ミア 『新しいお店と僕と君』
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります
手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています
関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております
小説は毎朝6時に投稿いたします
ぜひ、ご覧下さい♡
Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい
hhtps://www.instagram.com/iroit0
また、新しいお店が出来るんだ。
そんな事を思いながら俺は、今日も工事中の店の前を自転車で駆け抜ける
初夏を感じる季節は、もうすでに暑く〈夏〉と言ってもいいのではないだろうか
このまま夏へ突入していくのかと思うと、先が思い知らされる
時間に追われる俺は、自転車を漕ぐ手に力を入れ、体を火照らす
眩しい太陽に照らされて、颯爽と駆け抜けていくが、そろそろ帽子も必須になる頃だ
やっとの思いで駅に着いた俺は、急いで愛車を置き電車へと駆け込んだ
『珍しく遅刻か?』
『いや、はぁ、はぁ・・・間に合ってるだろ』
『お疲れ!』
『ふぅ』
隣にいるのは、同じ学校へ通う友達
毎日、同じ時間の同じ車両に乗る俺達は、仲良くなるには時間はかからなかった
いや、友達と言うより悪友と言ったほうがいいかもしれない
一緒につるむようになってもうすぐ2年、こいつとは色んな思い出がある
授業をサボって屋上で昼寝したり、カンニングして一緒に怒られたり、ナンパして彼女が出来た時にはダブルデートもした
まぁ、一通り怒られそうな事や、楽しそうな事は一緒に共有しているような仲
話も合うし、コイツといると楽しい
『そういや近くに美味しい店、出来るらしい』
『出来たら行こうぜ』
夏休みには一緒に行けるだろう
工事は早いもので、着々と出来上がっていく
完成された外観を見ると、どこかのリゾート地のような造りで、大きなヤシの木も植わっている
女子が好きそうなイタリアンの店だ
日が暮れるのもだんだん早くなり、季節も変わる頃には、いつの間にかオープンしていた
来年、大学受験を控える俺は、夏頃からの日課で毎週土曜日、少し遠くにある図書館で勉強に励む
静かで雰囲気が良く、とても気持ちがいい
今日も颯爽に自転車を漕いで、知らない間にオープンしていた、あの店を通り過ぎていく
『あ。今日もいる』
だいたいオープン前くらいの時間に通り過ぎるからか、決まってあの子は看板を表に出す
特に気になっているわけではないが、何度も見かけると顔も覚えるものだ
何食わぬ顔をして図書館へと向かう俺は、少しだけ今日はあの子が気になった
次の週も、その次の週もやっぱりあの子は、看板を出す係で、タイミング良く俺は通り過ぎる
いつしかそれは悪友に相談するまでとなっていた
『お前、それは恋だ。恋だよ恋。んー。若いっていいねぇ』
いかにも問題を解決する探偵かのように。悪友は、手を軽く顎に置き、俺の肩をポンポンと叩く
恋なのか?
腑に落ちないまま、季節はまたゆっくりと変わってゆく
『今日は、いないのか』
土曜日の朝、どこかつまらない俺は、店の近くにあるコンビニへと足を運ぶ
『あっ』
コンビニへ入るなり、俺は思わず声が出る
レジにいるのは、カバンに『ミア』を付けたあの子
店の買い出しか?などと思っていると、声に反応したあの子が、俺の顔を見て軽く会釈してくるのは、なぜだ
つられて頭を下げ、何もなかったかのようにドリンク棚へ向かう
さっそく悪友にメッセージを送る俺は、もう恋の病の罹患者
『ほほう。それは脈アリですな』
一文を見た俺は、だよな?と問いかけてしまう
何もない日常は、ふとしたきっかけで歯車が回る
俺は、急いでお茶を買い、外へ出たのだが、もちろんそこにはあの子はいない
少しホッとした気持ちを抱え、図書館へと向った
土曜の朝
先週は雨だったが、今日は図書館へ自転車で向かう
いつもの時間、いつもの道
見えてくるのはあの店
遠くからでも分かる気がするのは、恋の病だからだ
玄関先を掃除しているあの子の姿を見つけ、俺は自転車のハンドルを力強く握る
お店の目の前に自転車を置く
あの子は、玄関で掃除しながら、店の前に立つ俺を、少し不思議な顔で様子を伺う
『あ、あのさ?突然すみません。ここでよく見かけてて、それで、えっと、もし良かったら今度二人で会わない?』
『ナンパ?』
『あ、んー。ナンパ・・・かな?』
汗ばむ手を握りしめ、俺は少し目を泳がせる
しかし、次に来る言葉を受け止める為、今一度、真っ直ぐ見つめ問いかける
『会ってくれる?』
恥ずかしそうに微笑む君は、ゆっくり口を開く
そして俺は、ニヤっと笑い小さくガッツポーズを決めた
終
最後まで読んで下さり、ありがとうございます
色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです
また明日、6時にお会いしましょう♪