05 図鑑をひらき
【SAN値チェック注意】【アイデアロールからのクトゥルフ神話技能+5】
自宅近所の書店にいるのだが、俺の目の前には見た事もない本がびっしり詰まった本棚が一面に広がっている。
背表紙も平積みに見える文字もなんだかよく分からなくて、表紙の絵は何の生き物なのか分からない生物が、人体模型の様に皮を剥がされているリアルな物だった。
気持ち悪いな。とは思ったが、なんでか俺の足はこの棚の前から一歩も動けなくて、目の前のキモい本を眺めるしかやる事が無い。
仕方なしに一冊、棚に入っている物を適当に手に取った。
やはり、見た事の無いモノが解剖されたり、内臓が溢れ出したり、妙に生々しく散らばっているモノしか載っていない本であった。
図鑑なんだろうが、俺には解説文は一切読めず、ただグロテスクな臓物なのか、筋肉なのか、動物なのか植物なのかも判別出来ない、ぐちゃぐちゃとした何かの絵を見るだけだった。
というか、俺にはその絵を見るだけで精一杯だったのだ。眺めてページをぱらぱらめくる度に、吐き気や悪寒がしてきて、どんどん気持ち悪くなる。
目眩も起こり、暖色のライトで照らさせれている店内では、棚の茶色の中で照明のオレンジが眩しく、眩しくぐるぐるわんわんと光っているのだ。
見なきゃ良かった……。
心の底から後悔しながら、俺は別の場所へ行こうと道を探した。
周りは見上げる程高い本棚で仕切られ、まっすぐな一本道になっている。行けども行けどもよく分からない本が、両脇から俺を圧迫死させてしまうかのように威圧感を放つ。
動くようになった足を運んで少し歩くと、右手に曲がり角を見つけた。入ってみると、本棚に並ぶ本は普通の書籍と同じ様な感じだった。
側の棚を眺めると、海外書籍コーナーのようであった。俺の前にある棚には中国語の表題が並んでいた。
適当に一冊手に取ると、たまたま日本語訳になっている物で親しみ慣れた日本語の文字と、歴史の教科書で見たことのある中国の王朝やら人物名が目に入りほっとした。
見ているだけで悪寒や吐き気のする、生物なのかも分からないグロテスクな解体図鑑を見続けるより、堅苦しい歴史書を眺めている方が何億倍もマシである。
「…………うっ……」
さっきの図鑑の内容を思い出したら、また吐き気がこみ上げ、おえっと喉の奥にせり上がる感じを受ける。
気を紛らわせようと、手にとっている本の目次を眺めてみるが、全く落ち着かない。
早くこの本屋から出よう。と歩き出す。
不思議なことにこの海外書籍のコーナーに来てからは、周りは一般の書店と変わらず、本棚の道は無くなり、店内を普通に見渡すことが出来たのだ。
出入口から伸びている薄暗い廊下の先には、エレベーターが一台。この書店にエレベーターなんて無かった気もするが、俺の帰るべき部屋はこの書店の上の階にあるのだ。なんでか、確信めいてそれだけは分かる。
とにかく、早く帰って寝よう。寝て忘れよう。
エレベーターに乗ると、お爺さんが一人乗ってくる。気分が悪くて人と関わりたい気がしない。
無言の中、先にそのお爺さんはエレベーターを降りる。そこからまた少し上の階に行くと俺の目的の階に付く。
扉の外は古臭い廊下で何となくカビ臭い。
黄色い電灯が二、三メートルおきに天井から、薄暗く窓もない廊下をぼやぼやと照らしていた。
2004.10.06
クトゥルーのミスカトニック大学やセラエノの図書館にでも紛れ込んだのでしょうか。
ちなみに、彼岸がクトゥルフ神話を知るのはこの時から五年近くは後になります。
なんの魔術書や呪いがかかった本見つけたんですかね。
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連休連日更新って事で、明日も深夜12時過ぎ頃に更新を予定しております。
今晩も、良い夢を。