放課後にカラオケとかまじ青春
ドアを開けるとそこは陽キャの巣窟であった。そんな某有名小説の冒頭を思い浮かべながら現状を整理する。僕は牧野音羽に連れられてカラオケに来たのだが、受付せずに部屋へ直行し、有無を言わさぬままドア開けさせれらた。そこには最強の自己紹介(自分調べ)をした天沢くんと井原さんを初めとしたウェイ系の方々。僕をここに連れてきた元凶の牧野音羽。そして根暗非モテ陰キャの僕。完全に場違いである。帰りたい。帰って引きこもりたい。そんなことを考えながら、陽キャたちの歌を聞く。うん、上手い下手はあるがみんな楽しそうだ。あるものはみんなが盛り上がる曲をあるものは最近流行りの歌手の歌をあるものは各国の国家を。ん?なぜ国家?まあそんな事はどうでもいい。そんな感じで大いに盛り上がっていた。やはり自分はこの場において場違いであろう。そう考え席を立ち上がろうとすると
「誠全然歌ってないじゃん!」
そういってマイクを押し付けてくる元凶。いやほんとに大丈夫。しかも今僕のことを呼び捨てで呼んできやがった。やめろよ。ドキッとしちゃうだろ。
「いや僕はいいよ。下手だし。みんなが知ってるような曲は知らないしね」
よし完璧だ。これで僕が歌うことは無いだろう
「いいじゃねえか。パーッと歌おうぜ?こんなもん楽しんだもん勝ちだ!」
「そうそう!私たちが盛り上げてあげるから!大丈夫!」
何が大丈夫なのか分からないが、俺が歌わなければならない雰囲気のようだどうしてこうなった。恨むぞ牧野音羽。だがこうなってしまった以上仕方がないので覚悟を決めてデンモクを操作する。曲は唯一知っていた国民的な歌。気合いを入れて立ち上がり、僕は歌い出す
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牧野音羽視点
誠を連れてきたのは気まぐれだった。陰キャですみたい雰囲気を出しながら自己紹介では1発かましていたし、話してみて面白かった。それにちょっとイケメンだなって思ったのは内緒。そんな感じでなんとなく連れてきたが強引だったかな、と少し罪悪感を感じていた。だが誠が歌い出したことでそんな気持ちは消え失せた。すごく上手いのだ。男子なら声を張り上げて出すような高音も軽々と出していく。そしてその立ち振る舞い。全くビビっていない。もはや堂々としている。これのどこが陰キャだ。そう嘆息しつつこれは連れてきて正解だったなと思いながら私は誠の声に惹き込まれるのであった。




