04 銀色の菓子
【不思議・奇妙な物語】
俺は自分の部屋に居た。
目の前の机にはボルトやナット、ワッシャーと金具が散らばっている。よく見れば、指輪やピアス、細めのチェーンなど雑多なパーツや金属部品がごったに混ざっている。
片付けないとなぁ……。
ぼんやりとその光景を眺めた俺は、ぼんやりしたまま机の前に立ち、金具を一つ摘まんだ。
かこり。
前歯で噛み、指を軽く動かすとそんな音を立てて、金具は割れた。
口に含み、咀嚼する。
かこ。かこ。
食感としては、落雁が近いだろうか。歯に力を僅かに入れるだけで、脆くも粉々に砕けていく。
なぜか、目の前の金具を片付けようとしているはずの俺は、その金具を黙々と食べ続けている。
美味くはない。無味無臭で、金属の味も素っ気すらないのだ。
ただ、俺はそうする事が義務であるかのように、当たり前に口に入れてはかこり。かこ。かこ。と金具を砕く。噛んだ具合が良い気がするだけで、腹も膨れないし、味も無いせいか、いくら口に含んでも俺は無表情のままだった。
手を伸ばし、口に入れ、噛み砕く。
機械的な動作をなんとも思わずひたすらに続けるのだ。
俺はなんで、これを食べているのだろうか。
という事がふと頭を過るのだが、
あぁ、そうか。片付いてはいるな。
と当初の目的を思い出して作業を続けた。
一つづつ、摘み上げ、口に入れ、砕き………そういえば、飲み込まずに口の何処かへ消えている。
まぁ、いいや。
とりあえず、片付けてしまおう。
かこり。かこ。かこ。
2004.07.14
シルバーウィークという事で、頑張って連日更新を目指します。
水曜まで毎日一話、全四話。連休中に更新していく予定です。
また明日の夜に。良い夢を。