2 酔ったユリアの誘いにのってみた
深夜とはいえジルヴァニカ帝国の皇都リリアンには灯りが多くついている。
リリアンには酒場もあれば娼館などの歓楽街もある。
治安は他の国の王都よりはかなりマシだと言われていた。
俺は皇帝として他国に行ったことはあるが自分の足で他国の王都を歩いたことはない。
なのでそう評価されていても本当にこのリリアンが他の国よりマシなのかはよく分からない。
とりあえず朝になったら皇都への人の出入りを管理している門が開くのでそれまでどこかで時間を潰す必要がある。
俺はどこかの酒場にでも入ろうかと歩いていた。
すると前方からフラフラとした足取りをした女性が歩いてきた。
こんな真夜中に女がひとりで歩いているなんて不用心だな。
それにしても足元がふらついているけど体調でも悪いのかな。
俺がそんなことを考えながらその女を見ているとその女はぶつぶつと何か言っている。
「もう飲めないったらあ~」
その声は舌足らずな声だ。どうやらその女は酔っ払っているようだ。
そして女は俺に気付いて近付いてきた。
「あら~そこのお兄さ~ん! ずいぶんと美形じゃな~い! マジ、私好みぃ~!」
「こんばんは。お姉さん。お酒を飲んでらしたんですか?」
無視するのも悪いので俺はその女に答える。
近くで見るとその女の年齢は俺より少し年上くらい。長い黒髪に茶の瞳のとても大きな胸をした女だ。
お酒を飲んでるせいか女は赤い顔をしている。
「そうよ~たくさんお酒飲んじゃったあ~、私はユリアって言うけどお兄さんのお名前は~?」
「ユリアさんですか。俺はハリーって言います」
俺はあらかじめ用意していた偽名を名乗る。
本名がハリードルフ・ザカルド・ジルヴァニカだからそれを縮めてハリー・カルドと名乗ることにした。
その偽名で通行証や身分証明書を作ってあるのでどこに旅をしても問題ない。
「ハリーね~、いい名前だわ~、ねえ、ハリー、ユリアといいことしない?」
「いいことですか?」
ユリアとはここで会うのが初対面。初対面で出会って「いいことしよ」と言われても俺はそれが何か分からない。
「そうよ~、いいことよ~、ほら、こういうこと~」
ニコリと笑みを浮かべたユリアは俺の手を取り自分の胸を触らせる。
その柔らかい感触に俺の欲望が一気に高まった。
いいことってそういうことか。
ユリアは俺とヤリたいんだね。
意味を理解した俺はユリアに笑みを返す。
するとユリアの顔がさらに赤くなったような気がする。
「いいですよ、ユリアさん。俺もユリアさんといいことしたいです。どこか宿を取りますか?」
「あら~、ハリーは初心者なのね。宿なんか取ったらお金かかるじゃない。こっちで十分よ」
「え? わああっ!」
ガシッと腕を掴まれた俺はユリアに人気のない路地裏に連れ込まれる。
路地裏に俺を連れ込んだユリアは俺に口づけしてきた。
う~ん、庶民ってこういうところでも性交しちゃうのかな。
だったら何ごとも経験だよね。
そう思った俺はユリアの身体を抱き締めて路地裏でユリアといいことをしてみた。
その体験は俺にとって新鮮そのものだった。皇帝だったら外でヤルなんて考えられない。
小一時間ほどユリアと楽しんだ俺はユリアにチュッと口づけをする。
「ユリア。楽しかったよ、ありがとう」
「ハリーもとても良かったわよ~、はあ、私、疲れちゃったからここで寝るわ……ぐぅ……」
ユリアは酔っていたのと俺との性交で疲れたのかその路地裏で寝てしまった。
う~ん、ユリアが起きるまでここにいるわけにはいかないしこのままユリアとはさよならするか。
俺は恋人を求めて皇帝を辞めたわけではない。女とヤレればそれでいいのだ。
路地裏から出た俺は歩きながら考える。
外でヤルのも気持ちがいいけど皇都の風紀が乱れるのも問題だよな。
ああいうことをする男女を取り締まるように警備を強化した方がいいだろうか。
そこでハッと気づく。
そうだ、俺は皇帝を辞めたんだから都の警備について俺が考えることはもうないんだった。
う~ん、皇帝の時のクセが出ちゃった。
気を取り直して空を見るとまだ夜明けには時間がある。
俺は時間を潰すために近くの酒場に入った。




