◆第8話「裏切りの銀鎖」
翌朝、私たちは押収した木箱を開封した。底に刻まれた銀鎖紋章が冷たい光を返す。
「これは……雷封鎖の結社」
雷雅が眉を潜めた瞬間、護衛の傭兵マーゴラが刃を突きつけた。
「火薬の神子、雷の継承者。大陸を燃やす芽は今摘む」
銀鎖術が雷雅の背痕を締め上げ、彼は呻き声を噛み殺す。
私は駆け寄ろうとするが、足首に鎖が絡みつき、冷鉄の冷たさで血流が凍る。
「雷雅!」
彼は私の名を呼ぼうとして喉をつまらせ、なお拳を握る。
朔月は反射的に斬りかかるが、鎖が空間ごと縛り剣を奪った。
キティアは氷壁を張るが、銀鎖の符が氷を灰に変えた。
「呪雷は祓うもの。解放など許さぬ」
マーゴラの眼光が冷ややかに私を射る。
私の脳裏に炎が走る。恐怖でも怒りでもない。――奪わせない。
火輪が脈動し、鎖の刻印へ火粉を注ぎ込む。金属が赤熱し、煙が上がる。
「熱くても……私は火だから」
鎖が緩み、雷雅が拳を振り抜いた。鼓面の雷鳴が逆流し鎖術を粉砕。
マーゴラの瞳が揺れ、影のように後退。
「封印守は時を待つ。お前たちは災厄を招く」
残響だけを残して姿を消した。
私は膝を折り、痺れる足で雷雅へ走る。互いの腕が絡まり、体重を支え合う。
「大丈夫?」
「平気。……お前が熱いから」
額が触れ、汗と涙と微かな鉄の匂いが混ざる。
朔月が咳払い。
「お熱いのは結構だけど、俺にも抱かせて?」
尻尾で私の腰を軽く叩き、キティアは涼しい目で「解氷手当が必要」と氷菓を差し出す。
私は氷菓の冷たさに肩を震わせながら笑った。
鎖は砕けても、不安は燻る。だが胸の火と雷はそれを凌ぐ熱で溶かし合う――そんな確信があった。
(第8話 了)