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第1章 守護者 第7話


上古人(じょうこじん)の言葉に、王国の者たちは驚いていた。

東の大地に残された神聖王の血筋は、もはや、我がクレスファルス王国とバレリ王国だけだったからだ。


「私はゼナル。この者はフィディス。我らはラヴェン。人からは上古人と呼ばれている」


「俺の名はフレデリク。旅人です」

彼はわずかに頭を下げた。

上古人のことを知らなかった。東の大地にいる種族だと聞いていた。


「君はどこの王家の者なのだ?」

王は、ラヴェンの言葉を疑うことなく、フレデリクに尋ねた。


「フレデリクよ、そなたが持つ指輪を見せてもらえぬか?」

ゼナルが言った。


何故、指輪のことを知っている?

こいつらは何者だ? 人間じゃないことは確かだ。


フレデリクは服の下に首から提げている鎖を取り出した。鎖の先には指輪が付いている。

それを上古人に手渡した。


ゼナルは指輪を観察したあと、王と王女に見せ、フレデリクに返した。

「西の大地に散った六人の神聖王のことは詳しくないが、その紋章はその一人であろう」


「そなた、何故その指輪をはめていない?」

ゼナルが尋ねた。


「もう10年以上前、俺の国アグルスは滅び、俺だけが生き残りました」

「この指輪は目立ち過ぎるから隠しています」


「国が滅んでも、そなたが在ることが光明(こうみょう)

ゼナルは言った。

フィディスがゆっくりとフレデリクに近づき、右手を彼の頭にかざした。

「神々の使徒、守護者フレデリクに、栄えあらんことを」


フレデリクは何かを感じ取り、立ち尽くしていた。


クレスティアは上古人から放たれた魔力を捉えたが、どんな魔法か全く分からない。

予見者を一瞥すると、彼は小さく首を横に振った。


二人の上古人が腰を下ろし、続いて、王と王女も向かいに座った。

フレデリクは、他の者たちの近くまで下がった。


「我らがこの地に来た理由は、闇の使徒を倒すため。もう一つはクレスファルスの王女を知るため」

ゼナルが言った。


「3か月ほど前から闇の王が動き始めた。闇の国から次々と幽鬼が放たれた。我らは幽鬼を追いつつ、その理由を探ってきた」


「闇の王は、クレスファルスの王女を亡き者にしたいようだ」


王国の者たちは絶句した。


「話を過去に戻す」

「約200年前、我らは闇との大戦で勝利した。ただし、多くの傷跡を残した。その一つが、共に戦ったクレスファルス王家への呪いだ。我らはこれを防ぐことができなかった」

「そなたらも知る通り、王家の血を引く女人は18年を超えて生きられない」


「だが、それだけではなかった。呪いを防ごうとした我らの魔力が闇の力と融け合った。それが王家の呪いだった。その証に、以来、王家には数世代に一人、魔法使いが生まれている」


「先ほどは失礼した。そなたを知って明白となった」

ゼナルはクレスティアに言った。


「王女の内にある光と闇が融合した呪い、すなわち魔力は強大だ。闇の王を滅ぼすほどに。闇の王はこれを恐れている。王女が18歳になるまで待てないようだ。つまり、その魔力を手に入れたいのだろう」

「その魔力は光と闇のいずれにも属していない。残念ながら、我らはその魔力を扱う力を持っておらぬ」


「一方で、我らラヴェンに異変が起きている。我らが持つ力に(かげ)りが見えてきた。それは闇の王の身にも起きている。それが此度(こたび)の奴の動きにつながっている」


「闇の王は、さらに幽鬼を送り込んでこよう。既に、暗黒の騎士も闇の国(ヴァーラン)を出立したと聞いた。我らは闇の使徒を迎え撃つことでしか王女の助けになれぬ」


「ゼナル様、王家の呪いをなくす手立てはないのですか?」

レセド王は尋ねた。


「西の大賢者と呼ばれる者に助力を求めることが希望となろう」

「光にも闇にも縛られない根源の魔法を極めた者と聞き及んでいる。その者なら王女から呪いを除することだろう」


「その大賢者は、どこにいるのですか?」

レセド王は尋ねた。

「西の大地にいるとしか今は言えないが、調べてみよう」

ゼナルは言った。

「どうか、お願いいたします」


「さて、最初に王が問うたことに答えよう」

「一昨日の夜、闇の王が魔力をもって幽鬼を王女に差し向けた時と同じく、神々の力が(ふる)われた。主神ルーヌンは守護者を遣わし、闇から王女を救った」

「古代から続く、光と闇の戦いに神々が関わることはない。つまり、王女の生死は勝敗を左右しない。王女の死を望まなかった理由が別にあるのだろう。我らにも分からない。主神が大地に関与した例は稀なのだ」


「王よ、此度(こたび)は200年前の大戦とは違う。闇の王の狙いは王女だ」


「そなたらでよく話し合うと良い。我らは助力を惜しまない。ラヴェンは闇に抗うのみ」


◇ ◇ ◇


上古人の二人は城に一泊し、翌朝、再び会合が持たれることになった。


王国の者たちは、迎賓の間から王の執務室の隣にある会議室に場所を移した。ただし、従騎士(じゅうきし)と執事たちは席を外させた。


フレデリクは居心地が悪かった。

この国の情勢を全く知らない、よそ者だったからだ。

肝心の、西の大賢者のことも何も知らなかった。少しばかり噂を耳にした程度だ。

しかし、王女が18歳までしか生きられないとは。

歳を知らないが、あと数年ではないか。

結論は明らかだ。


 ◇ ◇ ◇


「バレリ王国まで約3か月でしょう。そこから西の大地へは海路となりますが、その海は常に荒れていて、運が良くて2週間、たどり着けないこともあると聞いています」

「西の大地に着けば、フレデリクが頼りだが、西の大賢者の居場所はまだ分からない」

「上古人から良い便りが来なければ、自分たちで調べるしかありませんな」


「あとは、誰を同行させるかを決めねばなりません」


「陛下、私が同行いたします。東の大地を案内できるのは我ら影士(えいし)以外になく、また、長い旅に必要な知恵や技も持っております。無論、タイダルが私の代わりとなりましょう」

影士の長ヘンダールが言った。


「上古人が闇の使徒を引き受けてくれたとしても、何らかの敵から守る戦力が必要ですな。とは言え、護衛を何人も同行させる大所帯では移動が遅くなる。ヘンダール公が行かれるなら、戦力はあと二人か三人というところかの」

守りの長フェナンが言った。


「まずはグレイスだな。彼女の剣術なら申し分ない。姫様のお世話もできよう。さすがに侍女を同行させる訳にはいかん」

ヘンダールが言った。


「私からもお願いします。もし連れて行かないと言ったら、彼女は発狂するでしょう」

クレスティアが苦い顔をして言うと、フレデリク以外、全員が笑った。


「あとは、弓使いが欲しいところか。誰か・・・」


「弓なら私がやれる」

ヘンダールが言った。

「それよりも」

「フレデリク、我々は君が同行してくれるものと思い込んでおるが、君の意志はいかがかな?」


全員の視線が集まったフレデリクには複雑な表情が浮かんでいた。



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