66 特別ランクの会員になってみた
「ここが護衛商会よ」
サティンに案内された建物の入り口には「護衛商会」という看板があった。
「ありがとう、サティン」
「んぅ!」
俺はサティンにチュッと口づけをする。
サティンはポッと顔を赤くした。
「そ、それじゃ、私は自分の絵を売りに行くから!」
「うん。サティンの絵が売れるように願っているよ」
「ハリーも気を付けて旅をしてね」
「うん。サティンも元気でね」
護衛商会の前でサティンとは別れた。
さてと、まずはここで登録しないとなんだよな。
俺は扉を開けて中に入る。
中には何人かの人がいた。
受付と書かれた紙が貼ってあるカウンターに近付いてそこにいた40代くらいの男に声をかけた。
「あの、すみません」
「仕事の依頼探しかい?」
「いえ、護衛の仕事をしたいんで護衛商会に登録したいんですけど…」
「なんだ。入会希望者か。それならこの紙に必要事項を書いてくれ」
男に渡された紙を見るとそこには名前と自分ができる剣術や武術などの種類を書くようになっている。
え~と、俺ができる剣術と武術の種類か。
俺はその紙にローゼン将軍に習った流派の名前を書いていく。
書き終わると俺は受付の人に紙を渡す。
すると俺の記入した紙を見て受付の男が顔色を変えた。
「お、おい! 兄ちゃん! あんたこんなに剣術や武術の流派が使えるのか? これって中央大陸で使われているほとんどの流派が書かれてるが」
「え? はい。俺は中央大陸のジルヴァニカ帝国の出身でそこにいた頃に習ったものです」
別にジルヴァニカ帝国の出身ということは隠す必要はないのでそう説明する。
俺に剣術や武術を教えてくれたローゼン将軍はいくつもの剣術や武術の流派を身につけた人物だったのだ。
それぐらいすごい武人だったからローゼン将軍はジルヴァニカ帝国の将軍に任命されていた。
そのローゼン将軍から教えてもらった俺は生まれ持った天才的運動能力があったのも幸いして今ではローゼン将軍と同じくらいの腕前になっている。
そういえばローゼン将軍はまだアイデ帝国で俺を探してるのかなあ?
俺を捕まえられるとしたらローゼン将軍くらいだもんね。
「兄ちゃん。嘘を書いちゃいけねえよ?」
「え? 全部本当ですよ」
「それなら入会する前に兄ちゃんの腕前を見せてくれよ。もし兄ちゃんがこの紙に書いた通りの人物なら『特別ランク』の会員証を発行してやるから」
「特別ランクって何ですか?」
「護衛商会の会員にはその腕前によってランク分けがされているんだ。特別ランクは一番上のランクでそのランクになれば王族の護衛もできるのさ。どんな偉い相手からの依頼も自由に受けられる」
へえ、そうなんだ。
でも特別ランクで登録されればどんな相手からの依頼も受けられるなら仕事選びに困らないよね。
「分かりました。それでお願いします」
「よし、それなら俺が判定してやる。俺ももとは中央大陸の出身なんだ。腕前にも自信はあるぜ。裏庭で勝負しよう」
「そうだったんですか。いいですよ」
俺は素直にその男について裏庭に向かう。
「じゃあ、兄ちゃんの腕前を見せてもらうぜ」
男が自分の剣をかまえた。
俺も愛剣を抜く。
そして特別ランクの会員になるための試験が開始された。
「まいった! 兄ちゃんの勝ちだ!」
男の敗北宣言に俺は男の喉に突き付けた剣を男から離した。
「次は武術の試験ですか?」
「い、いや、もういい。兄ちゃんの剣術の腕前だけで『特別ランク』に相応しいものだ」
男は首を横に振りながら答える。
「じゃあ、これで試験は終わりですね?」
「ああ。特別ランクの会員証を発行してやるから」
裏庭から建物の中に戻り俺は『特別ランク』の会員証をもらった。
これで護衛の仕事ができるな。
「すみません。仕事の依頼ってもう受けていいんですよね? 今ある護衛の仕事ってありますか?」
「ん? ああ、そこに仕事の依頼の紙が張り出してある。気に入った仕事をしていいぞ」
男に言われた所に紙が貼ってある。
俺は依頼の紙を見た。
え~と、セラートに行く予定だからセラートまでの護衛の仕事ってないかな?
「ちょっと、新人のお兄さん」
紙を見て仕事を探す俺に女が声をかけてきた。
茶髪にすみれ色の瞳で20代半ばくらいの俺と同じく剣士の姿をしている女だ。
「何ですか?」
「さっき窓から裏庭でのお兄さんの腕前を見てたけど、お兄さんの剣術はすごいわね。初仕事を探してるんでしょ?」
「あ、はい。セラートまでの護衛の仕事がないかなって」
「それなら私と一緒にセラートまでのこの仕事をしてみない? 男女の護衛を探してる依頼なの」
え? この女と一緒に仕事?
どんな護衛の仕事なんだろ?




