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この空の下、大地の上で  作者: 架音
一章・古血統の少女
34/59

閑話・魔法の設定等

本日のキーワード:うんちく

2012/02/10:誤字修正・ご指摘ありがとうございます

2012/02/10:蓄魔宝石の項目に補足追加

2012/02/18:誤字修正・ご指摘ありがとうございます

 今回は本文を離れまして妄想という名の設定をちょっと後悔させていただきます。もとい公開させていただきます。

 勘がいい方にはネタバレに直結するような部分もあるかもしれませんがそこらへんはまあ見なかったことにして頂ければと思います。

 もともとは箇条書きとか走り書き程度のものだったので読めるモノになっているかどうか不安ではあるのですが、よろしければどうぞご賞味ください。





〇魔力という概念


 この世界での魔力というものは、生命力と密接に結びついています。

 生命力=寿命と変換してもいいでしょう。厳密には寿命とは密接な関係ではあるけれども、また別の値でもあるので休息を取れば回復可能なものであります。


 ただし一度に限界以上まで使うと即死します。


 ちなみに外部的な観測方法はありません。わかるのは『とても大きい』『大きい』『普通』『小さい』程度の実に大雑把なものです。

 一応本人ならばある程度の残量は判るのですが、ある程度なので使い過ぎで事故死という危険性は常に存在します。


 もっとも人間の場合うっかり使いすぎようにも元の魔力自体が少ない上、魔法の行使には符が必要になってくるのでそうそう事故は起こりませんが。


 この魔力が少ないという特徴は優性遺伝のような感じ?で発現するため(厳密には微妙に違いますがニュアンス的に)混血種は魔力が人間並みに少ないという形になります。大体人間の二倍程度が一般的なようです。

 ただし、人間の中でも変な血統があるらしく、例外的にそこそこの魔力を持って生まれてくる血族もかつて存在していました。御伽噺で出てくる人間の魔法使いの元型になった存在ですね。

 現在は存在しているかどうかも判りませんが、彼らの使った魔法の一部は後述の符の中に受け継がれています。



〇魔法


 魔力を行使して世界に望む改変を与える行為を魔法と言います。


 妖精種は主に励起文と言われる、要するに呪文を唱えることで発動します。


 人間は励起文を使用して魔法を発動すると普通即死しますので、補助の道具である符を使用します。


 なお、励起文や符はあくまでも魔法を行使する際、その影響や効果を指定し、ある意味限定することで改変を起こしやすくするための存在ですので、圧倒的な魔力や意思の力、あるいは強い願いがあれば魔法は発動します。


 ただしその場合効果に歯止めがきかなくなることが多々あります。いわゆる暴走というものですが、これが発生した場合行使者は高確率で死亡します。



〇元型物質


 さて、いくら魔力や意思の力が強くても、それ単体では世界に影響を与えることはできません。

 魔力が世界に影響を与える前段階として、魔力による『元型物質』への干渉があります。


 この場合の元型とは精神医学的なそれではなくギリシア哲学のミレトス学派に由来するアルケー特にアナクシマンドロスが提唱した「万物の根源は、観察不可能で限定できないものアペイロンである」に近い概念物質だと思っていただければと思います。

 もちろん近いだけで、思想的に近似だというわけでもありませんので、元型という語を充てるのもちょっと微妙ですが。


 ともかくこれはこの世界と折り重なるように存在する『元型物質の世界』に存在し、この世界に様々な影響を与えています。

 世界の構造はこちらの世界と元型物質の世界が折り重なって存在している感じです。

 こちらの世界で言う所の肉体とアストラル体の関係が全世界的に拡大されたイメージが一番近いかもしれません。あるいは魂と肉体の関係でもいいですが。


 で、世界の位相的には元型物質の世界は(この物語中では)下位に設定されています。魔力という力を行使した上ですが、こちらの世界からの恣意的な影響を受けるためです。が、元型物質がこの世界に与える影響は顕著です。


 判りやすい所では『火』ですが、当然これが発生するためには燃料と酸素が必要であり、それ単体が存在することは本来ありません。この世界では明確に酸素が認識されているわけではありませんので、燃焼には空気が必要であるという形での理解ですが。


 ともあれぶっちゃけ刃物から直接炎が発生するなんてことはありえないのです。普通の状態ではですが。


 が、元型物質に影響を与えることによりその前提を覆すことができます。例を挙げるならば本編中に出てきた『獄焔の刃』ですが、あれは刃という通常ならば炎を纏うわけがない存在の元型物質に介入、操作し、『刃とは炎を纏うものである』という誤作動を世界に起こさせているもしくは反映させていると理解していただければと思います。

 あくまで誤作動なので、効果は永続的なものでなく時間が立つと消えます。

 なお本編の説明の通り輻射熱をさえぎったりというような複数の性質は与えられていないので、お風呂の焚きつけにしか使用できないわけです。


 魔法の行使から発動までの流れはこんな感じでしょうか


  励起文・符の使用

    ↓

  元型物質に作用、元型物質が変化

    ↓

  元型物質が変化した影響が世界に還元

    ↓

  魔法という目に見える現象、あるいは結果として発動


 なお、いわゆる回復系、肉体操作系の魔法が存在しないのは、生物の元型物質は魔力の影響をほとんど受け付けないためです。(生命力の相互不干渉原則と呼ばれています。例外はあり)


 精神操作系の魔法は一応存在しますが、対象者が抵抗した場合効果が極端に限定されるので実用的ではありません。


 剣を収納したりする符に関しては、空間操作というよりも、物質の数値化が概念的に近いかもしれません。収納するものが限定されていたり、本数が限定されているのは数値化の際乱数の発生を極力抑えるための措置に近いです。

 収納対象を一度特殊な魔力に変形させ(数値化)符に魔力として保存します。取り出す際に符が焼失するのは物質が変換された時に生じる欠損を符に蓄えられた魔力で補い、再形成する時に魔力が消費されるからです。

 なので、収納系の符が収納できるのは非生物に限られます。あまり複雑な構造の物も無理です。

 行商人が荷馬車をゴロゴロさせなければいけない理由はここにあります。




〇純血種・混血種・人間の魔力量の差


 大まかな値ですが200:7:3くらいの差になります。妖精種が圧倒的ですねー

 突然変異的に人間が100くらいの魔力を持って生まれてくることがありますが、本当にごく稀です。

 



☆以上を踏まえた上で符の解説に入ります。




 符は七〇〇年ほど昔、東方から入ってきた技術と言われています。現在の王国が治める領域は古来から第一氏族との戦争が絶え間ない地域でしたが、第二氏族は集団で度々訪れていたようです。直接第一氏族と相対している国家上層部や兵は妖精種全体を危険視していましたが、民間レベルではある程度受け入れられていた感じでしょうか。


 こちらの世界で言う中世の薬師のような、どこか胡散臭いけれども生活には必要な人間という扱いだと思いますが。


 で、符に関してはそんな妖精種の一人が伝えたと言われています。銀色の髪を持った、食い意地のはったやたら陽気な女性だったとのことです。

 第二氏族の長だとも言われていますが正確なことは伝わっていません(笑)


 もたらされた符は、一部の限られた人間にしか扱えなかった魔法を、ごく一般の人間にも使えるようなモノへと変えていきました。





〇符の作成者


 通常煉符師とまとめて呼ばれますが、こちらは厳密には二通りの職に別れます。

 煉符師と創符師です。


◇煉符師。


 こちらはいわゆる刀鍛冶に相当する存在です。

 既存の術式の符を作成する技術者で、符の性質上正確に、精密に呪紋を筆で記入する能力に優れています。

 ちなみに呪紋が正確でない場合、術が発動しなかったり最悪暴発から暴走までおこります。暴発はともかく暴走までやらかした場合とんでもない被害が出ることがほとんどなので、九族皆殺しな状況になりかねませんので注意が必要です。


 煉符師になるためには、通称『符学校』と呼ばれる教育機関に入学する方法がまず挙げられます。王国の場合王都にある『創符研究棟』またはヴォーゲン伯爵領領都フィナーセータにある『煉符館』(双方とも入学試験あり)が『符学校』になります。

 ちなみに学校とは言いますが実質技術者養成校ですので、授業以外の余興は存在しません。温泉に行ったり体育祭があったりしません。税金で給料まで出ていますので選択肢は勉強するか技術を磨くかの二択になります。


 休日は一月に二回。


 上記の方法を取らない場合は師匠(符学校卒業資格者)のもとに弟子入りという形式もあります。こちらはいわゆる寺子屋もしくは塾扱いになるので、謝礼金及び実技に必要な道具代がかかります。

 作中で『煉符師の卵が小遣い稼ぎ云々』という表現がありましたが、こちらのお弟子さんがいわゆる煉符師の卵に当たります。


 実技兼実売ですね。

 農業高校での収穫物販売に近いものと思っていただければと思います。


 年限は特にありませんが、師匠が免許皆伝するまで修行する必要があります。免許皆伝までは完全に師匠の裁量に任されています。授業料を取っている分符学校より授業内容は厳しい傾向にあります。弟子の行動が師匠の評判に直結するので、一般的に思われるほど無体なことはされないようです。

 おおよそ三~五年ほどで免許皆伝になりますが、才能がない場合はそれ以前に破門になります。煉符師にとって不器用は罪なのです。


 資格を得た煉符師の進路は大きな工房に入ったり、地元に帰ったり様々ですが、基本消耗品の作成者なのでくいっぱぐれはありません。


◇創符師


 王都の『創符研究府』およびフィナーセータの『創符師の庭園』に勤務する煉符師を特に創符師と呼びます。

 こちらの煉符師がすることは主に新しい呪紋の研究、開発になります。

 

 ちなみに抱える人員は『創符研究府』が約一五〇名『創符師の庭園』が三〇〇名で、ヴォーゲン伯爵領が王国内の王国と呼ばれる原因の一因になっています。


 毎年符学校の成績上位者から選ばれますが、新しい効果を持つ呪紋を独自開発したものも迎え入れられたりします。数は少ないですが。

 発言力は成績上位者<呪紋開発者となりますので、完全に実力主義な世界です。

 足の引っ張り合いもごっついです。


 そんなわけで結構やめてく人間も多かったりします。


 ストレス怖い。





〇符


 専用の紙(台紙)に特殊な墨を使い呪紋を記入。その上で発動臨界ぎりぎりまでの魔力を付与されたお札の総称です。

 大きさは様々ですが、幅四エリル(11.2センチ)長さ一メリン(28センチ)が一般的なようです。

 ちなみにその術式は呪紋に依存していますので、煉符師の技術によってはもっと小さな符も存在したりします。小型の符専門の工房も存在します。作成料金はお高いですが。


◇符の作成


 台紙に呪紋を記入し、畜魔宝石から必要量の魔力を封入して終わりです。

 やること自体はまあこれだけなんですが、えらく繊細な作業なので資格が存在している感じです。

 普通の人がミクロン単位のヤスリ掛けができないのと同じ理屈ですね。


〇蓄魔宝石

 

 魔力を蓄積する宝石で、『発火』の符を芯に、複数の符を用いて作り上げた道具です。製法は公開されていますが素材が高いため、作るのは領主クラスの財力がないと無理なようです。

 宝石と呼ばれていますが外観は金属の塊に見えます。大きさは種々ありますが、八エリル×一メリン半×四エリル(22.4×42×11.2㎝)くらいが一般的で、この大きさひとつでのべ『発火符』五千枚分の魔力を蓄積することができます。


 ちなみになぜ基準が発火符なのかですが、これ一枚に込める魔力量が普通の人間から安全に抽出できる魔力の最大量とされているためです。


*補足:ちなみに励起文を用いた妖精種式の『発火』はもちろん人間には使えません。『発火符』が人間に使える程度の魔力で構成できる理由はですが、

 1.符自体が火種となることで、術の発動自体は一瞬であること

 2.後述するように符の発動は符に蓄えられた魔力を、外部からの魔力で刺激して発動するという形式をとっていること。

  妖精式の『発火』に必要な魔力は5+α

 (αは触媒も何もない空間を燃やしたりとか持続時間等に関する変数で、こちらにかかる魔力量の方が大きい)

  『発火符』に必要な魔力は口訣に0.1、火花に1、燃焼に符


 実際の燃焼媒体は符自体なので、これだけ少ない魔力量で済むという感じです。

 無論、この計算は『発火符』にのみあてはまる計算ですので、他の符に必要な魔力量は異なります。というよりも遥かに多いです。


 また、蓄魔宝石への魔力供給は生命力を削るという行為でもあるため基本任意となっています。有事には強制になりますが。

 ちなみに成人前の子供が供給することは多くの場合許されていません(成人は13~15歳)


 なお協力者の多寡が支配地域の安定度とかなり連動してたりします。おらが領主様のためなら~ってやつですね。

 それと、これはどこの領地でもやっているのですが、通行税の代わりに蓄魔宝石への魔力供出を奨励していたりします。

 特にヴォーゲン伯爵領では一巡り(八日)ごとに魔力供出者に対して礼金を支払っていたりします。

 一巡り中四回供出したものには酒代二杯分、六回供出したものには外食一回分の商品券みたいなものですが。指定の食堂限定で使用できます(店舗数はそこそこ味もそこそこ。ちなみに伯爵家直営店……何してんだ伯爵)

 この報奨制度のせいでもないでしょうが、伯爵領では他地域に比べて供出者の割合がかなり多くなっているようです。


 で、この蓄魔宝石が各工房に貸し出され、符の作成時の魔力供給源になる形です。

 使用料は取られませんが、符の販売に関しては基本的にどの地域でも専門店での専売という形を取られるので(大体領主直営店)卸値から引かれる形で回収されます。

 なお、工房に所属しない煉符師に関してですが、これは各領地によりますが大体領主の館に併設されている中央工房と呼ばれる工房で魔力だけを注入していく形になります。

 こちらは使用料を取られますが、価格はピンきりです。なので個人の煉符師はこの使用料が安い都市に集まる傾向があります。

 たとえばヴォーゲン伯爵領とか。


 ……ほんとなんでこの伯爵家が大人しくしてるのが謎ですね。


 伯爵領と王都の場合は符学校がその役割を果たしています。

 村とかの場合は村長宅等がそういった設備を兼ねる場合が多いようです。


 なんというか、まさに質で劣るので数でどうこうというのが根本思想にあるのが符というものですという事で。




〇符の効果


 最大の効果は人間でも魔法が使えるようになったことでしょうか。ちょっと例えが極端になりますが、弓と銃の関係に近い感じです。


 弓を使うにはある程度の技術と体格、体力が必要になります。符を得るまでの人間はその能力がなかったわけですが、符の行使に必要なのは引き金を絞る指の力のみということです。

 ただし符の行使時にも若干ですが魔力を消費していますので、大まか一人一日符の行使は二〇回程度に制限されています。無論もう少し余裕はあるのですが、安全面での目安という事で。


 その他には励起文の詠唱が必要なくなったことによる速射性でしょうか。ただし、照準?は、妖精種が使う同系統の術よりも大分甘くなっているので痛し痒しといったところですが、面制圧型の魔法ならばあんまり関係なかったりします。

 魔法の矢系統の術も一人ひとり使えば一本ですけど、まとめて使うと大変なことになりますし。

 千人が同時に励起文を唱えて同時に発動させるのはほぼ無理ですが、千人がほぼ同時に符を発動させるのは可能です。しかも後先考えなければ二〇連射可能という凶悪さです。まさに種子島。

 まあ、それなりに対抗手段はあるので、実際の戦争ではもうちょっと面倒になりますが。


 より特徴的な使用法は、複数の符の効果をまとめることによって発動する新しい効果が挙げられます。

 本文中でありました水晶を媒介に(王女側)三枚の符を使い映像通信を行ったあれとかです。

 活用法はあんまり多くないんですけどね。





 とりあえず理論的、理屈的な設定はこんな感じです。多分矛盾はないかなーとは思うんですけど、あった時は笑って許してください。


 なお元型物質に関しては嵩峰龍二先生のソルジャークイーンシリーズの影響が結構出てると思います。自分なりのアレンジはしていますがご了解いただければと思います。






お正月の代休をいきなりもらったんで、感想の方で聞かれた煉符師関連の設定を丸ごと文章化してみました。


本文並に長い解説ってどーよとか思いますが……

約6000字とかー


一応読みやすいようには書いたんですけどいかがなもんでしょうかねー


何しろ設定なんでより妄想の度合いが強いというか―


一部解説中の分かりにくい単語に関してはWIKIってくださいませ。

解説文の解説まで始めると終わりが来ないので……

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