◆第11話「黒炎の大蛇と暁光の刃」
封印時計が二刻目を打ち終えた瞬間、地鳴りと共に黒炎大蛇が地底から出現。《うねり》だけで空気が煤けた。
「皆、連携を!」
私の号令で虎啼 朔月が砂を蹴り、キティアが氷楔を射出。
雷雅は背の雷鼓を叩き、雷鳴を纏った拳で大蛇の顎を押し返す。
私は内側から高まる熱量を制御、〈焔命合成式〉で火薬草と雷素子を融合。
「紅電霊爆――行くよ!」
巨大な火矢へ稲妻を走らせ、朔月の旋刃が風穴を作る。氷楔が芯温を奪い、矢は一点に収束。
ずれた呼吸、汗の塩味。だが私と雷雅の視線が合った瞬間、胸の鼓動が同じ音階を打った。
「射撃!」
閃光。
大蛇の鱗が爆散し、黒炎は虹色の雨に変わって降る。
反動で私は膝をつき、息を切らす。そこへ雷雅が駆け寄り、お姫さま抱っこ――。
「うわ! 降ろして!」
「駄目。倒れそうだ」
腕の中、彼の体温と稲妻の微振動が伝わり、胸が苦しいほど高鳴った。
黒炎が晴れ、暁光が遺跡の天窓から差す。
光の中で彼は真剣な声を落とす。
「もう…記憶全部は戻らなくてもいい。……今の蓮火を守る」
「なら私も、今の雷雅が欲しい」
揺れる金瞳と朱瞳。唇が触れる寸前、朔月の歓声。
「勝利のキスは俺にも――ぎゃっ!」
キティアの氷の羽が朔月の頭に刺さり、私たちは吹き出して抱き合った。
(第11話 了)