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01 棺のように生まれ出ずる

【不思議・奇妙な物語】

挿絵(By みてみん)



 目を開けると小さな箱に私は居たの。


 目の前には色んな色の透明な硝子がツギハギにされて、一枚の板になっている。

 少し押してみると、音も立てずにその硝子板は動いてく。

 箱の外に出てみると変な形の小部屋だった。壁はでこぼことしていて、いびつ。まるで木の根っこみたいにうねうねとした壁。赤紫色をしていて、どこにも太陽は見えないのに、なぜだか周りは良く見える。

 周りには私が入っていた箱と同じようなツギハギの硝子板が付いた箱が並んでいる。全部で十個はあるかもしれない。


 その一つへ近づいて覗いてみると、中には女の子が入ってた。

 眠っている様で、目を閉じていて、小さく胸が動いていて、髪も肌も服の色も真っ白だった。

 だって、色硝子の色がそのままその女の子に映っているんだもの。

 きっと雪みたいに真っ白なのね。あれ、雪って何かしら。

 太陽。木。壁。硝子。真っ白。……なんだったかしら。



 私はその女の子が入っている硝子板に触ったの。少し強く押してみたら、その硝子は一瞬にして粉々に散って、足元に色とりどりの破片が広がった。


 目の前の女の子を見ると、その子はやっぱり真っ白だった。透き通るくらい白くて、後ろが透けてしまいそう。

 女の子に触ろうとすると、その子はやけにもったりと変な感触がしたの。不思議に思って見つめていると、さっきまで動いていた胸がちっとも上下しない。


「       」


 私はその子に声をかけようとしたんだけど、声が出なかったの。

 そう言えば、私は声を出した事が無い気がするの。ぱくぱくと口を動かしてみて、多分ここから何か出るような気がするんだけど、ちっとも私の口は何も出てこない。


 私はその動かなくなった女の子に、何か声を向けるのを諦めちゃった。

 そうして、ふと気が付くとお腹の辺りが少し暖かい気がしたの。なんだか幸せな気がする。


 隣の箱を見てみたら、やっぱり中には女の子が一人入ってる。

 隣の子と同じで、真っ白な子が目を瞑って同じように眠っている。


 この子は起きてくれるのかな?


 そう思ってまた色硝子を触ってみたら、硝子は大きなヒビが入って、何個かの破片に割れて私の足元に落ちた。

 女の子はやっぱり動かなくなっていて、同じように私のお腹は少し暖かくなって、なんだか何かが入って満たされていくような満足感が広がるの。


 私は誰かに起きて欲しかったはずなのに、なぜだかこのお腹の暖かさが心地よくて、色硝子に次々触れていったの。

 ひび割れて真っ白に曇ったり、大きな穴が空いたり、どろどろと溶けちゃったり、蜃気楼みたいに消えていっちゃったり、どれも色硝子は触るとそんな風になった。


 そして、中の女の子はみんな同じ見た目で、同じように動かなくなっちゃったの。

 でも、その度に私のお腹は暖かくて、いっぱいになって、凄く安心するの。


 全部の箱を触り終わって、部屋には私一人。動いてるのは私一人。

 あとのみんなはなんだろう。


 でも、凄くいっぱいになったから、なんだかそれでも良いような気がしてきたの。

 お部屋には窓も出入り口も無くて、私は改めて周りを見回した。


 たくさん色々な色の硝子が散らばっていて、なんだか綺麗だなぁ。と思って、しゃがみ込んでみたの。

 大きな硝子にはどこから来るのか分からない光が反射していて、そこに女の子が一人映っていたの。真っ白な色の無い女の子。

 私が顔を傾けると、その女の子も顔を動かして、私が手を上げると、その女の子も手を上げている。



 凄い、こんなところに私みたいに動く人がいたのね!


 気が付かなくてごめんね、ねぇねぇ、あなたはそんな狭い硝子のどこにいるの?

 だって、この色硝子、とっても薄くてあなたが入る場所なんて無いじゃない。

 ずっとしゃがみ込んでるのも疲れちゃったから、もっと見やすい場所に行こうね。



 私がその子のいる硝子の破片を両手で持ち上げたら、粉々に砕け散ったの。まるで、真っ白なお砂糖や雪かなにかみたいに、さらさらと目の前に粉が舞って真っ白になる。


 私のお腹は胸の辺りまでいっぱいになって、なんだか凄く眠くなって来ちゃったの。

 今度、また遊ぼうね。


2011.12.26

更新は不定期になります。

微睡みの中、立ち読みしてきたら、おすそ分けに来ます。

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