12 自分の評判を聞いてみた
チュン、チュンと鳴く小鳥の声が聞こえる。
「う~ん、もう朝か……」
俺は目覚めた。
「ふわあ~、さて今日の会議の議題は何だっけ……ん?」
そこで俺は自分が寝ている場所を見て思い出した。
あ、そうだった。
俺は皇帝を辞めたから会議に出る必要無いんだった。
いけない、いけない、なんか平民になったってことをすぐ忘れるなあ。
そして昨夜のことを思い出して自分の寝ていたベッドを見ると隣りにはエリスの姿はない。
あれ? エリスはどこに行ったんだろう。
もう一つのベッドにはまだエリスのおばあさんが寝ていた。
とりあえず俺は自分の身支度を整えた。
そして部屋を出るとエリスが調理場にいる。
「あ、ハリーさん。おはようございます。今、朝食を作ってますから」
「おはよう、エリス」
俺はエリスに近付いてチュッとエリスの唇に軽く口づけをした。
「っ!」
エリスの顔は真っ赤になった。
そんなエリスの耳元で甘い声で囁く。
「昨日はありがとう、エリス。エリスの身体とても綺麗だったよ。身体は大丈夫?」
「っ! は、はい、大丈夫です! あ、あの!もう朝食できますから椅子に座っててください!」
エリスは首まで真っ赤にしながらしながら俺に言う。
ふふ、エリスって可愛いな。
俺はおとなしくエリスに言われた通りに椅子に座った。
こんなのんびりした朝を迎えられるなんて久しぶりかも。
皇帝の暮らしは時間が厳しく決められているからな。
皇帝の行動は全てが時間で決められている。
起床時間、執務時間、食事時間、謁見時間など俺の自由になる時間はほとんどないのだ。
エリスの様子を見てみると杖はついてるけどちゃんと歩けるみたいだ。
これなら俺がいなくても大丈夫だね。
何しろ、俺は門で働く女がローゼン将軍に手紙を渡すまでになるべくならリリアンから遠ざかりたい。
だっていろんな女とまだまだ俺はヤリたいんだからこんな場所でローゼン将軍に捕まる訳にはいかない。
エリスとエリスのおばあさんと一緒に俺は朝食を食べる。
そして食事が終わると俺は旅支度を整えた。
エリスとエリスのおばあさんが小屋の前で見送ってくれる。
「森を出て少し行くとバラバっていう町がありますから気をつけて旅をしてください」
「ありがとう、エリス。エリスも元気でね。おばあさん! おばあさんも元気でね!」
俺はエリスのおばあさんにも大きな声で別れの挨拶をする。
「ん? ああ、もうお腹いっぱいじゃ」
う~ん、ちょっとこのおばあさんのことは心配だけど、まあ、いいや。
エリスが一緒にいれば大丈夫だろうし。
俺はエリスと別れてバラバの町を目指して森の道を歩く。
しばらく歩くと森を抜けて道も少し広くなりお昼近くにバラバの町に着いた。
バラバの町はそれほど大きくはないがそれなりにいろんな施設も整っている町のようだ。
「とりあえずお腹空いたから何か食べるか」
俺は食事のできるお店に入る。
お昼時なので店は混んでいたが俺は席を見つけて食事を注文した。
やれやれ、歩いて旅するとジルヴァニカ帝国は広いって実感するなあ。
いつも移動は馬車や馬だったし。
すると隣のテーブルに座っていた二人の男の会話が聞こえた。
「そういえば聞いたか? 皇帝陛下が急病になったらしいぞ」
「え? 本当か?」
「ああ、今朝俺の兄貴がリリアンから馬で帰って来て聞いたんだ。リリアンでは皇帝陛下の誕生日の式典は全て中止になったそうだ」
「へえ、それは大変だな。今の皇帝陛下が即位してからジルヴァニカ帝国はさらにいい国になったから俺は皇帝陛下のことを尊敬してたのに」
「俺もそうさ。最初に皇帝陛下が8歳で即位したって聞いた時は心配したが今の生活はザカルド6世様のおかげだって感謝してるんだ」
「そうだな。本当に今のザカルド6世様は賢帝って呼ぶに相応しい立派な御方だ」
「ああ、ジルヴァニカ帝国の誇りだよな」
ふ~ん、俺が賢帝って呼ばれてるってセルシオやラッセンド宰相から聞いてたけど本当だったんだな。
まあ、もう俺には関係ないけど。
でも俺のことは急病扱いにしたってことか。ってことはその病気療養中に見せかけてるうちに俺を連れ戻そうって考えか。
俺は店の者が運んで来た料理を食べながら思う。
絶対にローゼン将軍に捕まってたまるか。
皇帝に戻る気なんてない。
俺はまだまだ女とヤリたいんだから!




