表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救う?それともモテ過ぎて滅びる?-ただ今イケメン渋滞中!-  作者: NOVENG MUSiQ
第2章 恋と封印と、終末のカウントダウン
15/36

◆第15話「恋騒ぐ混浴合宿と、湯けむりの罠」

 翌朝、銀夜は“戦術浴場”と呼ばれる薄桃(うすもも)の湯へ私たちを案内した。龍の火口から湧くと伝わるこの湯は、軍勢の傷を塞ぎ恋の病を悪化させる――そんな伝承を思い出し、頬を叩く。


 (ひのき)桃花蜜(とうかみつ)甘香(かんこう)がむせ返るほど濃い。私は(すそ)を絡げ、火輪を抑えて足から浸かった。湯が旅埃(たびぼこり)と不安を溶かし、雷雅の稲妻が放電して小蒸気柱を上げる。朔月は尻尾を揺らし、キティアは湯気を凍らせ氷花を浮かべた。


 銀夜が提案する。「連携も恋も温度で鍛える。戦術混浴訓練だ」

 私は赤面しつつ頷く。湯気越しに肩が触れ、稲妻の(しび)れと猫科の体温が混ざる。五感は過積載(かせきさい)眩暈(めまい)がするのに、もっと熱を欲した。


 湯底で金属音。白夜機関の罠札(まふだ)が起動し、湯が沸騰と氷結を同時に起こす。鎖符(さふ)が雷雅の背痕(はいこん)を締め付け、稲妻が天井を裂く。私は彼の背に腕を回し火輪で鎖を赤熱、銀夜が月鋼刀で断ち、朔月が旋風を起こし、キティアが冷気で爆発を封じた。


 「離れない。二度目の人生は君の隣で燃えるためにある」私の(ささや)きに、雷雅は震えながら微笑む。

 罠残骸が燃え尽きる頃、湯・汗・血・火薬の匂いが混ざり、一体感が生まれた。


 湯屋を出ると封印時計は七刻目。終末は近いが怖くない。肌が触れ合い名前を呼び合う仲間がいるからだ。


 屋根から(したた)湯雫(ゆしずく)が石畳を撃ち、湯気立つ屋根は巨大な心臓のように蒸気を吐く。止まれば都は(こご)え、進めば世界は再び熱を得る。――私は静かに誓う。次の罠でも誰も失わない、と。遠雷が応え、夜空は微かに焔色へ染まった。


(第15話 了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ