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1-8初の外交



 今日はリリアナが嫁いできて初の外交だった。


 参加者の名前と各国の情報をチェックし、セルジオの礼儀作法を学ぶ。言語もかかさず練習する。頭がパンクしそうだったが、忙しくしている方が、余計なことを考えないで済むのか心は楽だった。



 晩餐会はシャンデリアがいくつもかかった大きなホールだった。

 丸テーブルがいくつも並び、それぞれ美しい花が飾られている。


 部屋の中には、各国の王族を出迎えるため、まだ少し早いがエルジオの貴族がすでに集まっている。


 リリアナは、正装を身にまとったオスカーに目を奪われていた。

 横をすり抜けた第一夫人のナターシャが驚いた声を上げる。



「まぁ……王妃様! なぜそのドレスを……」


 言われて、さらに驚いたのはリリアナの方だった。二人は全く同じドレスを着ている。



「わたくし、かぶらないように王妃様の支度係にきちんとお伝えしていましたのに……」



(よく言うわ……)

 

 正直、大事な晩餐会を前にしてこんなことで揉めたくなかった。


 そこへオスカーが何事かと聞くと、ナターシャは例によって目に涙を浮かべて訴える。


「手違いで王妃様と同じドレスを着てきてしまいましたの……それで王妃様が大変お怒りになって……」


 リリアナは付き合いきれないというふうにため息を漏らす。


「怒ってなどおりませんわ。いっそ今夜は“対”ということで。晩餐会の話題になれば、それもまた一興でしょう」


 喉をぐっと鳴らすナターシャに、オスカーが険しい声で言い放つ。


「これ以上は見苦しいぞ」


「っ……申し訳ございませんでした」


 ナターシャと仲良く双子コーデなどごめんだったが、仕方ない。来賓を待たせるわけにもいかない。


 オスカーはリリアナをエスコートする。

 間もなく各国の要人が招き入れられ、周囲は賑やかとなる――もちろん、今宵も音楽はない。



「ごきげん麗しゅうございます。オスカー陛下」

 うやうやしく礼をする大柄の男性。

 フィリップ国王――彼の国は産業に力を入れている。

 


 フィリップ国王は値踏みするような視線をリリアナに送る。


「ほぉ……これはお美しい。ですが、それだけなら飾り人形で十分ですな?」


 隣のオスカーの殺気を、リリアナは敏感に感じ取った。



(いけないわ……)

 リリアナはにこやかに、挑発を受け流すように答えた。


「えぇ、こうしてフィリップ陛下にお目に留めていただけたのですから。

人形である私が、これ以上望むのは欲張りというものでしょうね」


 フィリップ国王は一瞬目を見開いた。場にわずかに緊張が走ったが、すぐに国王は大声で笑い飛ばす。


「わっはっはっ、これは失礼! 機知に富んだ素敵な王妃ですな」


 オスカーは黙って頷く。

 とりあえずは切り抜けた。


 王同士の会話は深まり、リリアナは邪魔しない程度に参加していた。


(オスカー様は外交の場ではとても流暢に、和やかにお話になるのね)


 

 ふと、フィリップ国王の隣でうつむき加減のラニャ王妃が気になった。顔色が悪く、目が泳いでいる。


「どうされましたか?」


「あ……の……」

 ラニャ王妃は口ごもる。



(確か、ラニャ王妃の母国ダジュイは、自国語を重んじる文化だったはず……)


「 Y-u sPe£ak in D:a¢j"y?(こちらの方が話しやすいですか?)」


 ラニャ王妃は、はっと顔を明るくした。

 彼女はリリアナと同じく初の外交だとリストに書いてあった。


 なれない場になれない言語で緊張していたようだ。言葉を切り替えた後は、生き生きと会話をしてくれている。


(よかった……)

 異国で一人になる心許なさ――嫁いできたばかりのリアナには、それがよくわかっていた。


 フィリップ国王は舌を巻く。


「ほう、ダジュイ語がお分かりになるとは……。リリアナ王妃様はバイリンガルですか?」


「いえ、簡単な日常会話だけです」



「ご謙遜を! このように聡明な妃がいらっしゃるならエルジオの行く末は安泰だ」


 上機嫌になったフィリップ国王は、なにやらオスカーに耳打ちしていた。


 

 ちらっと周りを見るが、酒も料理も足りている。わずかに緊張を緩めて、リリアナもグラスに口をつけた。




 宴のあと、オスカーに声をかけられた。


「よくやってくれた。正直こんなにこなせるとは……」


 その言葉が胸に真っ直ぐ届く。


 さらに嬉しい知らせがあった。


「フィリップ国王が、エルジオの天然資源を大口契約したいと言ってきた。君のおかげだ」


「そんな……陛下のお力です」


 つい自分を卑下してしまったが、オスカーはなぜか不機嫌になった。


「謙遜も過ぎると嫌味になる。素直に受け取るんだな」



(この人は、私を女という型に嵌めないんだわ……)


「ありがとうございます。お言葉、嬉しく思います」


 晴れやかな気持ちで微笑む。

 彼女の花のような笑顔を見ると、オスカーは照れたようにふっと目を逸らす。



 王妃としての自信が、ほんの少しだけついた1日だった。




いつもありがとうございます❀


リリアナの問題は2つあり、

1つは冷酷王に愛されないこと。

2つ目は、この国で音楽が忌み嫌われていること。

どうやって解決するのかご覧ください!


もし続きが気になりましたら、ブクマ、☆評価いただけたら嬉しいです♪


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