1 俺は皇帝を辞めてみた
俺はこの日のために着々と準備をしてきた。
これから先に必要な資金も密かに金を取り扱う商会に預けてあるし旅支度も整えてある。
あとは宰相のラッセンド宛に手紙を書くだけだ。
俺はペンを取り皇帝家の紋章入りの紙に手紙を書き始めた。
『ラッセンド宰相へ。俺は本日をもってジルヴァニカ帝国の皇帝を辞める。後のことは弟のセルシオとローゼン将軍と一緒にやってくれ。よろしく。ハリードルフ・ザカルド・ジルヴァニカ』
「これでよし」
俺はペンを置いて手紙を自分の部屋のテーブルに置く。
そして荷物と愛用の剣を持ち寝室にある皇帝しか知らない隠し通路を通って皇宮の外に出た。
隠し通路の出口を出て後ろにある大きな宮殿を見る。
時間は既に深夜だ。
「これで俺も自由だな。さあ、女とヤリまくるか」
俺はそう呟くと皇都の街の中を歩き始めた。
そして今までの俺の人生を振り返る。
建国3000年を誇る中央大陸最古にして最大の帝国ジルヴァニカ帝国。
父の先代皇帝が急な病で亡くなり皇太子だった俺は僅か8歳で「ザカルド6世」として皇帝に即位した。
周囲の大人たちは8歳の子供に皇帝の仕事などできるだろうかと心配したようだが俺は幼い頃から賢くて勉学などは一度聞けば全て覚えた。
その頭脳で皇帝になってからは政治を自ら動かし剣術や武術にも天才的能力を俺は発揮する。
元々、大国であるジルヴァニカ帝国をさらに発展させた俺は即位して3年も経つと「賢帝」と呼ばれ始めた。
これが俺の後々の悩みになる。
そして俺はジュリエッタという公爵令嬢と婚約した。
ジュリエッタは俺の二歳年下。身分は申し分ないが俺の好みの女ではなかった。
なので俺は舞踏会が開かれる度に美しい女性たちとヤリたいと思ってもジュリエッタという婚約者がいるので他の女に手が出せない状態が続く。
皇帝だからとどこかの国にある後宮を持つことはこの由緒正しきお堅いジルヴァニカ帝国ではありえないこと。皇帝も妃は一人と決められている。
そして「賢帝」と呼ばれる俺は国民のお手本になるような皇帝であることが求められた。
頭脳明晰で政治的手腕に長け剣術や武術も一流の腕前でその容姿は神をも魅了するほどの美貌というのが俺の皇帝としての評価だ。
だが俺はずっと気に入った女たちとヤリまくりたいという欲望を抱き続けていた。
女を抱いたことはある。しかしそれはあくまで皇帝として必要な知識のひとつとして臣下から与えられた女だった。
俺の欲望はそんなものではおさまらない。
明日は俺の18歳の誕生日。
皇帝に即位して10年。
俺は皇帝を辞めて自由気ままに旅をしながら気に入った女がいたらその女たちとヤリまくろうと決めた。
幸いにもこの国では皇帝は公の場所では黒いベールをつけて素顔を隠すのが慣例だったので俺の姿を直に見たことのある国民はほとんどいない。
だから俺が街を歩いていても誰も気付かないだろう。
神をも魅了するほどの美貌だと言われてるがそれは俺の素顔を見ることができる一部の人間から広まった話に過ぎない。
それにこの世界は広い。
ジルヴァニカ帝国は世界最大の帝国ではあるが他にも世界にはいろんな国々がある。
それに国こそ持たないが人間以外の異種族も僅かに存在する。
俺はこれからどんな女とヤレるか楽しみだった。




