23 ラゼルに猛獣使いの心得を訊いてみた
「だ、誰!?」
「驚かせてごめんなさい。俺は旅人のハリーって言います」
俺はニコリと笑みを浮かべて挨拶をする。
ラゼルは戸惑った顔をしたが俺に答えてくれる。
「わ、私はラゼルだけど。何でハリーさんはここにいるの? サーカスを見るならあっちに入り口があるわよ」
「ラゼルさんの声が聞こえたんでちょっと覗いて見たんです」
「や、やだ、私ったらそんな大きな声出してたかしら?」
ラゼルは褐色の肌で分かりづらいが恥ずかしそうに顔を赤くした。
「いえ、たまたま俺に聞こえただけですから。それよりラゼルさんは猛獣使いなんでしょ?」
「ええ、そうよ」
「俺は猛獣を近くで見たことなくて見せてくれませんか?」
「え? でも猛獣は危ないから一般人には近くで見せないんだけど……」
「どうしてもダメですか?」
俺はラゼルに悲しそうな顔を向けてラゼルの瞳を見つめる。
神をも魅了する美貌の俺に見つめられてラゼルは慌てて俺から視線を外す。
「…っ! ほ、本当はダメだけど、ハリーさんがどうしても見たいならいいわよ」
「ホントですか!? ありがとうございます! ラゼルさん」
「でもあんまり檻に近付いちゃダメよ」
「はい。分かりました」
ラゼルの許可が出たので俺は猛獣の檻に少し近付く。
「グルルルル」
猛獣が威嚇するように唸り声を上げた。
やっぱり猛獣って近くで見ると迫力あるな。
「猛獣って本当に近くで見ると迫力ありますね」
「そうね。人間を襲うこともある動物だからね」
「ラゼルさんは猛獣使いをやっていて怖くないですか?」
「う~ん、最初は怖かったけど今は平気よ。それに猛獣を怖いって思ってたらその心をこの猛獣たちは見抜いて私の言うことなんか聞かなくなるし」
ラゼルは檻の中の猛獣を見つめる。
「そうなんですか?」
「ええ、そうよ。この猛獣たちには私が自分より強い者だってことを調教して教えてあるの。それが猛獣使いにとっては大事なことなのよ」
「じゃあ、この猛獣たちにとってはラゼルさんは『ご主人様』ってことですか?」
「まあ、そうね。この子たちにとっては私はご主人様でしょうね」
ラゼルはニコリと笑って俺を見た。
なるほどね。猛獣は自分より強い者に従うか。
「ラゼルさんは若い女性なのに猛獣たちを支配してるなんてすごいですね」
俺がニコリと満面の笑みをラゼルに向けると再び慌てたようにラゼルは俺から視線を外す。
「そ、それほどでもないわよ」
「そういえばさっき男の人に何で怒ってたんですか?」
「ああ、それはこの子たちの飲み水をちゃんと新しいものにしてなかったからよ」
「飲み水ですか?」
「ええ、動物は繊細でね。古い飲み水を飲んだだけでも体調を壊すこともあるの。猛獣の世話をきちんとできることが猛獣使いへの第一歩になるのよ」
「猛獣使いって大変ですね。俺みたいな人間も頑張れば猛獣使いになれるかなあ」
「ふふ、誰でもコツさえ掴めば猛獣使いになれるわ。さっき言った猛獣使いの心得さえ覚えればね」
「猛獣への調教ですね?」
「そうよ」
ラゼルは俺に視線を戻してニコリと微笑む。
ラゼルの笑顔って可愛いな。
俺より年上みたいだけど。
「ラゼルさんのサーカスの出番はいつですか?」
「ん? 次は午後になるかな」
「そうなんですか。じゃあ、まだ調教するのに時間はありますよね」
「え?……んんぅ!?」
俺はラゼルの身体を抱き締めて口づけをした。
ラゼルが驚いている間に俺の舌はラゼルの口内に侵入する。
ラゼルは俺から逃れようとするが俺はしっかりとラゼルの頭を固定して口づけを深めた。
「んふぅ……あふぅん」
抵抗していたラゼルの身体から力が抜けてラゼルが甘い吐息をつく。
「ラゼル。俺にもっと猛獣の調教の仕方を教えてくれないかな。ラゼルの身体を使って」
「…っ!な、なにを…むふぅん」
俺はもう一度口づけをしてからラゼルの耳元で甘い声で囁く。
「どうしてもダメかな? ラゼル」
「…っ! し、仕方ないわね……そ、それなら、こ、こっちのテントで……教えてあげるわ…」
「ありがとう、ラゼル。猛獣使いになれる素質が俺にあるかラゼルの身体で採点してね」
「…っ! え、ええ……」
ラゼルは首まで赤くして小さく返事をする。
俺はラゼルと近くにあった小さなテントの中に入った。




