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スキルなし王妃の逆転劇〜婚約破棄され冷酷王と結婚しましたが、問題はそこではありません!!(と、いいつつ執着溺愛されます)  作者: 雪城 冴
二章

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11/20

2-2 背比べ ※3/18休稿します

 振り返ると後ろにオスカーが立っていた。


「ははっ、すみません。楽しくてついつい」


 そう言うユリウスを一瞥し、オスカーは本を次々選んでいく。



(全てお読みになるのかしら……)


 異国の本も、分厚い論文のような本もお構いなしで、博学というのも頷ける。

 そういえば彼は色が白いが、インドアなのだろうかと考えてみる。


(噂の中に『顔色一つ変えずに敵を切り捨てる、恐ろしく腕の絶つ王』というのがあったわね……)


 噂を信じないと決めたばかりだったと思い直し、リリアナは頭を振った。



 オスカーは本棚を向いたまま、背中で声をかけてきた。



「何を読みたいんだ」


「エルジオ国の歴史や、後は、魔力のことを知りたいと思って……思いましたの」

 

 ナターシャに指摘された言葉遣いのことが気になる。彼女の真似をして話せば、王にも失礼にならないだろうか。


 オスカーは長い足で数歩で距離を詰め、リリアナの手を取る。

 導かれるまま奥の本棚に行くと、オスカーは顎で本棚の上段を指し示した。



(ここにあるってことなのね?)


 段々彼のことがつかめてきた。

 口数は少ないが、確かに傷つけたり侮辱されるようなことは一切言われていない。



「ありがとうございます」


 お礼を言ったが、オスカーは立ち去らない。

 まだ何かあるのだろうか。

 リリアナは上目遣いにオスカーをうかがった。


「届かないだろう」


 それもそうだった。天井近くまである本は、190cm近くありそうなオスカーが、思い切り手を伸ばして、ちょうど届くくらいだった。

 160cmちょっとのリリアナではまず届かない。


 木でできたはしごが目にとまり、リリアナはそれをそっと引き寄せた。


「……おかまいなく、こちらを使います。……わ」


「そのドレスで昇るのか。ひっくり返るぞ」


「ですが、陛下のお手を(わずら)わせるわけには……」




「さっさと選べ。俺は暇ではない」


 苛立ったような低い声に、リリアナは慌てて首を伸ばすが、表紙の細かい文字までは見えない。

 下がって確認しようとしたとき、ふわっと身体が浮いた。



(え――?)


 オスカーに、向かい合わせに持ち上げられていた。リリアナは一瞬で身体が熱くなる。


「あ、の……」

 

 震え声で下ろしてもらおうとするが、オスカーは『早く選べ』というように、一段高く持ち上げた。


 ここで抗うとまた叱られるかもしれない。

 混乱しながらも、さっと本のタイトルを確認した。



 オスカーは、リリアナを降ろすと本に手を伸ばす。

 その背中を見つめながら、リリアナは胸を押さえ呼吸を整える。



「……お戯れが過ぎますわ」


「おたわむれ……?」


 オスカーは、リリアナの言葉遣いに怪訝な顔をした。

「……俺がいない時は、ユリウスに……いや、書記に取ってもらえ」

 

 なぜかユリウスの名前を言い直すとき、彼は気まずげに視線を外した。

 まさかそれが、彼の独占欲に絡んでいるかもとはつゆほども思わず、リリアナは小首をかしげる。


「……心得ましたわ」


 しばし二人の間に沈黙が流れる。

その沈黙が気まずいのか、心地よいのか、自分でも分からず、リリアナは視線を彷徨わせた。


 オスカーは眉をひそめて言う。

 


「さっきからなんだ、その話し方は」


 お茶会での貴婦人たちの真似をしているつもりだが、つけ焼き刃ではやはりおかしいのだろうか。



「何を言われたか知らんが、俺の前では今まで通りでいい。落ち着かない」



 うつむいたままのリリアナの顔を、不意にオスカーが覗き込んだ。

 目が合い、どきっとすると、そのまま彼の指がリリアナの頬に触れる。


「……熱いようだが……大丈夫か?」


 一瞬、返事が喉につかえた。

 目を合わせたまま、リリアナは小さく息を吸った。


「だ、大丈夫です……」


 

 オスカーが遠ざかり、本棚の陰に姿が消れても、リリアナの鼓動は高鳴ったままだった。

 胸の奥がとろけるように熱く、落ち着かない。

 彼の腕や手の感触が、まるでまだ自分を包んでいるかのように、身体に残っている。


 近くで感じた体温。

 腕に抱き上げられたときの、頼もしくて硬い胸。そのすべてが鮮明すぎて、思い出すだけで頬が熱を帯びた。


(――あんなふうに触れられたのは、初めて……)



 本来なら恐れ多いはずなのに、怖さよりも戸惑いと、甘い疼きのような感情が胸いっぱいに広がっていく。



 リリアナは頭を振る。


「さぁ、戻って真相を解明しなくちゃ……」





こんにちはいつもお読みくださってありがとうございます。

明日ですが 勝手ながら 休稿させていただきます。

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