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02 紅く暗闇に

【ホラー注意】

挿絵(By みてみん)



 なぜか俺は見知らぬ廊下に立っている。

 洋館の様な造りをしていて、足元には濃い色の赤絨毯が奥まで伸びており、壁にはロウソクの明かりがぽつぽつと灯されて暗い廊下を僅かに照らしていた。


 辺りを見回したいところだが、なぜだか顔も体も一切動かない。その代わり、足だけが俺の意思とは関係なく前へ前へと進んでいる。

 動くままに暗くてろくに前も見えない廊下を進んでいく。二〜三mも先になれば暗闇に見通しは悪い。歩き続けると、T字の曲がり角にぶつかる。俺の足は相変わらず勝手に動き続け、右を向いた。


 その先には、見渡す限りミイラがいた。


 ハロウィンなんかの包帯が巻かれているようなコミカルさは無く、皮膚は茶色く変色して骨に張り付き、目はくぼみ落ち黒い穴があり、肋骨等はそのまま浮き出ているのに、干からび傷みきった干し肉みたいな肉肉しさが覆っている。まだ綺麗に白骨化した方が見た目は良いかもしれない。

 何十体いるかは分からないが、そのミイラ達はどれも俺の方に向き、こちらに歩みを進めて来る。


 そして俺の足は、ここまで俺を運ぶと役目を終えたかのように仕事を放棄した。

 自由になった膝は、またもや俺の意思とは関係なく小さく震えていた。とっさに手に力を込めると、右手に固いものを握る感覚がする。


 はっとして右手を見ると、体は動き手の中の物が見えた。

 小型の拳銃である。なんて型か、どれくらいの性能かなんてどうでもいい。漫画知識だが安全装置を外してみる。リボルバーだから多分五、六発は打てる。


 来た道を戻って出口を探そう。

 T路地の中心で振り向くと、真後ろに襲いかかってきたミイラが見えた。


「ーーーー!!」


 銃を両手で構えてヘッドショットを狙う。避けようがない、俺の手を伸ばした先の銃口から奴の頭までは三十cm程度だからな。



 カチッ……



 え、



 弾は出なかった。


 カチッカチッカチッカチッ…


 え、なんで、なんで、なんで、


 数回がむしゃらに引き金を引いて事態を把握した。


 ミイラの少し緩慢な手が俺の伸ばしている腕を掴みそうになる。

 奥をよく見ると、反対の道にも、俺がやって来た道にも、いつの間にか三方向全てにミイラは溢れかえっていた。何体かなんて数えていられない。


 止まっていた気がした膝の震えが一段と大きくなった。膝どころか銃を握りしめいてる手も震えだし、捕まったらその後どうなるか………


「うあああああああああああっっ!!!」


 俺は叫びながらそのミイラの腕をかわし、集団の中に突っ込んでいく。隙間をくぐり抜け、時には体当たりで道を開けながら、どこに続くか分からない長い廊下を走った。


 幸いにも、追いかけて来ているが奴らは俺の足には付いて来ていないようだった。

 長い一本道の廊下は、またT字の曲がり角が見えてくる。息が切れてくるが途中に部屋などなく、その分かれ道を目指すしかない。


「ーーーーー!!ーーー!!!」


 曲がり角から不意に男が現れて、俺に向かって何かを叫ぶ。

 金髪で白人で、身長はかなりある細身の眼鏡をかけた優男。英語だったからか一切聞き取れなかったが、人がいる事に安心した。


 ついて来い!と身振りをする男の後について行くと、大きいロッカーが数個並んだ場所に出る。そのうちの一つで扉が勢い良く開く。小柄で黒っぽい服を着た婆さんがロッカーから出てきた。


「こっちだ!早く中に入れ!!」


 いきなりの登場にぎょっとしつつ、男に押し込まれる形で婆さんのいるロッカーに詰め込まれた。男は数個隣のロッカーに入るのが一瞬見えたが、すぐさま婆さんが扉を閉める。


「静かにしていろ、気がつかれるぞ」


 ロッカーにしてはかなり広いが、婆さんと密室なんて四の五の言ってる時ではない。息を殺して外の気配を感じる。薄い金属板を隔てて、大量の何かが動き回る音がする。


 十分だか二十分だか…………外は静かになった。

 婆さんが、もう良いだろう。と言って扉を開ける。見える範囲に奴らは居なかったので、浅い呼吸の息をか細く吐けた。


 白人の男もロッカーから出て来ると、廊下の奥を指差す。目を凝らすと出口なのか扉が一つ見える。

 男の後を付いて行き、扉を出るとそこは外だった。裏口のようで、やけに整った広大な裏庭につながっている。


 時刻は夜で、月明かりで明るい裏庭を男と二人歩いた。植木は生真面目に四角く切り揃えられているが、花はどこにも咲いてはいない。


「ーーー、ーーーーー?ーーーー」


 男は俺に向かって話しかけてくるが、高校生の英語が苦手な俺は、少し慌て気味で早口のネイティブ発音なんて付いていけない。

 よく聞き取れないまま、ニュアンスだけで頷き返した。


 やけに静かで、なんでか物音一つしない夜道だった。






 なぜか俺は廊下に立っている。


 え?


 洋館の様な造りをしていて、足元には濃い色の赤絨毯が奥まで伸びており、壁にはロウソクの明かりがぽつぽつと灯されて暗い廊下を僅かに照らしていた。


 さっき……え……?


 辺りを見回したいところだが、なぜだが顔も体も一切動かない。その代わり、足だけが俺の意思とは関係なく前へ前へと進んでいる。

 動くままに暗くてろくに前も見えない廊下を進んでいく。二〜三mも先になれば暗闇に見通しは悪い。歩き続けると、T字の曲がり角にぶつかる。俺の足は相変わらず勝手に動き続け、右を向いた。


 まて、この先は……


 その先には、前回同様化物だらけだった。


 そして俺の足は、ここまで運ぶと役目を終えたかのように仕事を放棄した。

 自由になった膝は、またもや俺の意思とは関係なく小さく震えていた。とっさに手に力を込めると、右手に固いものを握る感覚がする。


 だって、これって……


 T路地の中心で振り向くと、また真後ろに襲いかる姿が見えた。


「ーーーー!!」



 カチッ……



 カチッカチッカチッカチッ…


 また?また?またって?


 俺は数回がむしゃらに引き金を引いた。


 膝の震えが一段と大きくなった。膝どころか銃を握りしめいてる手も震えだし、目の前に広がる大群に詰め寄られるのだって、そんなの分かって……


「うあああああああああああっっ!!!」


 己に活を入れるように、大声を出した。また先程と同じ方向へ駆け出していた。わらわらと周りにひしめく奴らの中を駆け抜け、危ない時は握っている銃で殴ってみた。少しよろめく程度で効果は殆どなかったが。



「ーーーーー!!ーーー!!!」


 曲がり角から不意に男が現れて、俺に向かって何かを叫ぶ。

 金髪で白人で、身長はかなりある細身の眼鏡をかけた優男。 『Come』『Hastily』なんて単語が聞き取れた気がした。全力疾走でゼェゼェ息があがってくる。


 この男はさっきも会ったはずだ。男の方は覚えているのか?


 男の後について行くと、やはり大きいロッカーが数個並んだ場所に出る。扉が勢い良く開き、さっきと同じ婆さんがロッカーから俺達を呼ぶ。


「こっちだ!早く中に入れ!!」


 男に押し込まれる形で婆さんのいるロッカーに詰め込まれ、男は数個隣のロッカーに入るのが一瞬見えたが、すぐさま扉が閉まる。そうだ。婆さんは日本語だ。

 俺が声をかけようとすると、婆さんは手で俺の口を塞ぐ。足音のようなものが近づいてくる気配がする。


「静かにしていろ、気がつかれるぞ」


 息を殺して外の気配を感じる。薄い金属板を隔てて、大量の何かが動き回る音がまだ続く。


 十分だか二十分…………今回も外は静かになった。もう良いだろう。と言って扉を開けられ、外にでる。

 白人の男もロッカーから出て来ると、廊下の奥を指差す。扉が一つ見える。男の後を付いて行き、扉を出るとそこは同じく広大な裏庭に出ることが出来たのだ。


「Do ーーhaveーー?ーーyouーーーOK?ーーーー」


 落ち着いて聞くと、何個か単語は聞き取ることが出来た。多分、怪我はないか?みたいな内容だと思う。


 えっと、なんて言えば良いんだ?俺と会った事あるか?覚えてるか?俺はあんた知ってるよ。


「どぅーゆー……りめんばーみぃ?………え、あ……あー………あいのーゆー」


 くっそ。英語の成績なんてクラスでも学年でも下から数えた方が早いっつーの。発音はおろか、文章すらすぐに浮かばん。多分単語はあってるはず。


 俺のたどたどしい言葉は上手く伝わらず、男は困ったような不思議そうな顔で見てきている。


 えぇっと、どーすりゃいいんだ。会ったことがある?同じこと?繰り返し?ループ?今、俺達どこに向かってるんだ?


 やけに静かな裏庭を、俺は言葉を探して俯いて歩いた。







 俺は廊下に立っている。


 は?


 洋館の様な造りをしていて、足元には濃い色の赤絨毯が奥まで伸びており、壁にはロウソクの明かりがぽつぽつと灯されて暗い廊下を僅かに照らしていた。


 おい。三回目だよな……


 辺りを見回したいところだが、なぜだが顔も体も一切動かない。足だけが俺の意思とは関係なく前へ前へと進んでいる。T字の曲がり角にぶつかる。俺の足は相変わらず勝手に動き続け、右を向いた。


 進むなって、やだって……冗談だろ……


 その先には、見渡す限り奴らがいた。


 自由になった足は、俺の意思とは関係なく震えている。

 化け物が大量にいるとかじゃない。もしかしたら、ずっとこれが続くのか。館から出ても終わらないんじゃないのか。また、ここに戻ってくるのか。なんでだ。いつまで、死ぬまで、一生?なにこれ?ここで死ぬの?


「うああああああああああああああああああっっ!!!!!」


 無意識に口から叫び声が上がった。繰り返していると改めて理解すると、居ても立ってもいられなくなってきた。どの方向に向かっているか分からない、とにかく今死にたくはない。同じ風景の赤い絨毯が続く廊下を走る。廊下を走る。何かにぶつかる。体が重たい感じがする。よろめく。何かなんて確認しなくても分かる。赤い廊下が見える。そんなものはどうでもいいから、早く、早く……


「ーーーーー!!ーーー!!!」


 曲がり角から男が現れて、俺に向かって何かを叫ぶ。内容を聞いている余裕は無かった。


「ーーーーーーーっはっ!!!」


 声が出ない。呼吸が乱れておぼつかない中、一歩前を行く男を追いかけるとロッカーが並んだ場所に出る。

 三回目もロッカーが開く。


「こっちだ!早く中に入れ!!」


 自分から婆さんのいるロッカー向かい、


「おい!!!なんだこれ!?!?どうなってるんだ!!!」


 唾を飲み込み怒鳴りつけるように叫んだ。


「静かにしろ!もう一人来るぞ!!」


 そう言うと婆さんはロッカーの扉を開く。その途端、十歳くらいの少年が転がり込んできた。

 普通よりずっと大きいのだが……ロッカーは三人のぎゅう詰め状態で、また十数分は息を潜めた。一番扉側に居る俺は冷たい扉に顔を押し付けて外の音を聞く。引きずるような音。乾いたような足音。何十居るかは分からないが、引っ切り無しに周辺を歩きまわる気配が絶えない。


「………………」

 しばらくした後、俺は無言で婆さんの方に視線を向ける。それを見て婆さんも静かに頷く。


 扉を開けると、周りには何も居ない。同じくロッカーから男が出てくる。

「そんな小さな男の子まで……君、安全なところに連れて行ってあげよう」


 なぜだか男の英語が理解出来た。俺が怒鳴ったアクションでイベントでも発生したのか?ゲームじゃねぇんだから勘弁して欲しい。

 俺は無言で頷き、少年の手を引いて裏庭へ続く扉を男と共にくぐる。少年は何も言わず付いて来た。



 相変わらずの月明かりの中、俺は男に話しかけようとする。が、男は思ったよりもお喋りで一方的にこちらに向かって話し続けてくる。


「僕の調査隊は少し離れた場所にいてね、どうするか……僕が先に行く予定だったからなぁ。あまり気に食わないが、向こうのチームに任せようか。あいつらの所ならここより安全ではあるし」

 意味の分からない事を言う男に質問をする。


「調査隊?あのミイラ屋敷でも調べて、ゴーストバスターでもするんですか?」

「あの洋館は今回の異変の一つさ。大元がこの付近にいてね、それの影響でここらはあんな場所が増えてしまった。僕はその大元の潜入調査兼、切り込み隊長みたいなもんだよ」


 調査くらいなら分かるが、切り込み隊長って程腕っ節が良さそうには全く見えない。どう見てもデスクワークが向いていそうな外見だ。第一、切り込み隊長がただのワイシャツ着て普通の革靴なんて装備、頼りなさ過ぎる。

「はぁ……」

 俺は生返事で返す。


「君はなんであんな所に?」

「知りません。気がついたらあの廊下に居て、何回も、何回も繰り返してるんです。あなたと会ったのもこれで三回目。毎回この裏庭に出て歩いていると、気がついた時にはあの廊下に立ってる」


 男はふむ……と手を顎のあたりに添えて考えるポーズをとった。

「君も巻き込まれたんだね。多分、僕がこれから向かう大元を何とかしないと……また何処かで元に戻ってしまうかもしれない」


 なんだ?じゃぁ、この男がその大元ってもんを解決しない限り、俺はずっとあの館のループから出てこれないのか?

 任せておきたいところだが……今までの事を考えると、俺がなにか動かないと全てリセットされてループに戻る気がする。これは、一緒に付いて行って解決しないといけないのか……?

 俺はゲーマーでも無いし、ホラーゲームなんてやりたくはない。チート能力も無いただの俺がそんな変なモノに挑むなんてやる気がするわけない。ゲームで皆が喜ぶのは死なないし、痛くないし、キャラ鍛えても筋肉痛にならないし、強い武器とか持てばザコ敵なんて瞬殺できる。無双は楽しいし。


 俺のステータス?

 高校二年生。筋力は多少ある。持久力は無い。短距離は早め。合気道歴そろそろ六年目。でも受験で最近行ってない。部活は文系。


 死ぬ!!!


 なんて一瞬思ったが、俺には多分選択肢なんて無い。

 少し落ち着いてきたら、三回もループなんてホラーに見えてギャグかもしれない。とか思えてきた。笑うしかない気分なだけかもしれない。

 男の言う別のチームは……確かにガラの悪そうな連中がいたが、きちんと武装した奴ばかりだったので戦力的には安心。少年を預け、そして俺は成り行きで男の切り込み隊長に同行することになってしまった。


 しばらく男に付いて行くと小さな小屋に入る。中には防弾チョッキだとか、銃火器の類が乱雑に置かれていた。

「好きなのを使ってくれて良いから」


 そう言われても、んなもの使った事がない。何が使いやすいだとかも分からないし、敵はとあるビルに居る。くらいしか情報が無いのでどんな物が合うのかも分からない。

 逃げる時に動きやすいよう、あまり重たい武器は止めた方が良いのかな。と思う。

 唯一見つけた防具は防弾チョッキだけだったのでそれと、銃は自動拳銃を一丁。コルトに似てる見た目かもしれない。ライフルも担いでおく。名前は分からない。使えるかどうかも分からない。ナイフも取りあえず……弾?どれだけ必要か見当もつかない。


 男は慣れた手つきで準備を終えていた。細く見えても外国人はやはりデカイ。結構な量の装備を持って平然としている。

「まず、僕達が陽動として乗り込んで敵の基地で暴れる。注意が僕達に来ている間に仲間が応援にやって来る。同時にビルに爆薬が設置されるから、準備が終わり次第逃げるんだ」


 なんとも雑な気がする作戦だが、頼る相手もいないし男の言う通りにするしかない。

 本当に本拠地はただのビルで、夜の暗闇に草原の真ん中に四角いコンクリ打ちっぱなしのビルが建っていた。モダン建築みたいに場所に対して少し不自然な感じはする。


 入り口は鍵すらかかっておらず、中にはすんなり入れた。誰もいないビルを一部屋づつ見ていく。二階まで何もなく、薄い黄緑い色のコンクリ壁の室内で階段をあがり三階に行く。


「やっぱり、下調べ通りこの先にいるらしい。気を付けてね」

 男が小声で話していると、奥の部屋から笑い声が聞こえてくる。子供の声に聞こえる。

「………?」

 あれが化け物屋敷とか作る敵?


「お兄さん達なにしてるの?」


 背後から女の子の声が聞こえて心臓が止まりそうになる。恐る恐る振り向くと、肩まで黒いストレートの髪がかかる少女がいた。年齢は……十歳いってるかどうか……。


「危ない物持ってるね。私達殺しに来たの?」

 少女はニッコリと笑い、俺に近づく為に大きく一歩踏み出した……途端に発砲音と少女の体が大きく左に跳ね、床に倒れる。視線を動かすと白人の男が撃っている。


「あ……あんた何して………」

「それは、見た目だけだよ……人じゃないから、騙されちゃ駄目だ。行くぞ」


 男は少女を無視して奥の部屋に向かう。

 そうは言っても、見るからに普通の子供が目の前で撃たれたら……動揺するのは当たり前の反応だよな。

 奥の部屋では笑い声が絶えない。こんな側で発砲しても悲鳴や怖がる反応は無かった。ただ、笑い声の中にまじる会話にで


「あーー」「音したねーー」「どうする?どうする?」


 なんて言葉が聞こえる。

 男はその声がする部屋の中に何かを投げこみ、そして俺を突き飛ばすカタチで物陰に伏せた。

 手も付けずに倒れたせいか、胸のあたりに圧迫感を感じ、瞬時に気圧で鼓膜が膨らむような感じがして、このまま破けるんじゃないか。という衝撃が背後から響いた。

 振り返ると子供がいたと思える部屋には煙が立ち込め、入り口の半開きの扉は何処かへ吹っ飛び壁が少し崩れている。間髪入れずに部屋の中に弾を打ち込んでいる男の姿を見た。


「煙いなぁ」「部屋ボロボロじゃん」「掃除してから帰って欲しいよね」


 先程と同じ声が聞こえると、薄れてきた煙の奥には四人子供が見えた。少女が二人。少年が二人。先程倒れた少女同様、十歳いくかどうかの年齢である。さっきの少女によく似た子も中に見えた。


 なんか……無傷に見えるんだけど……。


 俺がぼーっとその光景を見ていると、男に怒鳴られてはっと気が付く。ライフルの引き金を取りあえず引いてみる。反動で体が動いて全く当たらない。壁にもたれかかるようにしてみると、少し狙いが定まってきた。しかし、めちゃくちゃに数撃ちゃ当たる。くらいの精度でしか無い。


 あんな爆破の中で無傷は人間じゃない。と思うことにして、銃口を一人に絞って向け続ける。まぐれで額に直撃した。


 よっしゃ!!


 と心の中でガッツポーズをしようとすると、目の前の少年は普通に歩いて来ている。額には穴が空いていた。

 少年が足元に落ちている、小さな壁の欠片を拾ってこっちに向かって投げる。まるで水切りでもするみたいに。俺が反応できずに止まっていると、右足のふくらはぎにぼやっと痛みが走る。ジーンズが破けて、切り傷になっているのか……血が滲んでいたのだ。

 色々と理解が追いつかない。頭に穴空けても動くとか、石投げて服を切り裂くとか……無理ゲーか?


「びっくりした?僕、人の脳みそ好きでね、あれ食べてるからだよ。美味しそうだから、君のも食べてあげるね」


 意味がわかねぇ!!ゲームにしてはもう少しマシな設定にしてくれ!夢なら痛くないはずだ!右足は痛えしこれはなんだ!?


 少し離れたところで、残りの三人を相手にしている男が声を荒げる。

「君!!もうすぐ僕のチームが来るはずだから応援を呼んでくれ!!」


 作戦をバラしてどうする。なんてツッコミはしていられない。すぐさま踵を返して走り始めると、少年は付いてこなかった。

 俺が戦力外だとでも思ってくれたのか?その通りだから応援の所まで行って来るしかない。俺達が上がってきた階段の前まで来ると、見たことがある人影が立っている。


 さっき、男が銃殺したはずの少女である。


 こいつもさっきの奴らの仲間なら、効果が無かった。って事なんだろう。

 少女は階段の真ん中に立ち、道を塞いでいる。


「あのねー。私のお姉ちゃんが向こうに居るんだけど、私達は双子だから、片方死んでも生き返るんだよ?知ってた?ちゃんと二人一緒に殺さないとダメだよー」


 少し間の抜けた声で、少女は笑顔を振りまき話しかけて来た。

 またとんでも設定かよ……二人一緒ってこの状況じゃ詰みじゃん。ゲームでも、もう少し攻略法がある敵だすっての。やめてくれ。


 勝てる見込みも無いので俺は返事も返さず、階段を通り過ぎ廊下を走った。一部屋、突き当りの左側に扉が見える。すぐさまその中に入って見るとトイレだった。個室が並ぶ奥には小さめの窓が一つ。

 三階の窓から脱出は怖いに違いないが、このままよく分からない子供に殺されるのは御免だ。むしろ、転落して大怪我なり死んだほうがいい気もしてきた。なぜだかそっちの方が怖くない。

 少し高めに設置された窓をガタガタと力ずくで外し、乱雑に床に投げ捨てた。

 肩周りがキツそうだったが、壁を蹴るようによじ登り小窓の枠に自分を押し込む。外はいつの間にか早朝で、空は白っぽく雲の間から光が差していた。


 外壁には掴まるところも無い。後ろからさっきの少女の声が近づいてくる。まだ抜けない肩を無理やり入れて足をバタつかせ壁を蹴る。落ちた先の事を考えるのを止めて、必死にもがいていると声がまた近づいてくるのに焦りが増える。

 もー、いいから、早く、早く、早く………


 肩が通ったので腕の力で体を引きずり出し、真下に上半身が伸びた。

 後は体重に任せるように頭が下へ降りていく感覚を感じながら、景色は暗転して俺の意識は無くなったのであった。


2005.01.08

変な夢を見始めたのは高校辺りなので、初期のこの辺は翻弄されっぱなしで無様です。

十年くらい見てると慣れてきて最近は平気ですが、古いものから載せていった方が変化が見えるかもしれないし良いかな。と思っております。


怪我すると、なんでかほんのり痛いです。

殴られると、プロテクターの上から殴られたみたいに一枚挟んだボヤケた痛みの様なものが起こります。息苦しさとか圧迫感とかも、漠然と苦しい辛いと感じます。

こんなリアリティは要らないんですが、不思議なもんです。


不定期更新ですみません。

なんでかって、昔少しだけ書いた夢日記を実家に置きっぱなしなのです。

今は記憶に強く残ってる古い夢を思いだしながら書いております。日記にあるやつなら日付も書いておいたはず………色々漁って探してきます。


2015.09.10

夢日記発掘してきました。

改めて書留た文を読んだら、これ高校生二年なんだって。ループの印象強すぎて一年とかと記憶違い。

日記内容に合うように少し修正しました。

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