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雨音

作者: 踊る大福
掲載日:2026/08/19



 それは昔のことでした。

 私がまだ幼かった時のことでした。


 田舎での遊びは限られていて、私はそれらの遊びをどうも好きになれませんでした。


 そんなある日、ふと晴れた空の日に傘を差してみたんです。

 親が買ってくれた新しい傘を早く差したくて。


 でも、晴れた日に傘を差すのって恥ずかしいじゃないですか。

 だから私は、人がいない場所を探したんです。

 ほら、田舎にはそういう場所がたくさんあるでしょう。


 そこで傘を差すと、雨音が聞こえたんです。

 おかしいでしょう。

 晴れているというのに雨音が聞こえたんです。


 傘に雨が当たる音。

 でも不思議なことに、その雨音を聞いているとだんだんと心地よくなってきて、私はそれから晴れている日にも傘を差すようになりました。


 そんなある日のことでした。

 いつもと同じように、晴れた日に傘を差していた時でした。


 ふと傘に雨粒が当たる感触がしたんです。

 ほら、あるでしょう。

 雨が傘に当たって、僅かに揺れるあの感触が。


 普段なら気にも留めないその感触に、私は子供ながら違和感を覚えました。

 だってそうでしょう。


 今は晴れているのですから。


 だから気になったんです。

 外の様子が。


 そこで私は傘を閉じようとしました。

 そして呼び止められました。


 小さい子供だったと思います。

 私よりも少し小さい子供だったと思います。

 その子に言われたんです。


「今、傘を閉じちゃダメだよ」


 そこで何となく、閉じちゃダメなんだと思い。

 雨の音が鳴りやむまで、私は傘を差していることにしたんです。


 でも、今になって思います。

 もしあの時、傘を閉じていたらどうなっていたのかと。


 ほら、最近は暑くなって来たでしょう。

 だから、このことを日傘を差す度に思い出すんです。


 もしあの時、あの子が居なかったらと。

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