10 赤く燃えて流れ出す
【視覚表現注意】【SAN値チェック注意】
初めに目についたのは、燃える赤い色だった。
黄色い線が混じり合い、燻りながら上へ上へと上がっていく。
炎ではあるが、原色のクレヨンで塗られたその一面をまず覚えている。
その中には沢山の人が見える……人。と呼ぶべきなのだろうか。
黒いクレヨンで髪を塗りつぶされた男のような者。
彼の片目は異様に大きく涙を流しており、涙を両手で受け取るように手のひらを上に向けていた。
体は赤い何かが流れていて、血液にも取れるかもしれない。俺は赤いクレヨンが塗りたくられた顔や腕だなと思ったが、改めて思い返せば血とも見えなくもない。
切り取られた女性の足のようなもの。
断面は別にグロくはない。マネキンや人形の様に、樹脂やシリコン、陶器で出来てても良いような質感が通り過ぎる。
女性の腹が割れていて、中から人のようなものが這い出て来た者。
女性は人形かと思う無機質感を持つのに、出てきている者はどうも生々しい。
上を仰ぐように体を持ち上げる、頭の無い女性。
手が四本生え、一組は体を触る様に。もう一組は体を支えるように伸びている。
他は大分デフォルメの強い造形なのだが、こいつは比較的リアルな形をしていた。
背中から尻、太ももにかけてのラインが妙に艶かしい。うん。これはエロ枠。
手が何本もカクカクと動いている者。
格好良く言えば千手観音みたいな。でもそんなに腕は無さそうだ。
ずっと動いてるから数が分からん。二組とかそんくらい。
背景は炎の赤や黄色の混じり合うものに、紫だとか紺だとか暗い色合いの部分もある。
そうかと思えば、明るい黄色にピンクが見えた。おまけに白い星まで散らばっていて、ここだけ滅茶苦茶ファンシー。
そこには男が一人立っていた。黒っぽい髪に体は青白い。胴体は赤い炎で燃えているようだ。
表情のない男の口はいっきに広がり裂け、中から人間の頭部がぬるっと出てくる。
そのままずるずると口からせりあがり、出てきた者は女性なのか。髪が長くて手が見当たらないくらいしか覚えていない。
ていうか、こいつだけやけにぬるぬる動く。
んで、俺はと言えばそんな奴らの前をカメラを持って全力疾走して駆け抜けている。みたいなカメラ映像である。
何十体居るか分からん奇妙なそいつらは、ひな壇にずらりと並んでいるかの様に何列にも重なっている。
他のやつも奇妙な色や造形をしていて、デフォルメの強い画風だ。
カクカクと動くギミックだって、勿論どれにもついているし。
例えればあれだ。紙の人形だな。クレヨンで描かれた紙の人形。
紙人形の関節部分がビスでも止めてあって、裏に取り付けられた棒を動かし、カクカクと人形劇をさせる様な。
そういった動きをやつらは自由勝手にして、俺の目の前いっぱいにひしめき合っているのだ。
背景は先程言ったように、場所ごとに様々な色合いに塗りつぶされた物が配置されている。
基本的にカクカクにしか動かないのに、口裂けて人体出すやつだけぬるぬるぬめぬめ動いてたり、演出が細かいと褒めれば良いのだろうか。
後半の口裂けた奴辺りまで行くと、自分の瞼がピクピクと動いている感覚が強くなってきていた。ぬるっと人が口から出てきた所で俺は瞼を開いて起きた。
この間、体感にしておよそ五秒から十秒ほど。
「えーーーっと……なんていうかこう、原色のクレヨンで塗りたくられた西岡兄妹がゲルニカしたような……目と涙と、腹からなんか出てるのと、足エロいのと、腕沢山あるのと、口裂けるのと、炎とファンシーなキラキ……んな覚えきれるかっ!!!!」
自分の夢にノリツッコミした。星辰が揃ったのか……とも思った。これはルルイエがちょっと浮いたのかもしれない。クトゥルー脳だから仕方ない。
とりあえず夢を忘れないようにする一番の方法は、すぐさま覚えていることの反すうとメモだ。
それでは皆様、今夜もよい夢を。
2016.09.18