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ステッド子爵家の若様と執事の話  作者: るい
天使様からの手紙
8/8

天使様からの手紙。③

「何をどう調べたら「天体と時間、距離」にリタが興味を持っているとわかるのかしら?」


ハリエットの部屋でアンドリューの手紙を読んだアンジェラが手紙からハリエットに視線を移しながら聞いた。


「えっと・・・。ゆ、優秀な執事がいらっしゃるんじゃないかしら?」


「優秀な執事がいたとして、何をどう調べたらそんな事が分かるの?私も知らないわよ?リタが興味のある本。」


「そ、そう・・・・。あの、そう!図書室の机にね、その本を広げて読んでいたから、それで・・・。」


「ふうん。まあ、いいけど・・・。で、リタが書いた返事は?」


「これ・・・なんだけど・・・。」


ハリエットが差し出した、年頃の女性が使うにはあまりに質素な便箋には簡潔な文章が書かれていた。


「・・・これだけ?」


「あ、そうなの。お礼の品とかも考えたんだけど、ほら、裕福な子爵家のご子息に私が差し上げられるものなんてないから・・・。」


「そうじゃなくて、文章がそっけないでしょ?これでは。」


「そ、そう?」


「そうよ。これが縁でお近づきになれるかもしれないのに。」


「え?私はそんな・・・。あんな方にお近づきになろうとは・・・。」


「でも、チャンスでしょ?」


「いや・・・。ただ、一応伯爵家の娘だから気を使ってくれただけだと・・・。」


「それでも気になったから気を使ってくれたんでしょ?」


「でも、これ、執事の代筆だと思うし・・・。」


「え?」


「だって、この字。あの天使みたいな見た目の人の字だと思う?」


「うーん。まあ代筆かもしれないけど、文章の内容は本人が考えたと思うけど?」


「そうかなあ。まあ、なんにしろ、社交辞令だろうし。」


「ふうん。だったら、この手紙、私が預かってもいい?」


「え?」


「私が伯爵家令嬢っぽいお礼をしとくから。」


「え??いいよ、そんな。この手紙だけで出すから。」


「実は私、ちょっと興味があるの。」


「え?あ、あの子爵子息に?」


「そう。だから、私がリタの代わってお礼の品を送ってどういう反応が返ってくるか興味あるの。」


「あ、そう・・・か。だったら、まあ・・・。うーん・・・。」


「ね?いいでしょ?この手紙はこのまま出すから。ね?」


「で、でも・・・。」


「リタはあの天使様に興味ないんでしょ?だったらいいでしょ?ね?」


「ん、んー。ま、まあ・・・そこまで言うなら・・・。」


「決まりね!じゃあ、住所も知りたいし、天使様からの手紙も預からせてもらうわね!」


「う・・・うん。」


「ありがとう、リタ。おばさまが不審に思うといけないから、天使様にリタあての手紙は私の家に送ってって添え書きしてもいい?」


「え?」


「ほら、天使様からまたお礼とか来たりしたらおばさま、驚くでしょう?それに、おじさまが気付いたりして「あの浮ついた子爵家の息子と連絡をとるなど!」なんてなったら面倒でしょう?」


「それは・・・まあ・・・。」


「だからね、ハリエット・スペンサーへのお手紙はストラスフォード伯爵家付けで送ってねって書いたほうがいいでしょ?何かうまく理由もつけとくし。もちろん、リタ宛に届いた手紙もプレゼントも必ずリタに届けるから。」



ハリエットはとまどっていた。



あの天使のような目立つ容姿の裕福な子爵家のご子息とはもう関わりたくない。


公爵夫人の若いツバメだったとか、暇と時間をもてあましたご婦人たちのお相手を100人以上としたなどという噂のある男だし、あの日のパーティでも一際少女たちの注目を浴びていた。そういう人と関わるとろくなことがない。


しかし、この美しいいとこが特定の男性にこれほど興味を示すのを初めて見た。


社交界で時の人となったアンジェラには最近、父と娘ともいえるほど年の離れた侯爵様と数年前から愛人関係だというひどい噂がたっている。


その噂を知りながらも下を向くことなく、社交界で優雅に微笑んでいるアンジェラには幸せになって欲しいと思っている。


伯爵家のアンジェラと子爵家の天使様では家のつり合いはとれないが、子爵家とはいえ裕福だし、王家からの覚えもめでたいし、全く無理な話でもないだろう。


アンジェラの幸せのために私が出来ることがあるのなら、やるべきではないか・・・。



「じゃ、じゃあ、アンジェラがアンジェラの名前でお手紙をだしたらどう?」


「え?それじゃあただのラブレターでしょ?毎日何通来ると思う?彼のところに。」


「あぁ、そうか・・・。」


「だからね、名前を貸してほしいの。」


「う・・・うん、わかった。あ、じゃあ、後は私に手紙もプレゼントも見せてくれなくていいから・・・。」


「あら、だめよ。目を通しておいてもらわないと、万が一どこかで会った時に話が合わないでしょ?」


「う・・・ん、そう、だね・・・。じゃあ、そうする。」


「ね、おねがいよ、リタ。ありがとう。」


アンジェラはアンドリューからの手紙とハリエットの手紙を手ににっこりとほほ笑んだ。




こうしてアンドリューとハリエット・スペンサーになりすましたアンジェラとの手紙のやりとりが始まった。











天使様からの手紙はこれで終わりです。物語はまだ続く予定です。

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