live alive!!(4)
翌日の昼。
駅前商店街の一角にある駐車場スペースには、大きなステージが用意されていて、悟司がそこに辿り着いた頃には、既に薬袋会長と、虹山ロック全員が集まっていた。
「遅いぞ、樫枝」
それほど強く非難しているわけではなさそうだったが、悟司はギグバッグを抱えたまま頭をさげた。
「す、すみません」
「うわ、なにあんた。その目のクマ」
千佐都に指摘され、悟司は苦笑いしながら頭を掻く。
「あはは……実はあんま眠れなくてさ」
「緊張してたんスか?」
「まぁ……そういうわけでもないんだけど」
阿古屋にそう答えたところで、薬袋がくるりとステージの方に向かって歩き出した。
「じゃ、これから実行委員の方に挨拶に伺うから。ついてきて」
言われるがまま、薬袋を先頭にぞろぞろと歩き始める。
「ねぇ、ホントになにがあったのさ?」
千佐都が声を潜めながら、隣に並んでそんなことを言う。どうやら、相当クマが目立つらしい。まぁ普段は寝まくっているからな、と思いながらも、
「いや、たいしたことじゃないんだよ。本当に」
と、手を振りながら話題を逸らそうとした。
――が。
「あ、わかった。つっきー関係だ」
ぎくり、と背すじが強張る悟司の姿を千佐都は見過ごさなかった。
「ははあ。それでか。なに? なんか言われたの? あたしに教えてみんさい」
うりうりと肘でつついてくる千佐都。
「べ、べつに何か言われたとかじゃ、ない」
「んじゃ、なんなんさ?」
「千佐都には関係ないだろ」
「んまっ! 反抗期ですか! あたしはあんたをそんな風に育てた覚えはないよっ」
「俺も千佐都に育てられた覚えなんかないよ」
大袈裟に驚いてみせる千佐都に向かってぴしゃりとそう言い放つと、千佐都はふくれっ面になりながら、
「んだよ。ノリ悪いなー」
と、ぼやき出した。
「あんたがつっきーのことをアレコレ想ってるってことは、シュガメンバーにはすっかり周知の事実なわけよ。ましてや今はちょー大事な時期でしょ? 最近ずっと二人で仲良さそうにしてるの、あたし知ってんだからね」
「なんだよ、超大事って」
「あーもー。なんでわっかんないかなぁ」
もどかしそうに千佐都が頭をかいてみせる。
「いーい? 二人きりでいられるって時点で、相手もまんざらでもないってことになるでしょーが。少なくとも悪いようにはぜったいに思われてない」
「つまり、」
「つまり、あとはもう押せ押せムードで乗り切れば、みごと――」
そこでぱちんと手を叩いた千佐都は、両の手の平をみせつけてからニヤリと笑みを浮かべて悟司を見た。
「ゴールイン、じゃないのさ」
「そんなうまくいくかよ……」
向こうには幼なじみがいるんだぞ。
完全なるドフリーってわけじゃないのだ。
そんな悟司の気も知らないで、千佐都は呆れたように首を振りながら、
「はぁーあ。さすがのコミュ障ぷりね。最近はずいぶんマシになったと思ってたけど、やっぱ根っこの部分はそんな簡単に変わるわけないか」
と、悟司に向かってわざとらしくため息をついてみせた。
その態度が、なんだかかちんときた悟司は、
「千佐都はさ、さっき二人きりでいられるって時点で、相手はまんざらでもないって思ってるって言ったけど」
「ああ言ったよ? だからこそ、あんたはもう少し自身をもってだね――」
「それじゃこの前、先輩と丸加高原に遊びに行った件はどうなんだよ?」
それほどたいしたことではない、と思っていた。軽口程度のノリだった。
そのはずが。
「な、なななな!? なに、何言ってんのああ、んんた!」
突然、千佐都が信じられないくらいに動揺しはじめた。その、ものすごい反応ぷりに、思わずこっちがびっくりしてしまう。顔が赤い。千佐都は耳まで真っ赤だった
「な、なんだよ千佐都。お前まさか、先輩を――」
「ち、ちがっ! ちがわいちがわーいっ!!」
「それじゃ、なんでそんなに顔が赤いんだよ!」
「顔……?」
ぺたぺたと、自らの顔を触りながら、
「今あたし、顔赤い?」
と、千佐都は突然、きょとんとした目つきでそう尋ねてきた。
そんな視線に、悟司はたじろぎながらも頷いてみせると、
「うそ……やだ……」
そんな、いつもとは全く違った千佐都の反応をみて、思わずどきっとしてしまう。
なんだよ……コイツ。まさか本当に、
「――二人でなんの話をしてるんだ?」
「「のおうわあああああああああああああああああああっっっっ!?」」
突然割って入ってきた春日の姿に、悟司と千佐都が同時に左右に飛び退いた。
「な、なんだよ。まさか僕の話でもしていたのか?」
「ち、ちがっ! ちがっ……うっ」
千佐都が顔を伏せたままで、春日をしっしと手で追い払う。
「違うからっ! そんなじゃないからっ! だからあっちいけ!」
「そう言われると、余計気になるんだが……」
そうして春日が千佐都の顔を覗き込もうとしたところで、
「――みんな」
と、薬袋の声がして全員がそちらを振り返った。
「この方が、今日の夏祭りの実行委員の方よ」
※お気付きの方も既にいらっしゃるでしょうが、サブタイ変更してます。
というか、以前のタイトルはなんでああいう風にしたのか
僕自身あまりよくわかっておりませんw
(おそらく、別に考えていたエピソードも挟もうとしたからかと思うのですが)
それと、今回のお話はいつもの更新よりも、一度の文量が少なめです。
公募作品優先で筆を進めているのが理由です。
ちょっとずつですが、どうかご容赦ください。




