ください。


(体験談 17歳 女性)


これは私が実際に体験したことです。今から1年くらい前、私は高校の図書委員の用事で図書室に用事があった時に、偶然奥の本棚で便覧を見つけました。気になって手に取ってみたところ、紙質は古く、中は草書体の文章がつらつらと書かれていました。どのようなことを書いてあるのかは分からないのですが、特に怖いとは思いませんでした。元々私の高校は女学校で歴史があります。そのため、このような本があってもおかしくはないなと思いました。だって便覧の後ろには女学校の名前があったからです。どうして図書室にあるのかと疑問に思いましたが、たまたま保管場所を間違えたのだとその時は思いました。


 ところが不思議なことが起こったのです。


 便覧を発見した同じ日に、図書室にあるはずの百科事典のうち一つの巻がなくなっていたのです。委員会の人や顧問の先生で図書室中を探したのですが、どこにもありませんでした。蔵書を紛失するということは、図書委員にとっては重大な責任問題になるので、委員会では騒ぎになりました。なくなった次の日も委員会全員で探したのですが、見つかりませんでした。学校の生徒、教員全員に今回のことで話を聞くと、誰もその百科事典を持ち出していないというのです。いったいどういうことなのかと首をかしげてしまいました。

 

 数日たった日曜日、私は自分の部屋を掃除していたのですが、なんとその時に学校にあるはずの便覧が本棚の隙間に挟まっていたのです。見つけた時は思わず驚いて、声を上げてしまいました。学校から持ち出したわけではないのに、実際自分が持っているのですから、その時はとても怖くなりました。


 担任の先生、そして委員会の先生にその便覧のことについて正直に話したのですが、調べてみたところ、その便覧は高校の蔵書ではなかったのです。便覧についての話は瞬く間に学校中に広まりました。その便覧を見ようと図書室が大混乱する可能性もあったので、奥にしまおうとしました。その時、偶然本を開くと、最初のページになくなった百科事典の手掛かりのようなものが書いてあったのです。それをヒントに探してみると、なんと百科事典が校長室から見つかったのです。校長先生に話を聞くと、百科事典を図書室から持ち出していませんでした。どうして百科事典がなくなったのかは分かりませんが、便覧が教えてくれたのは確かです。


 高校では今回の出来事があってから、その便覧をしっかりと管理しようと思ったのですが、百科事典が見つかって3日後、先生も含め生徒も便覧のことを忘れてしまったのです。まるで便覧についての記憶をなくしてしまったかのようでした。その便覧も行方不明になってしまいましたが、私は便覧のことを忘れることはありませんでした。便覧に関する一連の出来事を忘れることなく、そのイメージは脳裏に焼き付いています。自分の部屋で便覧が見つかった時の怖さを忘れることはありません。


 これで私の話は終わりです。


あとがき


 いかがでしたでしょうか。今回はそこまで「奇怪」とそこまでは言えなかったかも知れません。

 今回の体験談は十数冊ある「怪奇便覧」のうちの一冊に関する出来事です。


 もし、知らないうちに和紙でできた冊子が見つかって、表紙に草書体で便覧と書かれてあったら、それは「奇怪便覧」なのかも知れません。


 


 

 

 いかがでしたでしょうか。今回初めての試みとあって、難しいところもあったのですが、書きたいことを表現することができました。なお、体験談風の小説ですから、元となったものは決して実在する物ではありません。

 最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

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