歌い終わったあとの空気ってなんか辛い
「、、、ふぅ」
何とか1曲歌い切り一息つく。盛り上げてくれると言ってくれたがなぜだがあまり盛り上げてくれなかった。陰謀だろうか。普通に悲しくなったぞ、歌いきった僕を褒めてあげたいくらいだ。そんなことを考えながらみんなの反応をみる。
、、、、、なんだかぽかんとしてる。何故だろうそんなに酷かっただろうか。モテるための努力の中にもちろん「歌」の項目はあったため、ボイストレーニングに行ってまで練習したものだ。さすがにそこまで酷いとは思いたくないが、この反応を見るにどうやらダメだったようだ。僕がそんなネガティブ思考に陥っていると、
「誠すごい!ちょー歌上手いじゃん!私聞き惚れちゃった!」
「それな!まじ上手すぎて歌手かと思ったぞ!」
「実はそっち系の人?」
など牧野音羽の発言を皮切りに口々に賞賛の声を飛ばしてくれる。良かった。満足してくれたようだ。
「ありがとうみんな。今まで下手くそとしか言われたこと無かったから嬉しいよ」
そう、カラオケやボイストレーニングなんて小学生でポンポン行けるものではない。じゃあどのようにして行ったのか。姉さんの付き添いという形で通っていたのである。その度に姉さんから「下手くそ」や「才能がない」など酷評を頂いていたため自信が持てなかったのだ。ただこれだけみんなが褒めてくれたのだ。少しは自信もってもいいよね?姉さんの顔を思い浮かべると鬼の形相で「良いわけないでしょ」と言われたのでやめておく。イマジナリー姉さんだとしても最強である。口々に賞賛の言葉をくれるみんなにお礼を言って僕は飲み物を取りに行くために部屋の外に出るのであった。
「私も行くよ誠」
そういって付いてきたのは牧野音羽だ
「牧野さんのもついでに取ってこようか?俺1人で行ったほうが牧野さんのめんどうも無くなるでしょ?」
そう言ったのだが牧野音羽は首を振り「一緒に行く」と言って譲らない。仕方がないので二人で飲み物を取りに行くことに。無言でドリンクバーのところに歩く。こういう時なにか話した方はいいのだろうか。だとしてもなんと声をかけようか。こんなところ姉さん以外と行ったことがないため何も分からない。僕がうーんと頭を悩ませていると、
「歌上手かったんだね誠。自信なさそうだったから、びっくりしちゃったよ」
「そんなことないよ。僕なんかより牧野さんの方がよっぽど上手かったよ」
「謙虚だねー、というか根暗陰キャを自称する割にちゃんとコミュニケーション取れてるじゃん」
たしかに、なんでだろう。
「、、、多分牧野さんが話しやすいからかなー。柔らかいというか陽キャって感じなんだけど圧を感じないというか、言葉にするには難しい」
「な、何よそれー!よくわかんないじゃん!」
そういって笑いながら僕の肩をパーンと叩く牧野音羽。これがツッコミというものか。なるほど中々にパワフルである。
「陽キャのツッコミ参考になります。」
「じゃあもう1発いっとく?」
「遠慮しておきます」
とこんな感じで他愛のない会話を繰り広げながら部屋に戻るのであった。




