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第2章 遥かなる旅 第3話 暗黒の騎士


「来たな」

ヘンダールは呟いた。

「姫様、隠れてください」

武装したオークが15人ほど、近づいて来た。

その後ろには、二つの巨大な人影が見えた。

ヘンダールとフレデリクは近くの木を盾にして、矢をつがえ、弓を引き絞った。

数本の矢が飛んできたが、ヘンダールとフレデリクから逸れた。

二人が放った矢は弓を持ったオークに刺さる。

続けて次の矢を放つ。

五人ほど倒したところで、敵の集団が目前に迫った。

幽鬼ヴァルシフも近づいて来る。


二人は弓を置き、剣を手にした。

「フレデリク、頼む!」

フレデリクは走った。

行く手にいるオークを剣で()ぎ払い、二人のヴァルシフに向う。

ヘンダールは多数のオークの前に立ちはだかった。

「グレイス!」

「承知!」

グレイスはクレスティアを守る位置を取りつつ、ヘンダールの間合いから抜け出る敵を切り伏せていく。


オークとやり合うグレイスの死角から、別のオークが迫った。

とっさにクレスティアは前に出た。

そのオークに人差し指を向けた途端、(まばゆ)い閃光と同時に()ぜた音がした。

オークが叫び、その頭部は焼け焦げていた。

グレイスは驚き、クレスティアとオークを見た。

クレスティアは唖然としており、オークは地に伏した。

「姫様、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫。私も戦えそうね」

「はい。でも、ご無理はなさらないでください」

グレイスは次の敵に向って剣を構えた。


クレスティアは右手の腕輪に触れた。

私の魔法とは思えないわ。

彼女は周りの敵を見た。

その表情には(おび)えが消えつつあった。


フレデリクは二人のヴァルシフを倒し終えた。

振り返ると、ヘンダールとグレイスの周りのオークは残り少なくなっていた。

おや?まさかクレスティアも戦いに加わっている?

そう思った矢先、彼女の掌の先から燃え盛る炎が走った。

彼は驚いた。

だが、呆けている場合ではなかった。


北の方を見ると、影士(えいし)たちが多数のオークに押されていた。

近くにヴァルシフがいた。

さらにその先では、一角獣に乗った三人の上古人(じょうこじん)が多数の敵を相手に戦っていた。

上古人から放たれる青白い光の帯がオークを薙ぎ倒し、ヴァルシフを叩き伏せている。

黒い二角獣を駆る黒い大きな人影は、上古人の攻撃にひるむことなく、彼らに向って赤い光を放っていた。

あれが暗黒の騎士か。


「ヘンダールさん、俺は影士の支援に行きます」

影士の部隊はヴァルシフの闇の魔力に苦しんでいた。

彼らは精神に異常をきたし、思うように体が動かず、多数のオークの攻撃から身を守るのに精一杯だった。

「皆さんはヴァルシフから離れて! ヘンダールさんがいる方へ下がってください」

「フレデリク殿、助かります」

フレデリクはヴァルシフに向った。


上古人との戦いの場から抜け出たヴァルシフが、クレスティアのいる方へ向かっていた。

これを目に留めた影士の一人が阻止しようとヴァルシフに向った。

「オルフ、待て!」

仲間が声をかけたが、その影士は止まらなかった。

しかし、闇の魔力に抗えず、思うように戦えない影士はヴァルシフの巨大な戦斧の攻撃に(さら)された。

やがて、影士は胸に一撃を受けて倒れた。

「オルフ!」

仲間が叫んだ。

ヴァルシフは再び歩き出し、王女に向った。


しまった!

フレデリクは三人目のヴァルシフを倒し、王女を狙うヴァルシフへ走った。


影士たちは倒れた仲間の許へ行こうとしたが、さらにヴァルシフと多数のオークが現れ、近寄れなかった。

彼らはオークを倒しながら、ヘンダールがいる方へ後退した。


フレデリクは四人目のヴァルシフを倒し、周りを見た。

敵の集団は三分の一まで減っていたが、戦いの場はクレスティアがいる場所に近づいていた。

影士たちはヘンダールと合流していた。

フレデリクは、王女を狙おうとする次のヴァルシフに向った。


上古人(ラヴェン)と暗黒の騎士ダルクドによる強大な魔力の応酬は、周りの草木を灰にし、地面をえぐり、オークを巻き込んでいた。

ゼナルとフィディスの二人がダルクドに相対していたが、ダルクドに大きな痛手を負わすに至っていなかった。

アルマスは、ヴァルシフとオークを葬ることに注力し、ほとんどのヴァルシフを倒し終えていた。


突然、暗黒の騎士(ダルクド)が凄まじい速さで二角獣を走らせ、上古人たちから抜け出た。

ゼナルとフィディスはすぐにあとを追った。

ダルクドはクレスティアに迫っていた。

そして、赤い光を放った。

これを予期していたゼナルもほぼ同時に光を放ち、赤い光の軌道を逸らそうとした。

二つの光が衝突したとき、赤い光は拡散し、その一部がクレスティアを襲った。

クレスティアはとっさに両手を前に出したが、赤い光を全身に受けた。

彼女は倒れた。

「姫様!!」

グレイスは絶叫し、王女に駆け寄った。


暗黒の騎士の姿はフレデリクの眼に焼き付いた。

上古人と同様に、人よりも一回り大きい体躯、その全身を覆う黒い甲冑、赤く鈍い光をまとった巨大な剣、そして、狂気を宿す赤く光る眼孔。


ダルクドは、(きびす)を返して、離れていった。

それに応じるように、わずかに生き残ったヴァルシフとオークも戦いの場から離脱した。

ふと、黒い二角獣が足を止めた。

ダルクドは地に横たわった者を一瞥すると、再び走り去った。


上古人たちは敵の後を追わず、去るのを見届けた。


「姫様!」

グレイスが呼びかけたが、反応はなかった。息はあった。

ヘンダールとフレデリクが駆け寄り、影士たちは心配そうに見守った。

上古人たちがクレスティアの側に来た。

フィディスが王女に掌をかざすと、淡い緑色の光が王女の全身を覆った。

その治療はしばらく続いた。


「人にとっては大きな負荷だった。すぐには意識が戻らぬ」

フィディスは言った。

「姫様は大丈夫なのですか?」

グレイスは必死の形相で上古人に尋ねた。

「身体は大事ない。明日か明後日には目覚めよう。ただ、精神への波及は(わらわ)にも分からぬ」

ヘンダールは、上古人にも分からないとの言葉に大きな不安を覚えた。


「フィディス様、王女殿下を治療していただき、感謝申し上げる」

「また、此度(こたび)も、闇の陣営から我らを守っていただき、深く感謝いたします」

ヘンダールは頭を下げた。

「フレデリク、荷馬車に寝床を。グレイス、姫様の看病を頼む」


「我らは、これで失礼する」

「近いうちに妾は王女に会いに来よう」

「神々の加護があらんことを」

上古人たちは一角獣に乗って、どこかへ去って行った。


「オルフ!何をする!」

ヴァルシフに倒された影士が、仲間に襲いかかり、首を絞めようとしていた。

「止めろ!」

もう一人の影士が腕を引き離そうとしたが、離れない。

他の影士たちとヘンダールが駆けつけた。

オルフと呼ばれた影士は、明らかに胸に致命傷を負っていた。

「あいつの目を見ろ」

ヘンダールは言った。

「闇の種族は死者を生き返らせると聞いたことがある」

「まさか!」

「気の毒だが、もはや闇の魔物だ」

ヘンダールは屍人の首をはねた。


 ◇ ◇ ◇


影士たちは、亡くなった仲間を丁重に葬ると、王女一行と共に西へ移動した。

既に真夜中を過ぎていたが、夜を徹して、次の町へ向かった。

誰もが疲れ切っていたが、影士たちが交代で馬を操った。


荷馬車の中で()すクレスティアは発熱していた。

グレイスはクレスティアの側で眠っている。

ヘンダールは壁を背に座ったまま眠っていた。

フレデリクは起きていた。

今夜の出来事が彼の感情を乱しているせいで眠気が来なかった。


彼はクレスティアを見やった。


俺が守護者だと?

笑わせてくれる・・・



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