表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少女と小人と大人

作者: 戯画葉異図

 ベンチに座る僕の隣で、少女は美味そうにアイスキャンディーを舐めている。

 「ねえ、小人って、本当にいると思う?」

 少女は僕に訊いた。

 「いや、そうは思わないな」と僕は答えた。

 とても暑い日だ。

 「でも、大人はいるでしょ」

 「そりゃあ、大人はいるさ」

 「どれくらい?」

 「想像できないくらい、たくさん」

 「ふうん」

 少女は麦藁帽をかぶっていた。

 僕は遠くで飛ぶ鳥を見つめている。

 「でも小人はいないのね」

 「そうさ、小人は、本当はいないんだ」

 「ひどい話ね」

 飛んでいた鳥は、どこかへ行ってしまった。

 もう、どこを探しても見つからなかった。

 「あっ、小人!」

 不意に少女は叫んだ。

 サンダルを鳴らして茂みに近寄る。

 「本当よ! 本当にいたのよ! 私、見たもの! 凄いわ!」

 少女が指差す方には、しかし何もいなかった。

 「どこに行っちゃったのかしら」

 「さあね。実は、どこにも行ってはいないのかもしれない」

 「そうかな」

 「可能性の話だよ」

 「残念だわ」

 「しょうがないさ」

 少女はベンチに戻ってきて、そして、再びアイスキャンディーを舐め始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ