記録5 三途の川に居座るヤツ
ボクらはあの悪魔を倒した後、この世とあの世の境みたいな場所を彷徨っていた。三途の川でも見えるかな?って、見えちゃ駄目だよそれ。咲羅も同じ事を考えてるみたい。
「三途の川、三途の川。もしあるなら見てみたいな♪」
ボクの完全なる勘違いでした。三途の川が見たいとは、女の子の思考はわかりにくい。瑞穂も変わった思考回路の持ち主だったな・・・、ボクが好きになってボクが殺った人。
「川だよ・・・、川だよ進太!」
「まさか、本当に・・・」
三途の川があるのか、さすがこの世とあの世の境目。確か川は、船で渡るんじゃなかったっけ?
「隠れて、誰かが追いかけられてる!」
「んぐぐぉ」
ボクは強引に咲羅に連れられて、近くの茂みに入った。隙間から覗くと、中年のおっさんが鬼の形相をした老人に衣服を剥ぎ取られている。逆の方向を見ると今度は、ゴージャスな姿をしたおばさんがこれまた鬼の形相をした老婆がその衣服を剥ぎ取っている。そしてその衣服が、古い木にかけられた。
「おうおう、枝がかなり垂れとる。オマエは自力で渡れ」
「いやあぁっ!」
ザバーン----
あのおばさん、問答無用で川に落とされちまった。もしかして、あの枝に服をかけて罪の重さなんかを計っているのか?だとしたら、ボクの場合はと思うとゾッとする。
「あれあれ、枝があんまり垂れてないよ。船に乗りな」
「おお!有り難う御座います」
おっさんは船に乗せてもらえるみたいだ。たぶん小っこい木造船だろ・・・、え!?
(宝船だとぉおおおおおおおおお!!?)
あれは間違いない、宝船!あんな豪華な船におっさん一人乗せる気か!船に乗りたいというボクの衝動が、無意識に体を動かした。が、咲羅がそれを止めた。
「待って、あの老夫婦はただ者じゃない。今行ったら身包み全部剥ぎ取られるよ」
ボクの足は硬直した。そして宝船は出発してしまった。おっさん羨ましい・・・。とりあえず、あの木をへし折りたい。
「咲羅、あの木をへし折れ」
「オッケー」
咲羅はボクの要望にアッサリOKしてくれた。よほど身包みを剥がされたくないんだな。女の子だし。
「てやああぁ!」
バキャァ-----
殺血巌つきの蹴りはいとも簡単に、あの木をへし折ってしまった。これで川に入らなくて済む。だが、ボクらが安堵しているところにあの生き物が現れた。
「波沢進太、三国咲羅!ホープ様の命により、貴様らの精神を地獄へ送ってやる!覚悟しろ!」
「地獄へ落ちろ!」
悪魔は2体いる。1体だけで死にかけたのに、それが2体もいるなんて○○○○した!
「オレは悪魔番号216、バキュウェ!」
「アタシは悪魔番号217、フォヴィ!」
う~ん、今回は「三途の川」についての豆知識。地獄の一歩手前の場所なのは、想像がつくと思います。ほとりでは、懸衣翁<けんえおう>と奪衣婆<だつえば>という老夫婦が亡者の衣服を剥ぎ取って衣領樹<えりょうじゅ>の枝にかけて、生前の罪の重さを計ります。枝が垂れるほど罪が重かった事を証明し、川を自力で渡らさせられてしまいます。当然その先には地獄が待っているというわけです。この二人の老夫婦はこの話でも登場しましたよ。