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スキルなし王妃の逆転劇〜婚約破棄され冷酷王と結婚しましたが、問題はそこではありません!!【毎日21:10投稿】  作者: 雪城 冴
一章

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2/8

1-2どこへ堕ちる ※毎日21:10投稿予定

 

「大丈夫!?」

 慌てて階段を駆け下りたリリアナを見た瞬間、メアリーは小さく息を呑み、怯えたように身を縮めた。

 震える肩、潤んだ瞳。

 その視線は、――はっきりと、リリアナを恐れていた。



「酷いわ、お姉様……ご自分にスキルがないからといって、私を階段から突き落とすなんて……」


 周囲にどよめきが起き「まさか」「信じられないわ」と、断片的な声が、刃のようにリリアナへ突き刺さる。



「そんな、私は何も……」

 説明しようとしたが、周りの白い目に阻まれ、掠れた声が途中で詰まってしまう。


 父は泣いているメアリーを抱きしめ、大声でリリアナを罵倒した。


「自分が名無しだからと言って……みっともないぞ!」



 その時リリアナは、改めて思い知った。


(私の味方なんて、誰もいない――)






 階段事件のあと、社交界は一変した。

 リリアナには、もともと同盟貴族の嫡男との婚約が内々に決まっていた。


 だが――

「妹を突き落とすような女と、結婚などお断りだ」


 そう告げられ、婚約は白紙に戻された。

 抗議の場すら与えられず、罪だけが一方的に押しつけられる。



 後に耳にした噂では、

 “スキルを持たぬ姉が、才能ある妹に嫉妬した”



 そんな話が、もっともらしく広められていたという。


 それは、婚約破棄と呼ぶにはあまりに一方的な断罪―一



 父が家のために決めた婚約であり、顔すら知らない相手だった。


 だが、名も、誇りも、未来も。

 すべてを奪われた日だった。



 ◇


 それから数年が経った。


 その日メアリーは、有名な歌の先生からレッスンを受けていて、ホールにはピアノの音と、可愛らしい声が響いていた。


 リリアナは、雑巾で大理石の床を拭きながら、それをぼんやり見ていた。



 突然、父が険しい顔で部屋に入ってくる。

 


「メアリー……国王陛下から、隣国のオスカー王と婚約のお話があったんだ」


 オスカー王――氷の王と呼ばれ、彼に嫁いだ女性は心を壊されたと噂される。 

 「そんな所にメアリーをやるなんてとんでもない」という継母の怒りに、父は淡々と答える。


「……エルジオは魔力で国を支えているからな。ヴェルデ家から花嫁を送り、国交を深める狙いがあるのだろう」


 メアリーはスキルもあり、階段事件のせいで良くも悪くも有名だった。それ故今回、カンタレア国王からお呼びがかかったということらしい。


 メアリーは涙をぽろぽろとこぼしながら、父に抱きつく。


「ひどいっ! 隣国のエルジオは所詮は小国。なにより音楽の後進国です!」



 メアリーはそこまで言うと、何か思いついたように父の胸から顔を上げる。

 そして、獲物を捕らえるような目でリリアナを見た。


 嫌な予感に、リリアナの胸は早鐘を打つ。

 


「"ヴェルデ家から"というなら、お姉様で十分よ。価値がない者ほど、こんなときは役に立っていただかないと」



 メアリーはこちらへ近づき、リリアナの耳元で囁いた。


「"次は"婚約破棄されないようお気をつけて。

お姉様は名無しの役立たず、オスカー様は魔力の国の王ですもの」


 かわいらしい顔に、悪魔のような薄ら笑いを浮かべていた。




(これは、悪い夢?)


 反論しようにも、心をずたずたに引き裂かれて言葉が出てこなかった。

 だが、ここにいるよりマシかもしれない。そんな希望もわずかにあった。

 


 こうしてリリアナは未来を捨て、魔力の国エルジオの王妃となった。



 彼女の本当のスキルと、この国に隠された真実は、リリアナの歌によって暴かれることになる――

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