87 九狐族の子供を助けてみた
俺がフレーデルの町を目指して歩いていると霧が出てきた。
霧はどんどん濃くなり辺りは真っ白になる。
う~ん、見通しが悪いけど道は一本道だし迷うことなないよね。
そう思って歩いていると誰かの泣き声が聞こえた。
「え~ん、え~ん、おねえちゃ~ん!」
どうやら子供の泣き声のようだ。
俺は泣き声のする方に向かってみる。
街道の横にある森の中から声は聞こえる。
茂みをかき分けながら森の中に入ると男の子が座って泣いていた。
俺はその泣いている子供を見て思わず目を疑う。
膝を抱えるようにして俯いて泣いている男の子の頭には狐の耳のようなものがあった。
この頭の狐の耳のようなものは何だろう?
髪飾りなのかな?
「君、大丈夫?」
とりあえず俺はその男の子に声をかけてみる。
すると男の子は顔を上げて俺を見た。
涙に濡れているとはいえその瞳は金色だった。
しかもさらによく見ると男の子のお尻の部分には狐の尾のようなふさふさとした小さな尻尾がある。
あ! この子供って西大陸に住む異種族の一つだ!
俺は以前この世界に居るという異種族について書かれた本の内容を思い出した。
狐に似た耳と尻尾を持つ異種族は「九狐族」と呼ばれる異種族だ。
「おにいちゃん、だれ?」
「俺は旅人のハリーだよ。君は九狐族かい?」
「うん」
やっぱり九狐族か。
でも何でここで一人で泣いてるんだろう?
「君の名前は?」
「僕は白夜」
「白夜くんか。なんで泣いてたの?」
「ぐすん…おねえちゃんとはぐれちゃったんだ…」
この子供は迷子か。
九狐族は村を作って暮らしてるって本には書いていたな。
近くに九狐族の村があるのかも。
「白夜くんは九狐族の村から来たの?」
「うん」
「それなら俺が村まで送ってあげるよ」
「ホント?」
「うん。だから泣かないで」
白夜は頷くと涙を自分の手で拭いた。
「村の場所って白夜くんは分かる?」
「う~んと、三本の大きな木があるところに村があるの」
三本の大きな木か。
この森の中じゃよく分からないな。
そこで俺は近くにあった比較的大きな木を見つけてその木に登って高い場所から三本の大きな木を見つけることにした。
「ここでちょっと待っててね」
俺はスルスルとその木に登ってみる。
木登りは軍隊の訓練でやったことがあるので俺は木の上部まで登る。
そして辺りを見渡すと少し離れた場所に確かに他の木よりも明らかに大きな三本の木が並んでいるのが見えた。
あそこだな。
俺は方角を確かめてから木を降りた。
「三本の木を見つけたから白夜くんを村まで連れて行ってあげるね」
「うん!」
白夜の手を握り俺は三本の木が見えた方角を目指して歩き始めた。
しばらく歩くと三本の大きな木があった。
そこの近くには森と同化するように木でできた小さな家がいくつか建っている。
どうやらここが「九狐族」の村のようだ。
「白夜!」
その時女の声が聞こえたので俺はそちらを見て思わず息を呑んだ。
そこには白夜と同じ九狐族と思われる女がいる。
頭には白い狐の耳がありお尻にはふさふさとした大きな白い尻尾があった。
胸もお尻は大きくて顔も可愛い。
わあ! 九狐族の女って可愛いなあ!
「おねえちゃん!」
「どこに行ってたのよ! 心配したんだから! お姉ちゃんの後をちゃんとついて来なさいって言ったでしょ?」
「ごめんなさい。おねえちゃん」
「無事で良かったわ。白夜はこの村では貴重な男なんだから何かあったら大変だったわ。ところでこの人間は誰?」
「このおにいちゃんにここまで連れてきてもらったの」
女は金色に輝く瞳で俺を見た。
俺と目が合った瞬間、女が慌てたように視線を俺から外す。
「あ、あなたが白夜を助けてくれたんですね? ありがとうございます」
女は俺に頭を下げた。
「いえ、当然のことをしたまでです」
「とりあえず私の家で飲み物でも飲んで休憩してください」
「え? いいんですか? 俺は人間ですよ?」
異種族について書かれた本では異種族は人間にあまり関わるのが好きではない種族が多いと書いてあった。
「かまいませんよ。あなたは弟の命を救ってくれましたから特別です」
女はニコリと笑みを浮かべる。
だが俺と再び目が合うと慌てて視線を逸らす。
なんで視線を逸らすんだろう。
まあ、いいか。ここは言葉に甘えてお邪魔するか。
九狐族と話せる機会なんて滅多にないもんね。
「俺は旅人のハリーです。あなたのお名前は?」
「私は輝夜です。こちらへどうぞ、ハリーさん」
「はい」
俺は輝夜の家にお邪魔することにした。




